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暑さのせいでとうとう幻覚を見るようになったわ



「タピオカ!」

「タピオカ!!」

「はいはい、飲もうね」


 土曜の午後。

 学校が終わった瑞季と要たちと一緒に、マリたちが言ってたタピオカ屋さんに来てみた。


 昨日、お母さんから「ケーキ食べて」ってお金渡されたの。ボーナスが出たんだって。

 でも、子どもたちは新しくできたタピオカ屋さんにずっと行きたかったみたいでね。瑞季たちのクラスでも、話題になってるらしい。

 余ったら私のお小遣いにして良いって言われたから、今日のご飯は少し高いもの作ろうかな。


「ぼく、マンゴーミルクティの氷少なめ!」

「わたしは、イチゴミルクに甘さ4!」

「え、もう決まってるの?メニュー見てないじゃん」

「桜ちゃんが、学校でメニュー表持ってきてて見てたから」

「へえ、そんなみんなに人気なのね……」


 休日だってこともあって、隣のお店の方まで列が続いていた。……メイクしてちゃんとした服着てきてよかった。スーパーに行くような格好で来ていたら笑い者ね。

 こんなに並ぶの、隣町の朝市に駆け込んだ時以来かも。子どもたちが好きなとうもろこしが安くて、みんなで並んだんだ。


「帽子、持ってきてよかったね」

「そうね。暑すぎる」


 炎天下という言葉がふさわしいくらい、今日は晴れていた。布団取り込もうと思ってたけど、干してきて正解だったわ。これからもっと暑くなるって考えられない!


「ほら、要。帽子被りなさいよ」

「やだ、暑い!」

「被らないともっと暑いよ!」

「それはやだ」

「なら、被る!ほら!」

「はーい……」


  全く要は!


 ……にしても、なんでこんな並んでるんだろう?

 ほとんどが、中高生。知り合いは……いなさそうね、よかった。

 ちゃんとメイクしてるし服も可愛いの着てきたから良いんだけど、子守りしてることはあまり知られたくないんだよね。


「お姉ちゃん、そろそろ!」

「まだ10人以上いるんじゃない?」

「でも、さっきより進んでる!」


 子どもたちは、大はしゃぎ。

 たまにはこうやって、外でおやつも良いわね。毎日はお金ないけど……。


 にしても、本当人が多い!そんなに美味しいのかな?


「そっち、看板にメニューあるよ!」

「本当だ、何にしようかなあ。あ、チーズフォームある!」

「お姉ちゃんの好きなミルクティもあるよ。甘さマックスにしたら?」

「そうしようかな」


 甘いもの食べてると、なんか「生きてる」って実感するんだよね。

 昨日も、お小遣いで生クリーム買って1人で食べちゃった。他の人に見せられる光景ではないけど。


「今日イケメンくん居てよかったね!」

「本当!土曜に居たの初めてじゃない?」

「最近ずっとシフト入ってなかったから辞めちゃったのかと思った」

「でも、なんか痩せた?夏バテ?」

「そう?気づかなかったけど」


 お店のタピオカを持ちながら、同い年かな?の女子集団がそんな会話をしながら通り過ぎて行った。

 ……マリも言ってた気がしたけど、もしかしてこの列ってその店員さん目当てだったり?

 味じゃなかったら、なんだか残念だなあ。甘いもの食べたい。


「お姉ちゃん、次」

「あ、はいはい」


 ボーッとしていた私は、瑞季の言葉で現実にかえる。


 急いで財布を出していると、私たちの出番になった。


「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」

「えっと、マンゴーミルクティとイチゴミルクと……!?」

「……こんにちは、鈴木さん」

「…………こ、こんにちは……?」


 聞いたことがある声だなと思って顔をあげると、そこにはあのド派手な見た目の青葉くんがいた。お店の可愛らしいエプロンを着て、こちらに向かって微笑んでいる。




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