表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

16 レエンの後悔

今回は短いです。

 失敗した‼︎


 失敗した‼︎


 失敗した‼︎


 俺はなんてアホなんだ‼︎


 アリステアにスキルをあげすぎたのが悪かったのか?


【祝福の儀】でアリステアのすべてのスキルを隠した上で【交換】のスキルを授けた。


 それで……分身体の力を使い果たすなんて。


 いや……


 あれは大切な事だ。


 か弱い女の子が1人で生きていくためにはスキルは多すぎる事はない。


 それにあれ……


 神官達から隠し通したあの事。


【聖女セレナの生まれ変わり】


 アリステアは聖女セレナの生まれ変わりだ。


 アリステアは知らないし知る必要のない事だし。


 しかもアリステアは思い出せないだろう。


 前世の記憶など持っていても振り回されるだけで、新しい人生を生きるのに役に立たない。


 むしろ前世に振り回されて、邪魔になるばかりだ。


 アリステアは聖女の生まれ変わり。


 その事はどうしても神殿に隠し通さねばならない。


 聖女の生まれ変わりだと知られたら、またあのは王族や貴族や神官達に振り回され。


 望まぬ人生を押し付けられる……


 普通の少女が魔王と戦えと言われ。


 どんなに恐ろしかっただろう。


 彼女の母親は彼女を産むとすぐに亡くなり。


 薬師だった父親とは【聖女】だからと5歳の時引き裂かれ。


【聖女】の修業だと神殿に押し込められた。


 父親も酒場で喧嘩に巻き込まれ亡くなった。


 天涯孤独の彼女を思いやってくれる者などいなかった。


【聖女】なのだから【魔王】を滅ぼさねばならない。


【聖女】なのだから我儘を言ってはならない。


【聖女】なのだから厳しい修行も笑って耐えなければならない。


【聖女】だから……


【聖女】だから……


【聖女】だから……


 王族にも貴族にも神官にも便利な平民の娘。


 すり潰しても誰からも文句を言われない存在。


 ある意味、魔王と聖女は似た境遇だ。


 どちらも搾取され続ける。


 倒しても倒しても、復活する魔物達。


 魔力切れで何度も倒れたあの


 老騎士は【聖女】が死なないギリギリまで戦わせていた。


 聖女と旅をしている仲間で老騎士が一番まともだったが……


 それでも他の聖女が倒れる中で、聖女をすり潰すやり方しか残されていなかった。


 あのが、哀れな魔王の正体を知ってどれほど心を痛めたか。


 せめて旅の仲間があのを支えてくれたなら。


 だが……あのを利用しようとするものばかり。


 王位が継げぬから【聖女】を娶って王族が死に絶えた国を乗っ取って王位についた屑王子。


 己の功名の為に旅に加わった、いかれた魔導師。


 ただ魔物を殺したいだけの戦士。


 村人や家族を殺され復讐に狂う弓使い。


 王に忠実で平和の為と聖女をすり潰す老騎士。


 ああ……皆狂っていく。


 あのと共にいたかったが、世界はもう崩壊を始めていて。


 あのの側を離れるしかなかった。






 今生はあの時のようにボロボロに使い潰される事なく。


 心静かに暮らして欲しい。


 それがレエンの望みだ。


 しかし前世の様にあの子を守る王子も騎士も魔導師も仲間もいない。


 尤も、一番大変な時にあいつらは役に立たなかったが。


 ……


 役立たずは俺も同じか。


 名無しの精霊王。


 それが人間どもが付けた俺の通り名。


 普通、小級精霊や中級精霊は人間と契約してその世界に留まり力を使う事が出来る。


 言わば人間は錨の様な物。


 精霊に名を与えることでその空間、その時間に精霊を留める事が出来る。


 だが、精霊王の俺は人間に名を与えてもらわなくても好きな時に好きな時間でも空間でも行き来できる。


 奢っていた。


 いや……人間は短命で儚いと理解していなかった。


 俺がヘレナ島の魔法陣の中で世界を再構築している間にあの子は魔王を封印した。


 あの子はあの地を浄化出来たらヘレナ島に戻り俺と協力して世界を浄化するはずだった。


 あの子は死に、俺は一人で世界を維持しなければならなかった。


 異世界の魔王は余りにも早く世界を崩壊させていた。


 本当に無邪気に世界を壊していく。


 存在するだけで世界が壊れるのだ。


 無知で人の話を聞かない異世界の住人(魔王)。


 『私はヒロインなのよ』


 意味不明の言葉を垂れ流す魔王。


『こんなのおかしい。だって私はヒロインなのよ‼ 神に選ばれたのよ‼』


 ヒロインだと思い込んでいた愚かな魔王は魔法陣に封印されてからも泣き叫んでいた。


 あれも犠牲者だ。


 誰も望まなかった。


 ()()が来る事を。


 この世界を創った神は、別の世界を創るために旅立たれ。


 今だご帰還されない。


 この世界が滅んでもたいして気にもかけないだろう。


 この世界の管理者として俺が選ばれた。


 世界は穏やかに回っていた。


 異世界人(魔王)と言う歪みさえなければ。


 過去を嘆いてもどうしょうも無い事だ。


【魔王】は封印されたが、10年後封印のすき間をぬって外に出ようとした。


【聖女】は己の血を使い再び【魔王】を封印し死んだ。


 あのの人生とは何だったんだろう?


 ただひたすらすべての者から搾取され続ける人生。


 生まれ変わったら、生まれ変わったで碌でもない親に環境。


 他の人達が優しいのが、せめてもの救いだ。


 あの婚約者はアリステアを守るだろうか?


 当てには出来ない。


 ああ……


 この島から離れられないこの身がもどかしい。


 ヘレナ島の魔法陣の中で浮かぶレエン。


 ___ 大丈夫ですよ ___


 ___ 大丈夫だよ ___


 ___ 信じましょう ___


 ___ 信じよう ___


 ___ 私たちの愛し子を ___


 ___ 僕たちの愛し子を ___


 小級精霊や中級精霊が俺を慰める。

 彼らも俺と共に魔法陣の中で世界の崩壊を阻止している。

 愛する聖女の為だけに世界を守っている。


『そうだな』


 俺は苦笑する。

 全ては神のみ心のままに。


『信じよう。俺達の聖女を……』





 ***************************

 2020/7/13 『小説家になろう』 どんC

 ***************************

感想・評価・ブックマーク・誤字報告ありがとうございます。

ちょっと書き直すかもしれません。すみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] じ、地雷臭ただよう香ばしい女の子 だったんだね、魔王ちゃん。 もっと健気というか普通なの想像してました。 しかもザマァ済みという。 憐れだけど苦笑いがでてしまう。 ザマァした方もされた方…
[一言] 異世界ヒロインが魔王だったのか…こりゃなんとも…(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ