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転生少女は自由に生きたい  作者: ひさら
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今世 2




私が十歳の時から半年ごとにお嬢様を癒して五年になる。

祈りは仕事ではないけれど、私はこの力で生計を立てようと思っているので報酬はしっかりいただいている。

報酬の半分は教会に。もう半分は私が成人するまで後見人のご領主様預かりになっていて、それは私が旅立つ時に冒険者ギルドの口座に移してくれる事になっている。

未成年ではギルドに登録ができないので。


成人したら、私は冒険者になって旅に出たいと言ってある。

旅に出てからも、一年に一度はロートゥスに戻ってくる契約になっていて、緊急の時用に転移魔法の魔石も持たされる事になっている。

もちろん緊急がわかるように連絡用の魔石も持たされる。

両方とも小さな石なのでそれほど負担はない。


こんな風にご領主様が私を自由にしてくれるのは、きちんとした契約をしている事と、ご領主様の大らかな性格のおかげだと思う。

それと、私の機嫌を損ねないためも少しはあるかもしれない。治癒効果は、気の持ちようで大きく変わるようだったから。


何にしても、私はとても恵まれていると思う。

前世は哀しい思いや、親孝行ができなかった心残りのある短い人生だった。

今世では、前世の分も人生を楽しもうと決めている。


そしてできるなら。

今度はちゃんと愛してくれる人と、たくさん想い合って幸せになりたい。


……片想いは哀しいものね。




そんな風に過ごして、とうとう待ち望んでいた十五歳になった。

成人した朝、教会のみんなに見送られて巣立つ。元々教会は成人するまでの間しかいられない決まりなの。


まずはご領主様のお屋敷に旅立ちのご挨拶に伺う。

それから冒険者ギルドに行って登録する。

私名義の口座にはすぐに五年分の報酬が入った。素早い仕組みに二百年の時の流れを感じるわ…。


それから少し考えて宿をとる。旅の準備が何一つできていないんですもの。

支度が整うのに、今日一日くらいかかるかもしれない。

今日一日で終わるかしら?

焦らなくてもいいわね。準備も楽しまなくてわ!


ワクワクしながら旅支度のお買い物に出かける。

お買い物といっても、前世はお嬢様といわれた身、今世では教会暮らしなので一人でお買い物をした事はない。

そして何を買えばいいのかわからない。


冒険者の装備屋で、相談しながら丈夫な服と靴を買う。勧められて厚手のフード付きローブも買う。朝晩の防寒と、日中の強い日差し対策に必要との事。

それと性別をわかりにくくするためだとか。

よく見れば身体つきでわかってしまうけど、無防備にさらしているよりマシなんですって。

「顔もなるべく隠したほうが無難だよ」と忠告もされた。

思っていた以上に女の子の一人旅は危険みたいね。


他に何が必要かがわからない…。

一応恰好だけは揃ったので、とりあえずギルドに行こうかしら。

必要なものはわからないけど、女の子の一人旅が危険という事は知っている。

旅にはギルドで護衛を依頼しようと計画していた。

私は身を守るすべを何一つ持たない非力な女の子だもの。




「護衛ですか…」


受付のお姉さんは少し考えて、本当はこんな事を言ってはダメなんですけど、と小声で提案してくれた。


「もし奴隷に抵抗がなければ、長い目で見たら冒険者を雇うより奴隷を買われた方がお得かと思います。ある程度の強さを求めるなら依頼料も応じて高額になりますし、ジェニファーさんはとても綺麗ですから男性の護衛なら別の意味での身の危険があります。女性の護衛は…、女同士って面倒くさいのでお勧めはしません。その点奴隷なら初期投資はかかりますが、主を裏切れませんし傷つけません。長期の護衛なら戦闘奴隷をお勧めします」


そうなのね…。

今日一日で知らない事をたくさん知ったわ。


前世の家には労働奴隷がいたから、特に抵抗はない。

奴隷に対してひどい扱いの話を聞いた事はあったけど、ロートゥスは比較的労働条件は悪くなかったと記憶している。

奴隷だから給金はないけれど、衣食住は保障されていて、他領から移ってきた奴隷が驚いた、なんていう話も聞いた事があった。

二百年前の事だけどね。


奴隷商館に向かう道すがら、店の窓ガラスに映る自分の姿に目を留めると、フードの中の茶色の瞳が見返した。

私の瞳の色は少し変わっていて、光の加減で金色にも見える薄い茶色の左目と、それよりもう少し濃い茶色の右目をしている。

豊かに波打つ濃い茶髪は、今はフードの中に隠れていて見えない。


二百年前のお嬢様だったジェシカは、謙遜の意味がない程の美少女だった。厳しく仕込まれたマナーや教養で、自分でいうのもなんだけど内面からも輝いているような淑女だった。

残念なのはエリック一筋だった恋愛脳よね…。


ジェニファーはジェシカの頃そのまま、いえ、記憶にある十六歳より二年程足りない(亡くなった時は十七歳に近かったから)幼さの残る少女だけど、確かに受付のお姉さんに注意されるくらい男性に警戒した方がいい美少女だわ。

痛い戯言ではなくて切実に。



奴隷なら女性でも面倒くさくならないかしら?

男性でも女性でもどちらでもいいけれど、長く一緒に旅をするのなら相性が一番よね。

できれば見た目も好みなら、なおいいわ。


頭の中でそんな事を考え終わる頃、町で一番大きな奴隷商館に着いた。

奴隷商館に来るのは前世も含めて初めてだったけれど、私は特に躊躇もなくドアを開けた。








読んでいて、あれ?と思われた方、ニヤリとされた方、その通りです。多分当たってます。


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