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タピオカの甘さとID検索の葛藤と



「美味しい!」

「ぼくのも美味しい!」

「一口ちょうだい」

「いいよ、交換しよう」


 私たちは、近くの公園のベンチでタピオカドリンクを飲んでいた。家まで持ち帰ると、絶対氷が溶けるし。溶けると、甘さも味も薄くなるから好きじゃないのよね。


「……美味しい」


 青葉くんの言う通り、ミルクティーは美味しかった。今まで飲んだ中で、一番甘さが合うかもしれない。すごく、身体に染みる。

 チーズフォームも、甘い。これ、カスタードも混ざってるわね。どうやって作るんだろう?

 タピオカ美味しいなあ。これじゃあ、並んでまで欲しくなる。


「……」


 いやいや!

 そんなことより、今はこっち!


 飲み物の甘さに現実逃避していた私は、改めて手渡されたレシートを穴が空くほど凝視した。

 ラインIDかな。でも、打って該当者いなかったら結構恥ずかしい。

 ああ、でも連絡先って言ってたから。

 いやいや……。都合の良い空耳かもしれないじゃないの。教室で散々彼のことを避けておいて、私は何様?


「ねえちゃん、飲まないの?」

「わたしほしい!」

「ダメ!これはお姉ちゃんの」

「ちぇー。飲み終わったから、すべり台してきていい?」

「わたしも行く!」

「良いけど、ちゃんとゴミは捨てるのよ」

「はーい」

「わかった!」


 元気ねぇ……。

 これも、歳の差ってやつ?暑くて動くのが面倒だわ。


「……ID検索してみよう」


 私は、ベンチに飲みかけのドリンクを置くとスマホを取り出しラインを起動させた。

 ID検索の画面にすると、自然と鼓動が速くなる。手汗がすごい。


「……できた」


 やっぱり、ラインIDだった。

 画面には、検索結果が映し出されている。そこには、メイク道具が散りばめられた画像と「五月」の名前が。レシート裏に書かれていた名前と一致した。漢字、こうやって書くんだ。

 ……青葉くんってメイクするのかな。前も、家に来た時メイクブラシ落としていったし。今度聞いてみよう。


「…………」


 友達に追加すると、相手にも通知っていくのかな。

 もらってすぐ登録するってなんかガッツキすぎじゃない?ドン引きされない?


 私は色々考えてその画面のままスマホを閉じ、残ったドリンクを一気に口の中へと流し込んだ。

 後で落ち着いてやろう。17時終わりって言ってたからまだ時間あるし。

 それに、まだ連絡するとは決まってないし。


「待って!」

「待たない!」

「要のばかあ!」

「ばかって言った方がばかなんだぞ!」

「……平和だ」


 私は、他の子たちに混ざって元気よく遊んでいる瑞季と要の姿を追いつつ、ベンチの背もたれに身体を預ける。

 今日は、余ったお金で大きめのアサリと鮭を買って、シーフードシチューを作ろう。後、サラダとパンと……。



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