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27 メイドのスキルと護衛騎士のスキル ①

早いものでこの話を書き始めて早くも1年経ってしまいました。

その割にはホラーや童話やその他の連載で浮気しまくっているので、なかなか話が進んでいない(笑)

書きくさしの連載もわんさかある。いつもならエタっている連載を完結させると書くのだけれど。

本人もどう転ぶか分かりません。只今迷走中です(笑)

 私達一族は騎士やメイドとしてバーグ侯爵家に昔からお仕えしている。

 ある日、旦那様からパイソン家のアリステア様にお仕えするように命じられた。

 アリステア様がご嫡男のエイデン様の婚約者になられたのだ。

 婚約なさったアリステア様は13歳で、エイデン様は15歳だった。

 貴族の婚約にしてはお二人とも遅い婚約だった。

 産まれる前からの婚約も貴族や王族では珍しくないのだが。

 従兄弟のアデソンも一緒に護衛騎士としてアリステア様をお守りする事となった。

 アリステア様は病弱で深窓の令嬢だと言われていた。

 パイソン家でお会いしたアリステア様は、ブルネットの髪に茶色の瞳で派手な顔では無かったが、真珠の様に気品のあるお方だった。

 貴族の娘によくある様な無駄にプライドの高い令嬢では無く、優しい方だ。

 病弱と教えられていたが、健康そのものの艶やかな髪に薔薇色の頬だ。

 初めてお会いした時違和感を感じる。

 アリステア様のお部屋は白を基調にピンク色がアクセントとして配色されていたが。

 アリステア様は居心地悪そうにもじもじと椅子に腰掛けておられた。

 まるで初めてその部屋に入った様な、なじめていないような。

 部屋は豪華な家具が置かれていたが、閑散と言う感じだ。

 そう……普通ならある人形やぬいぐるみと言った物や宝石箱なども無く。

 本やノートなども置かれていない。

 慌ただしく用意したために細かな小物を置き忘れた舞台の様だと思った。

 クロウゼットを開けると豪華な衣装は有ったが、アリステア様に合わせて作られたものではなく。

 袖が短かったり、スカートの丈が長かったり短かったりと、サイズが合っていなかった。

 既製品にフリルやレースを付けて数合わせをした、そんな感じだ。

 辛うじて家庭教師が勉強を教えに来た時着ている地味な服数着だけはサイズが合っていた。

 体が弱かったと言う話な割に寝着は少ない。

 アリステア様は身体が弱いと言うことを除けば、完璧な令嬢だと思った。


 奇怪しい。


 体が弱かったのなら普段着よりも寝着の方が多いのではないのか?

 もっと強く違和感を感じたのはメイドの事だ。

 4大貴族のご令嬢なら普通ならメイドが2・3人付けられているはずだ。


 だが……


 家令やメイド長にアリステア様の事を尋ねると、前に勤めていたメイドが辞めたから詳しくは分からないと言う話で。

 アリステア様の食事の好き嫌いや、好きな花や色など誰も知らない。

 お身体が弱いなら、常備している薬やお医者様が居るはずだが、それもないと言う。

 大きく成られて健康になった?

 しかもアリステア様だけ、何時もお一人で部屋で食事を召し上がっておられる。

 いくら病弱でも家族と一緒にお食事をされないの?

 アリステア様は手のかからないお嬢様だった。

 何でも自分で出来たから。

 朝早くに自分で起きて服を着替え髪を整え私を待っている。

 私は食事を運ぶか、家庭教師をお部屋に案内するぐらいしかやる事が無い。

 アリステア様のお母様と妹君と弟君がお茶会や町に出かける事があっても。

 アリステア様は外に外出される事は無かった。

 護衛騎士のアデソンは退屈そうだ。

 家の中では危険はない。

 彼は良く庭で【黒い犬】と戯れていた。


 アリステア様の御妹弟はメイド仲間に言わせると、とても手がかかると言う。

 いやいや、それが当たり前だ。

 貴族のお嬢様はメイドに何もかもさせるのだから。

 髪も身体も自分で洗う事は無いし、ドレスだって自分だけでは着られない。

 アリステア様は勉強がすむと、本を読んだり刺繡をしたりと大人しく過ごされている。

 そして…身体が弱いせいか、早くに床に就かれる。

 そうね……身体が弱いのだから……

 早く床に就いてもおかしくはない。

 なのに感じるこの違和感はなんだろう?


 違和感を益々強く感じたのは手紙だった。

 エイデン様とアリステア様は婚約している。

 この国では貴族の子息は15歳になると、ガルシミア学園に入る事になって居る。

 エイデン様も学園の寮におられる。

 だから婚約者に余り会えないのは仕方のない事だ。

 ガルシミア学園は王都にあり、馬車で一週間もかかる。

 それなら婚約者に手紙を書くはずだ。

 エイデン様は筆まめな方で私や護衛騎士のアデソンにさえ手紙を送ってくださる。

 でも……

 アリステア様がエイデン様からの手紙を受け取って読まれている姿を一度も見た事が無い。


 ???


 そう言えば……アリステア様はよくエイデン様に手紙を書いていたようだが。

 最初のうちはエイデン様宛ての手紙を出すように頼まれた事があったが。

 何時からだろう?

 手紙を出すように言われなくなった。


「エイデン様は学園で今頃何をなさっているのかしら?」


 ふとそう漏らすと。


「今の時期はテスト勉強で図書館でご友人と勉強なさっているんですって」


 そうおっしゃられた。


「そうなんですね」


「家庭教師に習っていた内容とは言え範囲が広くて大変だそうよ」


「まあ。剣にお勉強に頑張っておられるのですね」


 手紙のやり取りはあるようだ。

 でも……何時手紙を受け取って、出しているんだろう?

 それから穏やかに一年が過ぎた。


 それと……

 幽霊がいると、侍女や下男がひそひそと話しているのを聞くようになった。

 古い館だし、隙間風が女の鳴き声にでも聞こえたのだろう。

 私はたいして気にしなかった。


 おかしくなったのは二年目からだ。

 学園が休みの時、エイデン様は良くこちらに訪ねて来られるようになった。

 初めのうちは、エイデン様とアリステア様はよくお茶をされていた。

 婚約者同士の微笑ましいお茶会。

 でも……

 いつの間にかエイデン様の傍にソフィア様がいる様になり。

 いつの間にかエイデン様がいらっしゃっても、アリステア様が横に居ることは無くなり。


 そして突然エイデン様の婚約者がソフィア様に変わり。

 私達はソフィア様付きのメイドと護衛騎士となった。


 訳が分からない。

 アリステア様のお体の具合が悪くなったと。

 そう言われた……

 だから別棟に移して看護させていると。

 パイソン侯爵はそう仰った。


 私はそれと無くアリステア様の居場所を探ったが、この館や別棟にアリステア様はいない。

 時折、下女が粗末なスープを何処かに運んでいた。

 私は下女の後をつけた。

 下女は雑木林に囲まれた粗末な小屋に入っていくと直ぐに出てきた。

 手には空の木の皿を持っている。


 あの小屋に庭師でも住んでいるのだろうか?


 玄関から一人の少女が現れる。

 アリステア様だ。

 こんな所にいらしたのだ。

 健康そのもので、ご病気には見えない。

 彼女は井戸から水をくむと花に水を撒いた。

 鼻歌を歌っている。

 下町で子供達が歌っている歌だ。

 エラの歌。

 私もよく従妹達から揶揄われて歌われた。


 ???


 この館から一歩も出たことのないアリステア様が何故その歌を知っているの?

 乳母にでも聞いたのだろうか?

 私はそっと小屋を後にした。





 今宵はエイデン様とソフィア様との婚約発表だ。

 このパイソン家の領地の一つである港町にある、バーグ家の別荘で行われる。

 着飾ったソフィア様はそれはそれは美しい。

 エイデン様も幼さが無くなり、背も伸びて立派な青年になられた。

 二人とも幸せそうに微笑んでいる。

 ソフィア様のご両親も弟君も誇らしげだ。

 バーグ侯爵は相変わらず表情が読めないが、奥様は満足そうに笑っておられる。

 私達も別荘でお客様のおもてなしに、てんやわんやだ。


 パーーーーン‼


 ドォーーーン‼


 夜空を色とりどりの花火が咲く。

 なんて立派な花火なの。

 暫し私達メイドも手を止めて花火に見とれる。

 ため息が出るほど豪華なパーティー。

 招かれた貴族達。

 色とりどりのドレスが蝶のように舞い、楽団が優雅な調べを奏でる。

 人々に祝福されるエイデン様とソフィア様。

 まるで物語に出てくる王子様と王女様みたいだ。


 ……


 アリステア様とエイデン様が婚約した時とは大違いだ。

 あの時は仮婚約で本婚約では無かった。

 しかし仮でも貴族の婚約だ、身内だけでも集まってそれなりのパーティーが開かれる。

 まして4大侯爵家なのに……サインだけで終わるなんて。


 また感じる違和感。


 ふと手を止めて、夜空に咲く花火を見上げる。

 この花火をアリステア様は、あの小屋で一人ぼっちで、何を思って見上げているのだろう?




 そして…アリステア様は姿を消された。







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 2021/1/29 『小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・評価・ブックマーク本当にありがとうございます。

誤字報告もよろしくお願いします。本当に感謝しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] アリステアの事をちゃんと見ていてくれた存在がここにいた!!(゜ロ゜ノ)ノ でもメイドさんは『違和感』を感じても自分勝手なことはできないものね…。 きっとこれからも淡々と仕事をこなしていくんだ…
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