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1人で食べる大きなお弁当


「……何かしたのかな」


 結局、お昼休みも声をかけられなかった。いいえ、かけたんだけど無視されちゃったの。

 マリの個別ラインに送ったメッセージも、既読つかないし。かといって、グループラインしてこれ以上空気壊すのも忍びない。

 私は1人で、屋上につながる階段の一番上でお弁当を広げて食べていた。本当は屋上で食べようと思ったんだけど、雨が降っててダメだったから。


 昨日いっぱい買った鶏肉で、唐揚げ作ったんだけどな。みんな喜ぶかなって。無駄になっちゃった。

 マリたちのことを考えれば考えるほど、私の気持ちは落ちていく。ちょっと油断したら泣きそうだわ。原因もわからず泣くのだけは、したくないのに。


「……美味しくない」


 いつもと同じ分量で作ったんだけど。味見もして、あの時は美味しかったのに。

 今は、全然味がしない。むしろ、なんだか分厚いゴムでも噛んでる感じがする。それだけで、泣きそうになるわ。


 すると、下の方から足音が聞こえてきた。あと5秒遅かったら、確実に泣いていたかも。

 私はその足音の主に感謝しつつ、すぐ移動できるように広げていたお弁当をまとめる。すると、


「あれ、偶然じゃん。どうしたの、こんなところで」

「……奏くん?」


 階段の手すりから、奏くんの顔が出てきた。こっちに向かって手を振っている。私も、片付けていた手を止めて振り返した。

 どうやら、1人だけみたい。他に、足音は聞こえない。


「お昼食べてたの。奏くんは?」

「そうだったのか! オレは、別に。……それより、一口くれ!」

「うまくできなかったんだけど、唐揚げいる?」

「いるいる! サンキュ」


 奏くんは、階段を上りこちらに向かいながら、何やらスマホをいじっている。仕事の連絡とかかな。電話しに来たとかだったら、なんだか申し訳ない。

 でも、違うみたい。すぐスマホをポケットにしまって、私の隣に座ってきた。


「うまそーじゃん! 梓、この量1人で食うの?」

「え、あ……。本当は、友達と食べる予定だったんだけど……」

「食わなかったんか」

「う、うん。みんな、部活とかで食べられなかったの」

「そっか。じゃあ、オレが食う! いただきます!」

「ふふ。ありがとう」


 1人で寂しかったから、ちょうど良いかも。

 私は、おしぼりを渡しながら唐揚げとしらす入りの卵焼き、ピーマンとツナの炒め物をお弁当箱の蓋に移し替えて奏くんに手渡す。そうそう、割り箸も。


「あー、うまい! やっぱ、梓の飯はうまいわ」

「ありがとう……。あ、そうだ。昨日ね、正門でモデルのミカさんに会ったんだ」

「へ、へえ」


 あれ? もしかして、話題間違った?

 褒められたのが恥ずかしくなって、話題変えたのまずかったかな。


 青葉くんと知り合いなら、奏くんとも知り合いかなって思ったんだけど。それに、昨日は奏くんとコスメショップ行くって言ってたし。

 でもなんか、微妙そうな顔してるわ。もしかして、会えなかったとか?


「青葉くんに会えたのかな。本当は呼びに行こうと思ったんだけど、学童の迎えがあって無理だったの」

「まあ、それで良いよ」

「……?」


 どう言うこと?


 よくわからない私は、黒豆茶の入った水筒を奏くんに手渡す。すぐに受け取って、中身を飲んでくれたわ。今日は氷をたくさん入れたから冷たいんだ。


 ……って!? これって、奏くんと間接キスになるんじゃ!?

 え、人気タレントと間接キス!? スキャンダルにならない、大丈夫? 私、ファンに殺される!?

 ……家宝にしようか、この水筒。

 

「……てな」

「へ?」


 なんて考えていたら、話が進んでいたらしい。

 奏くんは、私の顔をみながら真剣な表情になって何かを言っていた。でも、私には聞こえていない。


「……梓は、あいつのことちゃんと見てやってな」

「あ、うん……?」

「過去は過去として見てやってくれると、オレは安心するよ」


 聞き返しても、よくわからない話題だった。

 あいつって誰? 青葉くんの過去のこと? でも、それはちょっと違和感。誰だろう。


「それって、誰のこ「鈴木さん!」」

「え?」


 奏くんへ唐揚げとおにぎりを追加しながら会話を続けていると、今度は青葉くんがやってきた。走ったのかな、すごく汗かいてる。


「一段飛ばし危ないよ!」

「大丈夫。よかった、居なくなったのかと思った」

「え?」

「川久保さんが、鈴木さんが居なくなったって驚いてて」

「……ふみかが?」

「うん。……良かった」


 青葉くんは、大袈裟だな。

 私の顔を見た瞬間、泣きそうな顔して抱きしめてくるの。私はずっとここに居たのに。でも、気分的には嬉しい。


 それにしても、ふみかがなんで私を探してるんだろう。

 あっちが、マリと一緒に無視してきたのにな。それとも、私の勘違いだったとか? ほら、私って結構せっかちだから……。


「と、とりあえず、唐揚げ食べる?」


 なんて言ったら良いのかわからなかった私は、そう言いながら片手でお弁当を指差した。すると、2人して笑ってくるの。……なんで?



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