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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
1章 マジッカーフロンティア県代表戦編
19/65

19話 自分の罪を振り返って ※愛那視点

 息が苦しい……。

 どこ、ここ?


 もしかして――部室にいるの、あたし?

 あたし、誰かと口論(こうろん)してる……?


『□□□□□ッ!』

『菅原さん! みんな、頑張ってるのに、それは言い過ぎです!』


 あの人はクラスメイトの――さん。

 とても、怒ってる。

 あたし、なんて言ったの――?


『話が通じない人とマジッカ―はできないです! この部活は辞めさせてもらいます!』

『わたしもー』

『自分も辞めるか』

『楽しくない。辞める』


 みんな、行かないで――

 ――そうだった。思い出した。

 あたし、ここでカッとなっちゃって――


『□□□□ッ!』

『どうして、そんな酷いこと言えるんですの……』

『□□□□だからでしょッ!』


 ――やめて


『ね、ねえ……。落ち着いてよ……? ね?』

『祐乃は黙ってて!』

『ひっ! ご、ごめんなさい……』


 なんで、祐乃に当たってるの……あたし……?


『□□□□□ッ!』

『で、でも……わたくし……、続けたいんですの……。マジッカ―フロンティアで優勝して……お兄様に……』


 ――泣いてる。


『辞めればいいでしょ!』


 ――やめて。


『北里さんも、一緒に辞めましょ。菅原さんとは――』

『でも……お兄様が……』



 ~ ~ ~


「はぁはぁ……」


 思わぬ悪夢にうなされ、あたしは目が覚めた。

 時刻は午前4時。

 

 土曜日なので学校はないが、それでも起床するには早すぎる時刻だ。 

 再び、眠りに就こうとするが――ある言葉が脳裏をよぎり続けるせいで、眠れない。


「お前は病んでいる……か」


 昨日、二宮シンという男が、あたしに残した言葉だ。

 空気の入れ換えをするため、あたしは自室のベッドから起き上がると、カーテンと窓を空ける。

 心地よくも冷たい風が流れ込み、撫でるような冷気が右腕にあたる。


「痛っ」


 優しい風ですら、今の右腕には負担らしい。

 あたしは包帯を外すと、ジッと酷い火傷痕を見つめる。

 治療を受けたので、幾分(いくぶん)かマシになったが、未だにズキズキと痛む。


「……」 


 マジックギアの爆発の後、あたしは、担任の二宮瑠偉先生(にのみやるいせんせい)に病院に送られた。

 医者と看護師の驚いた表情は、今でも鮮明に覚えている。

 治療を終えて、病院に両親が駆けつけてきた。

 こっぴどく怒られて、凄く心配されて、無事で良かったと泣かれた。


「今日は安静にしておくわ……」


 ボフッとベッドに腰を卸すと、なんとなくスマホが気になった。

 ベッド近くのコンセントに刺している充電コードからスマホを取る。


「誰からかLINE来てるわね」


 アプリを開いて確認すると、祐乃からのメッセージだった。


「『怪我、大丈夫?』『また頑張ろうね』なんて……、どんだけお人好しなのよ」


 感心しつつも、少し呆れる。

 あの子は、何度も自分から貧乏くじを引く。

 頼まれたことは断らず、笑顔を絶やさない。


 それでいて、人を見る目はズバ抜けている。

 そんなあたしより何倍も賢い子なのに、欠点しかないあたしと一緒にいてくれる。


「そっか。祐乃だから、マジッカ―部に残れたのね……」


 貧乏くじを恐れないからこそ、あたしと共にいることを選んだのだ。

 あたしが独りでいることを気の毒に思ってくれたのだろう。


「凄い子ね、祐乃は……。あたしより何倍も大人じゃない……」


 二宮シンの言う通りだ。あたしは病んでいた。

 勝利に固執し過ぎて…あたしは…何も見えていなかった。

 少し自分を振り返るだけで…これだけ視野が広がった。


 もし、彼がいなかったら――まだ独りよがりを拗らせていたに違いない。

 マジックギアの爆発もあたしが人の話を聞かないから起きた事件だ。


 二宮シンの警告は勿論だが、マジックギアのメンテナンスを自分の勝手な判断で怠った。マジックギアの事故なんて、滅多に耳にしないこともあり、あたしの危機管理能力が欠けていた。


「そうだったわ。祐乃に返信しておかないと」


 心配してくれているのだ。既読無視はよくない。

 あたしは、返信する内容を少し悩んでから、メッセージを打ち込んで送信する。

 さて、寝よう――と思い、ベッドに転がったときスマホが揺れた。


『藍那ちゃん、おはよー(^_^)』


 午前4時という時間帯なのに、この返信の速さ。

 元々起きていた可能性もあるが、多分あたしの着信で目を覚ましたのだろう。

 その証拠に、あたしの名前を打ち間違えるという寝ぼけた痕跡が見える。


「藍じゃなくて愛よ」


 しかし、こんな時間に起こしてしまったことに、申し訳なさがこみ上げた。


 ――あれ?


「昨日のあたしが、名前の打ち間違えされてたら――きっとカチンと来てた……」


 自分の()()()()()に気付く。

 ことあるごとにイラついてた自分に恥ずかしさを覚えた。

 改めて自分が病んでいたことを自覚してしまう。


『今日、遊びに行けるー? やっぱり怪我酷くて行くの難しいかなー?』

『気にしないで。怪我は大丈夫よ』


 強がりだ。


 まだ痛いし、医者にもしばらく安静にするように言われた。

 それでも――


「断れるわけないじゃない……」


 祐乃はかけがえのない親友だ。

 あんなに自分のことを想ってくれる子は、他にいない。


「祐乃との関係は、今後も大切にしないと…後悔するわね…」


 このあと、祐乃と遊ぶ場所や時間の予定を建てると、あたしは眠りについた。

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