週明けは、波乱万丈の予感
月曜日。
昇降口で、さっそく青葉くんと鉢合わせした。……もう衣替えしたっていうのに、セーターのままの彼と。
その姿を見た途端、玄関で抱きしめられたのが私の脳裏を過ぎる。
でも、あれは青葉くんにとって挨拶なのよ。きっと彼は、なんとも思ってないの。そうよ、私が気にしすぎなの!
それでも、心臓がバクバクしてる。普通に、普通に……。
「……お、おはよ」
「おはようございます」
ほら、普通じゃないの。前と変わらない青葉くんだわ。
いや、少し違う。
ローファーをしまいながら私が挨拶をすると、青葉くんは前みたいな無愛想な感じじゃなくて嬉しそうに返事をしてくれる。まあ、相変わらず、目は見えないけどね。
「あ、あの、えっと。土曜はその」
「ご馳走様でした。シチュー、美味しかったです」
「……こちらこそ、遅くまでありがとうございます」
周りがザワザワしてても、青葉くんの声は耳に届く。心地よい。
朝から挨拶できたのも、すごく嬉しいな。
「あ、あの!」
「……なにか?」
背を向けた青葉くんに、私は再度声をかける。
「あの、その……け、敬語」
「敬語?」
「同い年だから、その、普通に話したいなと思って」
「……鈴木さんは、やっぱりかわいい」
「からかわないでください……」
「あはは。鈴木さん、敬語になってる」
「……あ」
振り向いた彼は、私の慌てふためく姿を見て笑う。
なんで、いつもそんな余裕そうなの?私にも分けて欲しい。
「改めて、よろしくね。鈴木さん?」
「よ、よろしく。……よろしく、青葉くん!」
やっと、距離が縮まった感じがする。すごく嬉しい。
土曜、色々変なところ見られちゃったけど、普通に接してくれてよかった。
うん、良い1週間になりそうね!
***
あーあ。月曜日って、超憂鬱。
毎日が休みだったらいいのに!それか、100歩譲って1日おきに休みとか!
絶対そっちの方がいいって。お偉いさん、誰かそうしてくれないかなあ。
「マリ、おはよう」
「あ!おはよう、しおりん。部活?」
「うん、朝練終わったの」
「おつー。朝から大変だね」
「いやいや、気持ち良いよ!朝から身体動かすのは」
昇降口で、しおりんと一緒になった。いつもギリギリの時間に登校するから、朝練終わりの人たちと被っちゃうんだよね。今日も、私の周りにはジャージ姿の生徒が多い。
「しおりんは、健康的だねぇ」
「あはは、マリもやればわかるって」
「私パスー。走るの遅いし、ボール投げても後ろ飛んでくし」
「……確かに、体力テストヤバかったね」
「もう忘れてよ!」
体力テスト、大っ嫌い!
だって、なんでやるのかわかんないし。あんなの、恥かいて終わりじゃん。あー、やだやだ。
「ヤバいといえば、ふみかなんだけど……」
「え?ふみかちゃんも体力テストDだった?」
「違う違う、体力テストの話じゃない。……昨日、電話したらなんか元気なかったから。なんか知ってる?」
「えー、知らない。宿題終わってないとか?」
「マリじゃあるまいし。……後で聞いてみる」
「なんかあったら言ってー。失恋なら励ますから!」
「マリがやると煽りになるからやめときな」
「なんだとー!」
ふみかちゃん、クールだからあまり起伏が激しくないんだよね。でも、しおりんが元気ないっていうんだから相当なのかも。
お昼、おごってあげようかなあ。ご飯食べれば、大抵は元気になるし!




