表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/77

第5話「信頼と誘惑と、王子様の苦悩①」


 ホームで待つこと、およそ10分。

 首都行きの電車が着て、私とクリスは車両に乗り込む。なるべく人が少ないほうがよかったので、先頭車両を選んだ。おかげで、自分たち以外に他の客は、二人しかいない。


「私、ディーゼル車って苦手なのよね。早くなったり遅くなったりするから」


「僕は、もう慣れたよ」


 他の客がいないのに、なぜか隣同士に座る二人。

 コンパ―メントのボックス席に仲良く座りながら、他愛ない雑談に華を咲かせる。


 十年前の戦争で、国内のほとんどが戦地にさらされた。


 その中でも、もっとも影響が大きかったのが線路などの交通機関である。物資を運ぶため列車や線路などは、敵国から真っ先に攻撃される。当時の対戦国であった旧ガリオン帝国も、オルランド共和国の線路網を破壊して、戦争を優位に進めようとしていた。


 その影響は、今も受け継がれている。


 首都内はともかく、国内全体のインフラ整備には手が届かず、電線がないと動かない電車の普及はまだまだ先であった。

 そこで活躍しているのが、ひと昔前のディーゼル車両だ。自前のエンジンで動くディーゼル車は、線路がしっかりしていれば電線がなくても活動が可能。戦後直後は蒸気機関車すら引っ張り出されていたことを考えれば、まぁマシになったほうだろう。


「のどかな田園地帯が広がっているね」


「戦争で全て燃えちゃったからね。廃墟の村も、いくつか残っているくらいだし」


「……そうか」


 流れる車窓を見ながら、クリスがわずかに悲しそうな顔をする。


「クリス。わかってはいると思うけど、アンタの生まれた国と戦争をしていたことがあっても、アンタが悪いわけじゃないからね。そこんとこ勘違いしないように」


「さすがに、僕もそこまでは思い上がってないよ」


 でもね、と彼は続ける。


「……無関係を装うこともできないよ。僕はガリオン公国の人間だから」


「あ、そ。まぁ、ほどほどにね」


 ふわぁ、と私はあくびを漏らす。

 列車に乗っていると、どうも眠くなってしまう。首都までは駅が3つ。一時間も掛からない乗車時間だが、どうにもこの睡魔には抗いがたい。


「ミーシャ。眠いなら寝てたら。着いたら起こすよ」


「あー、そうね。じゃ、よろしく」


 そう言って、私は頭を横に傾ける。


 コトン、と彼の肩に寄りかかり、目を閉じる。

 ちょっとだけクリスは驚いた様子だったけど、何も言わなかった。


 ガタン、ゴトン。

 ガタン、ゴトン。


 列車が揺れる音に合わせて、私の意識もどんどん落ちていく。クリスの爽やかな匂いが、心をどこまでも穏やかにしてくれる。そんな気さえした……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ