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子ども扱いしないで、って言ったけど……



 リビングに戻ると、既にスプーンや飲み物が机の上に置かれていた。

 どうやら、パンを焼いている時間にみんなで用意してくれたらしい。すぐに「いただきます」ができたわ。ありがたい。


「こら、要!玉ねぎも食べなさい!」

「苦いから嫌だ!」

「玉ねぎ、水にさらしたから苦くないよ」

「……本当?」

「うん。嘘じゃない」

「じゃあ、食べる……」


 なんで青葉くんの言うことは聞くのよ!

 いつもは、勝手に私のお皿へ玉ねぎ置くくせに!


 青葉くんの言葉に、要は恐る恐るサラダの玉ねぎを口に運んでいる。……いつも水でさらして苦くないようにしてるんだけどなあ。食べず嫌いってやつ。


「……苦くない」

「ね?玉ねぎは苦くないんだよ」

「うん!食べられた」

「要くん、偉いね」

「お、おにいちゃん私も食べた」


  青葉くんが要の頭を撫でると、瑞季も撫でて欲しいようで羨ましい表情をしながらそう発言してくる。……あ、ちょっと羨ましい。


「瑞季ちゃんもえらいね。鈴木さんのご飯、美味しいからいっぱい食べよう」

「うん!」

「ねえちゃんのシチューは、かあちゃんのよりうまい!」

「……お母さんの前では言っちゃダメよ」

「なんで?」

「あはは」


 全く、要は!

 でも、嬉しい。青葉くんも美味しいって言ってくれた。作って良かったな。


 私は、そんな光景を見ながらシチューをスプーンで一口すくい、口の中へと流し込んだ。

 うん、今日は煮込んだから味がいつもよりしっかりしてる。……私が泣いてたからなんだけどね。思い出すだけで、恥ずかしくなる。


「ねえちゃん、顔赤い」

「どうしたの?」

「へ!?そんなことないよ。暑いのかな」

「今日のシチュー、熱々だからね!」

「え、えぇ。みんなが用意手伝ってくれたから、早く食べられたものね……」


 なんとか誤魔化せたわ。

 ……あ、青葉くんが笑ってる。笑わないでよ、恥ずかしいじゃないの。


「それより!全部食べたらケーキだからね!」

「そうだ!ケーキ!」

「全部食べる!」


 青葉くんがいると、食卓が賑やかで嬉しい。

 ……また来てくれるといいな。


***



「ごちそうさまでした」

「こちらこそ、遅い時間まで引き止めてしまってごめんなさい」


 気づいたら、21時をまわっていた。

 それまで何してたかって?

 夕飯が終わったら、トランプでケーキ選ぶ順番決めしたわ。じゃんけんじゃ面白くないって、要が言い出してね。大富豪、楽しかった。


 それからみんなでケーキ食べて、宿題の終わった双子と青葉くんが遊んでくれて、その間に私は洗い物。なんやかんやしてるうちに、あっという間に過ぎてしまったわ。


 子どもたちにはお風呂の着替え準備をさせて、私は青葉くんと玄関に来た。


「俺こそ、こんな時間まですみません」

「いいのよ、子どもたち楽しんでたから」

「要くんも瑞季ちゃんも、本当良い子ですよね。羨ましい」

「ええ、色々我慢させちゃってるけど。よくやってくれるわ」


 そうなの、双子は良い子なの。

 

 私は、中学時代に「お荷物」と言われたことを思い出した。でも、青葉くんはそんなこと言わない。お母さんのことも。


「鈴木さんが頑張ってるからですよ」

「……」

「鈴木さんも、えらいですね」


 靴を履き終え立ち上がった青葉くんは、そう言って振り向き頭を撫でてくれた。

 ……やっぱり、私は青葉くんから見て子どもなのかな。扱いが、双子と同じだわ。


「……子ども扱いしないで」

「してませんよ?」

「瑞季たちと同じだわ……」

「うーん……。じゃあ、こうしましょうか」


 ……え?


 少し考えた表情をした青葉くんは、急に私の腕を引いて手繰り寄せ、抱きしめてきた。

 キッチンの時よりもその距離が近く、私の思考はまたもや停止する。


「これで、同じではないですよね?」


 私の顔を見た青葉くんは、そう言って楽しそうに笑った。

 


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