表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
1章 マジッカーフロンティア県代表戦編
17/65

17話 俺の怒りが爆発した日

「くだらない戦いをしたせいで、眠くなっちまったぜ。さーて、部室に戻って、一眠りしてくるかなー」

 

 シンは欠伸をして背筋を伸ばす。

 放心する愛那に、ずっと傍らで2人の戦いを観戦していた祐乃が駆け寄った。


「とっても強かったねー。次は頑張ろう、愛那ちゃん」


 ――安い同情なんていらないッ!

 

 カッとなった愛那は、祐乃の手を払い退けた。


「触らないで!」

「愛那ちゃん……」

「何かの間違いよ! あそこまで手も足も出ないなんて!」


 仮にも部活指導員だ。多少、手強いことは想定していた。

 だが、あそこまで、一方的な敗北は納得できない。


「もう一度勝負してッ!」


 背を向けるシンに、マジックギアを構えた。

 シンがふと足を止める。


「やめとけ。マジックギアがガタついてる。取り返しがつかなくなる前に、メンテしとくんだな」

「うるさいッ!」


 もう自棄(やけ)だった。

 マジックギア装着者同士の戦いであれば、プロテクト機能が威力を軽減するが――シンはマジックギアを外している。

 これでは、怪我を負わせてしまう。

 それを理解しておきながら、愛那は怒りに任せて、シンに魔法を放とうとしてしまった。


 しかし――


「な、なに? 熱い!?」


 魔法は放たれず、愛那の腕を膨大(ぼうだい)な熱が襲う。


 キュイィィィィィン……


 マジックギアのモーターから、不穏な金属音がなる。

 排熱に支障で出ているらしい。

 

 本来は、ここで安全装置が働いて、強制的に機能が停止する作りになっているが――愛那のマジックギアは度重なる行使によって、安全装置すら壊れていた。


 皮膚(ひふ)が焼けていく感覚。

 焦げた臭いが、マジックギアからではなく、自分の腕から発生していることに気付いた時――底知れない恐怖が、愛那を襲った。


「あ、愛那ちゃん!」


 突然の事態に、わたわたする祐乃。

 マズいことが起きているのは、誰の目から見てもわかる。しかし、どう対応すればいいのか、わからなかった。


「どけ、祐乃ッ!」


 ――その時、颯爽(さっそう)とシンが駆けつける。


 普段、気だるげで物臭なシンだが、このときだけは、()()()()()()()()()()――まるで別人の顔だ。

 高熱のマジックギアを躊躇なく握ると、サイズ調整用のネジを触る。


「熱でネジもおかしくなってやがる! 無理矢理にでも外すぞッ!」


 ジュッと皮膚が焼ける音。

 苦痛でシンの表情が歪むが、それでも両手は離さない。


「ちくしょう! 間に合え!」

「――痛いッ!」


 強引に引っ張り、マジックギアに張り付いてしまった皮膚が剥がれる。 

 マジックギアが外れて、これで一段落――なわけもない。

 排熱が上手くいかないせいで、マジックギアは赤く膨張していた。

 

 シンは、周囲を見渡す。

 ここは中庭。人通りも少なくない。

 やむを得ないと判断したシンは腰を入れると、愛那のマジックギアを全力で空に放り投げた。


 どおぉぉぉぉぉん!


 紅い閃光と焦げた金属片が降り注ぐ。

 突然の出来事に愛那が茫然自失(ぼうぜんじしつ)していると、両掌(りょうてのひら)に火傷を負ったシンが、息を荒げて――


「この――馬鹿があああああああああああッ!」


 ――怒鳴りつけた。


 あの自堕落なシンから想像もつかない怒声。

 シン自身、これほど怒りの感情が膨れ上がったことに驚いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ