序章
カルミア歴1986年、オルスラード帝国は500年もの長きに渡る隣国コルニア共和国との戦争が終結し、平和な世が訪れていた。
大戦の英雄は数知れず、人々はその者たちに感謝しながらも平和な日々を謳歌していた。
戦の最盛期は大戦終盤。450年均衡していた勢力図を一気に動かした第13世代。
そして、戦を終結させるに至った第14世代。
通称終わりの世代だ。
終わりの世代を率いていた軍団長マコイは戦争終結後、軍を解体し自らは小さな飯屋を営みながら平和な世界を見渡すのが日課であった。
『ふぁー、今日もあったけえな。』
寝起きの身体を覚ます為外に出たマコイは言った。
オルスラードは豊かな気候に恵まれ、自然に溢れる美しい街並みが特徴だ。
『よし。買出し行ってくらあ。』
『気をつけてね。マコイ。』
『何言ってやがるサティア。気をつける事なんてあるもんか。』
『それもそうね。』
『父さんいってらっしゃい。』
『おう!』
そう言ってマコイは扉を閉めた。
『ニール、研究はどう?』
『もう少しで解明出来そうなんだけどなぁ。』
『そう、カルミアの力を応用しようなんて今まで誰も考えた事すらないものね。それが完成したら凄い事じゃない。父さんみたく歴史に名が残るかもね。』
『父さんみたいにはなれないかもしれないけど、オルスラードの人達がもっと豊かに暮らせるよう出来ることはやってみるつもりさ。』
オルスラードにはカルミアという水晶体のような物があり、街の中心に位置している。
カルミアは人々の暮らしを照らし、豊かな土壌もカルミアの恩恵による物だと言われている。
・・・・・・・・・・・
『おい、聞いたか今の話。』
『あぁ、そろそろ動き出す頃合いかね。』
〜オルスラード中心市場〜
『今日の獲物は〜なんだろな〜』
『おいおい、大戦の英雄様が随分物騒な歌歌ってやがる。』
『おい、ケディラ物騒とはなんだよ。』
『ハッハッハー、元気そうだなマコイ!相変わらずバカみてえに太い腕だ。』
『うるせえ、おめぇこそいつまでそんなに鋭い目つきしてやがる。もう戦は終わってんだよ。』
『ちげぇねえ。お互い戦が終わってねぇようだ。人生という戦がな。ブワッハッハー』
ケディラは戦の終盤、マコイと並び活躍した元副軍団長である。今は市場で商店を営んでいる。
『おいマコイ、お前のとこの倅いくつになった?』
『ニールか、今年で22だな。』
『おいおい、俺らが現役の頃鼻垂れてたガキンチョが今や立派な男やってんのかよ。かぁー時の流れは恐ろしいねぇ。』
『全くだ。あいつは力しかねぇ俺と違って賢いからな。今じゃあいつが何言ってんのかちっとも分からねぇ。』
『あぁ、ありゃ完全にサティア似だ。お前さんとは住む世界がちげぇのさ。まぁ、今のわけぇやつらがちゃんと勉強出来る時代になったと思えば俺らの戦いも無駄じゃなかったってこった。』
『あぁ、そうだな。』
そう言って空を見上げたマコイ。真っ青な空に想いを馳せる。自分達が築き上げた平和を噛み締める。この空が、こんな日がこの先ずっと続けば良い。そう、想いながら。




