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落第生部活指導員と現代魔法スポーツ  作者: たなお
1章 マジッカーフロンティア県代表戦編
13/65

13話 シンVS愛那

 日が暮れ始め、夕日に照らされた中庭にて。


【菅原愛那 HP100】

【二宮シン HP100】


と表示された電子スコアボードを挟むようにシンと愛那は、対峙(たいじ)する。


「あたしが勝ったら、もう二度とマジッカ―部――いいえ、洛咲中学(らさきちゅうがく)の敷居をまたがないで!」


 すっかり頭に血が昇った愛那に、シンは「やれやれ」と首を振る。


「俺は、金が必要なんだよ。給料日になったら、お望み通り辞めてやるって。まあ、お前の気持ちは、伝わったぜ。今すぐ、消えて欲しいんだろ?」

「そういうことよ!」


「でもこれは勝負だぜ。俺が勝利した場合、なにを要求されるか理解したうえで、勝負を挑むんだな?」

「そ、それは……」


 ――退部。

 愛那の脳内によぎる一つの単語。

 嫌だ。最悪だ。絶対にその要求は、受け入れない。


 しかし、シンの要求はもっともである。

 愛那が部活指導員を辞めろと、要求しているのだから。


(もし……負けたら……)


 背筋がぞっとする未来を想像してしまった。

 愛那には、目標がある。


 マジッカ―部に在籍しておくと、有利になれる目標だ。

 この決闘とも言える戦いは、そんな愛那の目標を棒に振りかねない。


(なにを怯えてるのよ、あたし!)


 今の愛那には、この勝負に勝利出来る確信めいた自信がある。


(こんな不真面目な男に負けるはずがない……!)


 そう信じていた。


「好きにすればいいでしょ」

「覚悟は出来てるようだな」


「嫌みな口調ね。絶対に勝つわ」

「ふん、独りよがりが……」


 お互いにマジックギアを装着すると、5mほどの距離を空ける。


「「《チャージオン》!」」


 お互いのマジックギアに、魔力が生成され、バチバチと発光する。

 いつでも魔法が放てる状態と化す。


 先制攻撃は、シンだ。


「《()ぜろ・クイックバースト》」


 爆魔法といえ、比較的使い勝手の良い魔法を選択して、詠唱する。右手から電光が走り、対象に衝突して、バンッと爆発する――はずだった。


 しーん


 シンのマジックギアは、ウンともスンとも言わない。


「魔法出ねーぞ。壊れてんのか?」


 シンは原因が分からず、首を傾げると、マジックギアの小型液晶から、内部設定を確認する。


「このマジックギア、大型魔法しか使えないじゃねえか!? 汎用魔法すら、使えないのかよ! 一撃必殺技しか覚えてないポ〇モンじゃねえんだぞ!」


 思わずシンは、ノリツッコミをしてしまう。

 祐乃は、対人戦の経験がなく、派手な爆魔法(ばくまほう)を放つことに喜びを感じている。ゆえに使い勝手が良い代わりに、派手さに欠ける魔法は微塵(みじん)も興味がなかった。

 

 しかし、立ち回りが求められる対人戦で、汎用魔法は必要不可欠。


「《(うなれ)れ、暗黒・ダーカー!》」

「おわーっ!」


 当然、そんな隙を愛那が見逃すはずもなく、闇の汎用魔法がシンを襲う。

 スコアボードに表示される数字に変化が起きる。


【菅原愛那 HP100】

【二宮シン HP85】


 見事な先制攻撃が決まった。

 愛那の表情に、小さな喜びが浮き出る。


「汚えぞ! 祐乃のマジックギアのことを知ってたから、自信満々に勝負を受けやがったんだな!」


 シンの訴えは、当然無視。

 汎用魔法を駆使して、勝つつもりだったのだろう。だから、使用出来る魔法の確認すら怠った。

 物臭な性格が祟ったのだ。自業自得である。


「《出でよ、暗黒剣オメガ》」


 愛那は、出現した円法陣に手を入れると、豪快(ごうかい)に引き抜いた。

 マジックギアの《ソード》モード。


 生成された愛那の剣は、人を()るには(てき)さないほど酷く歪み、シンを威圧(いあつ)するように黒い雷閃が弾けていた。


「いくわよ!」


 シンは、ロクに魔法を使えない。

《ソード》で接近戦に持ち込めば、詠唱も妨害できる。

 魔力のチャージに時間を有する大型魔法なんて、使えるはずもなかった。


「おいッ! 待て待て!」


 必死に使える魔法がないかと確認しているシンを刃が襲う。


「ぬああああああああ!」


 鬱憤(うっぷん)混じりに、愛那は剣を振り続ける。


「おわーっ!」

 ズバッ

「ぎょわーっ!」

 ズバッ

「にゅわーっ!」

 ズバンッ


 一方的な攻撃に、シンのHPがみるみると減少していく。

 その結果――


【菅原愛那 HP100】

【二宮シン HP5】


 スコアボードに現実を告げる残酷な数字が表示される。

 ――やはり、言葉だけの男だった。


「これで、あたしの勝ちよ!」


 勝利を掴む一閃(いっせん)が、シンの頭部に振り落とされる。

 勝った! これで――


「なーんてな」

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