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脱水症にご注意を


「あー、目が痛い!」

「ね。自主学習続きだと逆に疲れる」


 やっと放課後!

 テスト範囲終わっちゃったらしく、殆どの授業が自主学習だったの。

 やっぱり、自主学習って退屈だわ。特にお昼後! 眠気との戦いって感じ。


「でも、これで英語は5確定だね」

「うん。回答欄ズレなきゃ赤点取ることないし」


 私たちは、いつも通り双子の待つ学童へと向かっていた。

 日差しがものすごく照りつけるものだから、校門出たあたりから上着を脱いじゃったわ。……青葉くんは未だにセーターも着込んでるけどね。


「……暑いの平気?」

「なわけない……。視界ヤバい」

「ちょっと! 待ってて、そこの自販機で飲み物買ってくる」

「ごめん……」


 ですよね……。

 隣を見ると、少しだけ顔を赤くした……いや、青くした青葉くんがよろよろになりながら歩いていた。今にでも、倒れそう。


 私は、青葉くんを身近なベンチに座らせて、目の前にあった自動販売機に向かった。

 倒れたら大変!



***



 「あぢー……」


 学校帰りのオレは、帰路についていた。

 今日は、現場が早上がりして3限目から授業に出られたぜ! 正樹からテスト範囲も聞けたし、今日から本格的に勉強しないとな。


「……!?」


 なんて考えながら歩いていたら、目の前のベンチで倒れそうになってる奴がいるじゃんか。しかも、よく知った人物。


「五月、大丈夫か?」

「……? あ、奏」

「あっつ! お前、セーター脱げよ。脱水症状起こすぞ」

「うん……」


 そこには、真っ青な顔した五月がいた。

 こいつ、焦点合ってるか? ……うん、合ってるな。脱水症状手前って感じ。


 五月は、オレの言葉でやっと上着とセーターを脱ぎ出した。……おぉ、ガッツリ見えるな。刺青。

 更に髪の毛を縛り上げると、いつもの五月が顔を出す。やっぱ、顔色やべぇ。


「飲み物は? 買ってくる」

「今、鈴木さんが買ってきてくれてる」

「お! 梓もいんのか!」

「……いるけど」

「嫌そうな顔すんなよ! 今から帰んの?」

「いや、鈴木さんちの双子迎えに行く」


 オレが嬉しそうな声を出すと、すぐさま「消えろ」的な冷たい視線でこっち向いてやんの。まるで嫉妬じゃんか。

 別に、梓のこと取らねぇよ。


「お待たせ、ポカリでい……あ、橋下くんだ」

「よっ!」


 五月と並んで座っていると、梓がペットボトルを1本持って走ってきた。


 こいつ、結構男子から人気あるらしいな。正樹に名前言ったら、知ってたよ。まあ、面倒見良さそうだし納得。……見た目ギャルだけどな。そのギャップも良いらしい。


「今日はお仕事ないの?」

「おう。テスト前だから、少し減らしてんだ」

「あ、そっか。……青葉くん、飲んで」

「ありがとう……」


 梓がペットボトルのキャップを外して渡すと、五月ってば一気に飲んじまった。500mlあったのに、1分もかかってないぞ……。


「あと1本いる?」

「いや、大丈夫。お金は」

「いいよ、元気になってくれれば」

「もう大丈夫、ありがとう。……あ、迎えの時間」

「あ! 忘れてた。行かなきゃ」

「なあ、オレもついてっていいか? 仕事ないから暇なんだ」


 オレがそう言うと、梓は嬉しそうな、五月は嫌そうな表情でこっちを見ている。

 ……おい、その顔やめろ。もちろん、五月のことな。


「あ、じゃあ夕飯食べてく?」

「マジ!? いいの?」


 だから! そんなに睨むなって、五月!


 梓の手料理かあ。五月とどっちがうまいんだろ。


「私はいいよ。今から買い物だし」

「……鈴木さんがいいなら、いいよ」

「よっしゃ! 買い出し前に迎え?」

「うん。妹と弟を小学校にある学童へ迎えに行くの。16時20分までに行かないといけないんだ」

「走らないと間に合わなくね?」

「大丈夫。東小だから、ここから10分かからない」

「あそこか! 行こう」


 腕時計を確認していると、五月が立ち上がった。さっきより、だいぶマシな顔色になってる。よかった。

 ……梓に見えないようにしてる、こっちへの睨みはすごいけどな。見なかったふりしよう。そうしよう。


「奏、顔隠して行けよ」

「うい。帽子かぶるわ」

「あ、そっか。有名人だもんね」


 カバンから帽子を取り出し被ったオレは、五月と梓の後をついて東小へと向かう。

 ……なんだか後ろから視線感じんだけど、ファンのやつか? 話しかけてくれれば、サインくらいするんだけどな。


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