表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/248

長期休みは、海外に?


「青葉ー、課題そっちの机でいい?」

「うん。東雲くんは?」

「あいつ、教科書忘れたから隣のクラスに借りに行った。すぐ帰ってくる」

「そしたら、そっちの机借りよう」

「おう」


 ふふ、青葉くん楽しそう。

 ちょうど私の真後ろでやっているから見えないけど、声だけでそうわかる。なんだか、私まで嬉しいわ。


「梓ー。どうしたの?」

「へ!?な、なにが?」

「何回も呼んだのに、返事ないんだもんー」

「あ、ごめん。読むのに集中してた」


 いけないいけない。ちゃんと自分のことやらないとね!


 今日の課題は、日本語の文章を英語に直すこと。しかも、ただ直すだけじゃないのよ。

 グリム童話の中でも有名な『ヘンゼルとグレーテル』の日本語訳を英語に直すの。で、その後に英語で出版されている物語と照らし合わせて、間違い探しするところまでが課題!結構大掛かりよね。


 元々、グリム童話ってドイツ語で書かれたものなんだって。私、てっきり英語で書かれたものだと思ってたから、びっくりしたわ。


「あのね、私としおりんが冒頭部分やるから、梓はふみかと2回目に遠くに放り出されたところから訳して。で、由利ちゃんが魔女のところ」

「OK。由利ちゃん、多いけど大丈夫?」

「うん!『ヘンゼルとグレーテル』は、英語もドイツ語も読んだことあるから」

「すご!それに、由利ちゃんは英語得意だもんね」

「大好き!だから、任せて」


 由利ちゃんの読書好きは、外国語で書かれた本にも手を出すほどなんだね。本当にすごい!


 ちなみに、1グループが全話やるわけじゃないのよ。全話を2グループでやるの。私たちは、前半部分担当!


「よし!じゃあ、やりますか!」

「おう!」


 なんでこんなにやる気になってるかって?


 だって、この課題終わらせたら、期末で赤点取らない限り評価「5」をくれるって言うんですもの。そりゃあ、やる気出るよね。


「うお!青葉、お前英語得意なのか」

「父親が海外で働いてて、長期休みとかはそっち行くから。英語できてないと、何もできないし」

「セレブ」

「セレブ」

「い、いや、そんなんじゃないよ」


 ……へえ、青葉くんって長いお休みの時は海外行くんだ。いいなあ、海外なんて行ったことないや。


 ……今年の夏休みも行くのかな。

 そしたら、ちょっと寂しいな。


「梓ー!手を動かさないと、課題終わらない!」

「は、はい!やります!!」

「ふふ。梓ちゃん、なんだか上の空だね」

「そ、そんなことないよ。そんなこと……」


 夏休みって、いつだかわからないけど集中講義あるよね。海外行くなら、それも出ないのかな。

 そしたら、ノート取っておこう。帰国したら、青葉くんに渡すんだ。


 ……いやいや、まだ行くって決まってないじゃないの。


「じゃあ、梓!やるよ!」

「OK!よろしくね」


 少しだけ感じた寂しさをなくすため、私は目の前の課題に取り掛かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ