逃亡者
槍を持った兵士が目の前で俺達をがなり立てる。
「お前らはこっちだ歩け！」
1番前に歩いている人は兵士に背中を蹴られ俺達は宿舎のような所に連れて行かれた。
するといかにも偉そうなピカピカに光ってる金の甲冑を来た金髪角刈りのオッサンが仁王立ちで腕を組み、オレ達をガンをつけるようににらんできやがった。
「オレはこの聖教国の偉大なる兵士長バーグ様だ！ 貴様らは今から馬車に乗ってアレクサルまで移動してもらう 向こうでは衣食住とくに不自由は無いはずだ！ だがそこまでの道のりは危険なモンスターがうじゃうじゃいやがるいいか！ もし途中で暴れたり、逃亡などがあった場合容赦はないと思え」
兵士全員が武器を俺たちにむけた。
なんで？ どういこと？ アレクサルって？
「ハァ、わけわかんねーよ。オマエ殺すぞ！」
「なんだよそれ元の場所へ返せよふざけんなバカヤロウ！」
何人かが兵士に詰め寄って反発すると直ぐに
側近の兵士達が槍を彼等の喉元を突き付けてきた。
「諦めろ、貴様らはもう元の世界には帰れない
オレ達は勇者様達には決して手は出すなといわれてるが貴様ら何の役にも立たんクズには何も言われてないんだよフフフフっ
騒ぎを起こす輩には好きにさせて貰うぜ」
みんな一人ずつ手枷を付けられ無理矢理馬車に乗せられる。
「おい魔術師達を連れて来い」
兵士長バーグは側近に怒鳴る様に叫んだ。
魔術師達がすぐにやってきて
何やら奥の天幕で商人とこそこそ話し出した
よしっこっそり近づいて聞いてやろう
オレはそ〜っと屈んでバーグ達の近くで聞き耳を立てた。
「どっ…どうでしょう今回も王様や貴族どもには逃げた事にしてこっそり売り飛ばしちまいましょうよ。こんな黒髪茶色の瞳の人種は珍しいですからね」
「そうだな、兵士どもっ特に新兵だ！
いいかこの事は誰にも言うなよコイツらを隣の国からさらって来た亜人奴隷供を収容しているアレクサル収容施設に投獄し調教しておこうかと思う。北の帝国からの買い手が来るまではな」
商人は新兵の頭に装飾品だらけの手を置き、
「ひっひっひ、新兵よお前はまだ知らないだろうが俺達はバーグ様にいつもこうやって儲けさせて貰ってるんだよぉ、またどこかの村で珍しい種族を見つけてアレクサル収容施設に投獄しておけば北のアルフェンヌ帝国から来る奴隷商人が高く買い取ってくれるのでガッポリ儲けて今の兵士の仕事を引退したら遊んで暮らせるんだぜぇ」
「しかしバーグ様。我々神に選ばれし十字聖教の役に立つ事が出来てあの転移者らも幸せモノですなぁグフフフッ」
「そのとおりだ！ グワハハハハッ！」
俺はササっと皆が乗っている馬車に戻って
皆にさっき聞いた事を伝えた。
「オイ今盗み聞きして来たんだけどなんか俺らはこのまま奴隷商人に売り飛ばされるそうだぞ」
「うっ嘘でしょう、もうおしまいだぁ」
「何でアタシがこんな目に————」
まずいこれは非常にまずい！皆顔面真っ青で恐怖で固まっちゃってるし……
「怯えとったらアカンど！ ええか、今が頑張る時やでみんなで知恵を絞ってなんとかするんや！ 諦めたらあかん！ ホレみんなで考える時やで」
さっきの関西弁のおっちゃんが皆を勇気付けようとしてやがる………がでも誰も聞いちゃいねぇ
「大変だ！ 例のテロリスト集団が現れたぞ！」
「何だと、また奴隷を奪いに来たのか急げ、魔術師共は陣形を整えろ！ 行くぞ」
どうしたんだ？ 急に俺達の目の前にいる兵士達がバタバタと走り回りだしたぞ
そんな中で新兵が周りを警戒しながらコチラへと近付いて来る。
「レジスタンスの連中が攻めてきたんだよ。今のうちにお前らをここから逃してやる。いいか静かにしてろ」
「何やさっきの新兵君か何や不満でもあるんかい」
「私はクリフ・カルロベーノだ。新兵っても34歳のオッサンだけどな」
新兵のクリフがみんなの手枷の鍵を渡すと先に外した連中からどんどん馬車から出て走り去って行き、結局、最後に残ったのはオレと関西弁のおっちゃんだった。
「あんたクリフちゅうんかワイは木幡良和やで鍵ありがとうな」
「オイ新兵！何やってんだ貴様！！」
クリフがピクリと反応して背後を振り向くと
兵士の一人が剣を抜いて走ってきた。
「貴様ーっ！バーグ様を裏切りおって斬り伏せてやるぞーっ！」
バフっ！
「うっ、煙だと？ 何だ身体が痺れて？」
俺からは煙でよく見えなかったが突然、ゆらりと人影が見えて剣を抜いた兵士がすぐに倒れ、黒装束の1人が近づいて来た。周りをよく見ると何人かの人が倒れている。
「オイあの倒れてる奴ってさっき手枷とれて馬車から出ていった奴やんなぁ？
何やレジスタンスっちゅうんは見境なしかい？」
「そうだ奴らはここにいる奴らを皆殺しにするつもりだ！ いいか私が少しでも時間を稼ぐので二人は走って逃げるんだ。」
クリフは二人の前に剣を構えて立った。
だが黒装束の男はゆっくりと歩いて来る………と思っていたら突然、目にも留まらぬ速さで間合いを詰め、持っていた鎌でクリフを斬り伏せた。
「やめろやお前ーっ！」
「オイ何やってんだやめろって」
関西弁のオッサンが黒装束に向かって行こうとしたので俺は両腕で羽交い締めにして押さえた。
ズドォーン！
近くから大きな音が聞こえたと同時に黒装束はスーッと何処かへと姿を消した。
「ハアった……助かったんか？」
「ホッとしてんじゃねえ俺らも逃げるぞ」
関西弁のおっちゃんが傷ついたクリフを抱えた。
「兄ちゃんよっ！コイツは……クリフはワイらを助けようとしてたんやで、せやから一緒に連れて行くわ」
「兄ちゃんって何だよ。 俺の名前は長田正樹ってんだよ」
「おう、よろしくなマサ坊」
「あぁんマサ坊って何だよ？」
俺達は傷ついた新兵クリフ背負ってとにかく必死に逃げた。深い山道へと……
後ろを振り返らず……
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追記
2話まで読んでいただきありがとうございます。応援コメントや好評価していただけると幸いです。まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。
お好みナッツ
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