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呼んでない!!!


 お菓子勝負の後、牧原先輩は鈴木さんに聞こえないよう小声で、


「君さ、どっちにするつもり?」


 と、聞いてきた。

 訳のわからない俺は、皿やフォークを片す手を止める。


「どう言う意味ですか」

「梓ちゃんとりっちゃん、どっち取るのって」

「りっちゃん?」

「佐渡理花。僕の異母兄弟なの」

「ああ。聞きましたよ」


 なんだ、そのことか。

 それなら今日の放課後、佐渡さんに時間をもらっている。

 眞田くんに話したら、心配だから近くまでついてきてくれるって言われたな。断ったけど、どうしても待っていたいらしい。ありがたいよね。


「で、決めたの?」

「はい、決めてます」


 俺の答えは、もう決まっている。


 昔のように、逃げはしない。

 もう迷わないって、決めたんだ。



***



「はあ……」


 教室に帰った私は、自席に座ると同時にため息をついた。

 ケーキたくさん食べたから、すごく眠い。しかも、5限は世界史とくれば、寝る自信しかない。


 青葉くんは、まだ屋上。牧原先輩と一緒に、片付けしてるみたい。

 私も手伝うって言ったのに、「大丈夫だから、先に帰ってて」って言われちゃったんだ。


「梓、どうだった?」

「あの不毛な争いの結果が知りたい!」

「どっちを勝たせたの?」

「不毛って……」


 まあ、その通りね。

 次の時間の用意をしていると、マリとふみか、それに詩織が集まってきた。あれ? 由利ちゃんは……。教室にいないや。


「青葉があそこまで強気に出ると思ってなかったよ」

「ねー。でも、なんか好感度は上がったな」

「わかるー。もっと、モサッとした人かと思ってたけど」

「ちょっと格好良かったかも」

「青葉くんは、元から格好良いもん……」

「……」

「……」

「……認めたな!?」

「な、なによう……」


 青葉くんは、格好良いし優しいんだよ。

 でも、私はそれを言葉にできない。言葉にすれば、私のすっぴんを見たこととか、一緒にご飯食べたことも説明しないといけないでしょう?


 それに、これ以上青葉くんのファンが増えるのは嫌。「五月くん」って呼ぶ人が増えたらって思うだけで、胸の中がチクチクするの。


「梓、顔真っ赤!」

「こりゃあ、ソラ先輩は脈なしだね」

「でも、見た目的には青葉よりあのスポーツ科の先輩だよね」

「好き勝手言わないでよぉ」

「でも、好きなんでしょ?」


 しどろもどろになっている私は、その質問でさらに顔を熱くする。きっと今、顔がゆでだこのようになってるに違いないわ。

 何て答えればいいの? ここは、素直になってもいいのかな。


「す、好きだけど……」

「可愛い!」

「認めた!!」

「断然応援する!」

「待って。由利ちゃんさっきトイレ行ったから、ラインして教えないと」

「ちょっと、やめて! 大袈裟よ」

「だって、梓に春が来たんでしょ!?」

「……マリ、その表現はちょっと古くない?」

「そうなの? お姉ちゃんがよく使ってる」


 私が気持ちを口にすると、教室中に聞こえるんじゃないかってくらい大きな声でマリたちが話すこと話すこと。これ、大丈夫? 誰かに聞かれて……。


「……」

「……」


 教室を見渡すと、眞田くんと目が合った。と、同時に、よくわかんないけど親指立ててウインクされたわ。

 ……どういうこと? とりあえず、笑っておこう。


「で? いつ告るの?」

「どこで?」

「ついてっていい?」

「絶対しない!」

「ぶー。だって、大スクープだよ!?」

「そうだよ。あの梓が、男子を好きになるって!」


 と、どんどん声量が大きくなっていく。本当、やめてください! 本人にバレたら、どうしてくれるの!?

 青葉くんは……。うん、まだ帰って来てないわ。


「しーっ! 内緒にしてよ。青葉くんは、理花と仲が良いんだから。邪魔したら申し訳ないじゃないの」

「あー、確かにそうだ。最近名前で呼んでるよね、理花」

「そういえば、五月くんって言ってるの聞いたわ」

「梓も、名前で呼べば?」

「やーよ。青葉くんは、青葉くんだもん」


 急に名前呼びなんて、不自然すぎる!

 それに、名前を呼ぶと、理花が笑顔で「五月くん!」と呼んでいる様子が脳内再生されるの。なんか嫌だ。モヤモヤする。


「ほら、一回だけ」

「呼んでみて違うなって思ったら戻せばいいじゃん」

「聞いてみたい、梓が男子の下の名前呼ぶの!」

「……い、1回だけよ」

「うん!」

「さあさあ!」


 1回だけなら、いいよね?


 マリたちに言われて名前を呼びたくなった私は、深呼吸して息を整えた。そして……。


「さ、五月くん……」

「はい」

「!?」


 結構小さな声で名前を呼んだら、偶然か何なのかちょうど青葉くんが後ろを通ったみたい。私の声に反応して、返事を返して来た。


 待って待って待って! 嘘でしょ、待ってよ。今のナシ!


「呼んだ?」

「呼んでない」

「そっか。ごめん、勘違いだった」

「ううん。こっちこそごめん」


 なんとか誤魔化せたわね。

 というか、この教室、ちゃんとクーラー効いてる? 暑すぎるんだけど!

 マリたちは授業が始まるまでずっと、そんな私と青葉くんを交互に見てニヤついていた。

 

 

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