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冷静になるって大事だと思うの




 ……ということで、私はキッチンで料理を作っている時になってやっと、状況がおかしいことに気づいた。


「テーブル、拭くね」

「じゃあ、わたしはお皿持ってくる!」

「ぼくも!」


 カウンターキッチン越しに見えているのは、夕飯の支度をしている瑞季、要、そして、青葉くん。それぞれ、机の上を拭いたり、お皿を用意したり。

 今日は、妹弟たちも積極的になってお手伝いしてくれてる。それは嬉しい。嬉しいんだけど……。


「……」


 少しだけ時間を戻して、なぜ青葉くんが家にいるのか考えてみようと思うの。

 ほら、冷静になるって良いことじゃない。


「鈴木さん、何か運ぶものある?」

「え?あ、え、えっと。……お箸とコップお願いしても?」

「わかりました。ここに出してあるやつ全部持ってくね。あ、爪切りは元に戻したよ」

「ありがとう、ございます……」


 ……やっぱり、冷静になるって大事よね!!


 私は、目の前に広がっている日常ではない日常を見ながらそんなことを考えた。




***




 その日の放課後、私は青葉くんのことを待った。


「はい、じゃあさようなら」


 いつも通りやる気のない小林先生の声で、ホームルームが終わり放課後になった。

 猛スピードで部活へ駆けていく詩織を見ながら、「私もいつもはあんな感じなんだろうなあ」と呑気なことを思うほどには心に余裕があった気がする。


 場所の指定を忘れたため、ホームルームが終わると視線を何度も彼に向けて「気付け!」と念を送る羽目になったけど。でも、青葉くんはすぐに私に気づいてくれた。

 と、その前に……。


「マリ、ふみか、由利ちゃん。また来週ね」

「うん!月曜は遊びに行こうね!」

「そうね。空けておく」

「わーい!じゃあね!」

「バイバイ」

「また来週」


 どうやら、3人でどこかに行くらしい。マリたちは、おしゃべりをしつつ教室を出て行ってしまった。……こっちとしては、変な噂が立つ心配が減ったので嬉しい。月曜、空けておかないとね。


「……どこか、行きますか」

「!?」


 カバンを持とうとしていると、青葉くんが声をかけてきた。どうやら、マリたちと話している間に移動したらしい。急に声をかけられた私は、挙動不審な態度を曝け出す。


「……用事。すぐ済むなら、学食とかでも」

「え、あ、そ、そうね。……とりあえず、教室を出ましょう」

「はい」


 何度か顔を確認するも、その暑っ苦しい前髪のせいで彼の表情はわからない。

 距離感のわからない私たちは、少しだけ離れながらも一緒に学食を目指した。私は、小さな紙袋を持っている手に力を入れる。



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