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転生少女は自由に生きたい  作者: ひさら
8/21

今世 5




ルークと二人で傭兵ギルドに行く。

ルークは登録手続きに、私はAランクの傭兵の護衛一日分の依頼料を尋ねに。


受付で聞いたところ、シンプルに依頼料だけなら一日金貨十枚。

宿代食事代込みならその分を引いて。その辺は依頼側と受ける側との話し合いにもよるけれど、だいたい金額的には一日金貨十枚くらいだそう。


ルークの買値は金貨二千枚だった。

これが戦闘奴隷の価格としてどうなのかわからないけど、一般庶民の金銭感覚でいったら、まぁ大金よね。金貨が十枚もあれば、一家がひと月暮らせる額だもの。

冒険者ギルドのお姉さんも、よくこんな小娘に奴隷を買う事を勧めたものだわ。

口座の残高を知ってたのかしら…。


大金だったけど、私は迷わなかった。

旅をするには身の安全はとても大事ですもの。

ルークの実力は知らないけれど、何故か彼に任せたら大丈夫だと思えた。

前世では、時にはこういう直観的な判断も必要だった。瞬時に利益、不利益を計算して計りにかける。

商人は決断力がとても大切なのよ。


貯めていたお金のかなりをルークに使ってしまったけど、私はまったく気にしていなかった。

私の祈りがあれば、この先ずっと困る事はない。治癒魔法の需要はかなり高い。私は自信を持って強気でいられた。


ロートゥス領主の紹介状もある。

稼ぐの相手は貴族相手と決めている。治癒魔法がどのくらいの報酬か、ご領主様に聞いて驚いた。

とても庶民には払えない額だわ…。

貴族にだって法外な金額に思えるけど、命には代えられないものね。


私はそんなに阿漕(あこぎ)に稼ごうとは思っていない。

お嬢様と同じ、宮廷魔法使いの半額と決めている。私は正規の治癒魔法使いではないし、そもそも魔法ではなく祈りだと思っているのですもの。

それでもご領主様曰く、宮廷魔法使いより効果があるとの保証付きに、更に自信をもった。


そういう訳で、ルークの報酬を計算するとざっと二百日になる。半年ちょっとね。

半年後、私たちはどこにいて、どんな風に過ごしているのかしら…。

元気で楽しく旅していますように。




翌日、船旅でオルキスに向かった。

オルキスはパエオーニア第二の港町で、規模でいうと大国第四位の領地になる。

ロートゥスより小さくなるけれど、東方の国々との貿易が盛んで、東国の珍しいものがたくさんあるという。


前世では、ロートゥスの我が家と王都の往復しかしていなかったので、オルキスには行った事がなかった。

往復の間にある町々にも宿泊しかしていない。

行った事のない土地、本でしか知らない土地。

これからたくさん冒険できると思うと本当に楽しみ。

船旅も初めてなので、こちらもとっても楽しみ。


甲板で潮風を受けながら広い海を眺める。

斜め後ろにはルークが立っている。

二百年前はこんな客船はなかった。

こんなに気軽に船旅ができるようになるなんて…。


ロートゥスは港町だから、貴族や商家は個人で船を持っていた。けれどそれは仕事用で、旅に使うという考え方はなかった。他には漁船なんかもあったけど、それも仕事用だものね。


時の移ろいに、たくさんの変化を知る。

知らなかった事を知っていくという事も、これからの楽しみだわ。




船旅とはいっても、朝ロートゥスから出航すればお昼過ぎにはオルキスに着く。

降り立ったオルキスの港は、これはどこも似たような造りなのかもしれないけれど、ロートゥスと大差がなかった。

船から降りると石畳が広がっている。

船から降ろした荷物を運びやすいように道幅も広い。

正面は上げ下ろしに使われる荷物の倉庫が並んでいる。馬車のたまり場もあって、すぐに町中に運べるようこちらも広く作られている。


右を見れば少し先に市場が見える。

水揚げされた新鮮な魚介類が売られていて、午前中はかなりのにぎわいと思われる。

左は船乗りが使う宿屋や酒場が軒を連ねている。

その辺りは商船ではない個人の船着き場もあるようで、小洒落た食堂なんかも見える。

きっと地元の人たちも利用しているのね。


私は船から降りる第一歩を感慨深く踏み出した。

因縁深いロートゥスではない、新しい土地。新しい人生の始まり。

忙しく往来する人たちのジャマにならない場所で深呼吸する。


さあ、行きましょう。





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