14話 シンVS愛那2
「なーんてな」
突如、愛那の手に風が突き抜ける。
意味がわからず、思わず手元に視線が動く。
――剣がない?
「お膳立ては終了だ」
愛那の背後で、カランと渇いた音がなる。
「くだらない。みっともない。勝利に貪欲なのはいい。けれど、醜すぎる」
「な、なにをしたの……?」
思わず、目を見開いてシンに尋ねる。
どのような魔法を駆使して、剣を飛ばしたのか気になったから。
しかし、彼からの返答は、想像を超えるもので――
「お前の剣を奪い取って捨てた。それだけだ」
そう言って、シンは一差し指と親指を動かした。
まるで、2本の指で受け止めてやったぜ、と伝えているようだ。
「そんな嘘よ! なにも見えなかったわ!」
「まばたきしてたら、そら見えないだろ」
刃を受け止めて奪った。
まばたきという一瞬の隙に?
魔法も使わず?
「ぼーっとしてんじゃねーぞ。ほら、後ろ見てみろ」
ごおおおおおお
仰々しい音が背後から聞こえ、思わず振り返る。
飛来してくる凝縮された火球。
《シールド》も間に合わない。
愛那はかわそうと、身体を捻るが――
「逃げんなよ」
シンに腕を掴まれた。
凝縮された火球のエネルギーが解放され、爆発する。
スコアボードが更新される。
【菅原愛那 HP80】
【二宮シン HP5】
ついに愛那のHPが削れた。
「げほ……げほ……」
「お前は攻撃に集中しすぎて、魔力チャージを見逃してたんだよ。素人以下のミスだぜ。それと、大型魔法も、威力を低下させれば、早撃ちが出来る。覚えとくんだな。ま、汎用魔法に比べたら魔力効率はわるいけどよ」
「そのくらい、言われなくても知ってるわよ!」
「知ってるのに、対応できなかったか。経験不足が垣間見えるぜ」
シンの煽りにカチンと来たが、愛那の優位は変わらない。
いまだに、腕は掴まれているが、これはチャンスでもある。
掴まれていない方の手で魔法を放てば――
「《唸れ、暗こ――」
「ほらよ」
グイッと腕を引かれて、手を離される。
愛那は受け身が取れず、そのまま地面に衝突した。
魔法は放てなかった。
「せっかくのチャンスをアッサリと棒に振っちまったなぁ。惨めだぜ、どんな気持ちだ?」
膝を着いて、起き上がろうとする愛那の頭上を、シンは眺める。
「警告だ。惨めな姿を晒したくなかったら、ここで降参しろ」
さっきまでの弱者を演じるシンはもういない。
愛那の前に立ちふさがるのは、本物の強者だった。