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私はヒロインよりも性格悪いし婚約破棄されて生きていけません助けて下さい

作者: 宛路マリ

なろうにはびこる悪役令嬢って全然悪役じゃなくない?もっと性格悪い人書こうぜ、思って書いたけれどなんか違うやつできた。

結局性格悪い人書くのは難しいんですよね


え、なんで私婚約破棄されてんの?


確かにヒロインにイラッときて階段で後ろから肘で押したりとか、あの女の教科書を水で濡らしちゃったりとかしたけどさ、婚約破棄する程ではなくない?


だって今まで王子の婚約者として、頑張って色々勉強とかマナー学んだりとか超辛い思いしてきたのにさ、いきなりぽっと出の知らん平民の女に、それも貴族としての心構えとかマナーとかも知らないし勉強もしてこなかったような女に横から立場掻っ攫われたらさ、普通腹立つよね?

いや、私確かに性格悪いけど、めちゃめちゃ温厚な性格の人だってこれは怒るよ。


しかもあのクソ野郎、爵位剥奪、辺境の地で庶民として大人しく暮らしてろってさ?

いやおかしいおかしい。

私絶対悪くないこれ。




そんなわけで不本意ながらやってきた辺境の地。

もともと住んでいた中年の夫婦とその一人息子の元で暮らすことになった。

夫婦の名前はレナードとエリザ、息子はベスというらしい。

みんな申し訳なさそうな感じで、どうもすみませんこんな家で、みたいな雰囲気だった。

歓待する気は微塵もないらしい。

そりゃそうか。


しかしまぁ…


「ほんと、みすぼらしい馬小屋」


ボロい、一言で言うとボロい。作ってから補修しまくって継ぎ接ぎだらけで、最早原型を留めていない。こんなんなら新しく作り変えたほうが絶対楽だろうに。


「申し訳ありません…」


誰に何を謝っているんだか。

謝るくらいなら建て替えとけよ。


彼らは淑女のためにドアを開けるだなんて気遣いができないようなのでハンカチでドアノブを覆いながら扉を開けた。


「いやだ、蜘蛛の巣が張ってるじゃない」


ドアを開けた瞬間はいこんにちは。

普通新しい客人が来るなら蜘蛛の巣ぐらい払っとくだろ、バカにされてんのか?


「その、あ、あまり時間がなくて…」

「時間がないと蜘蛛の巣も払わないなんて、さぞお忙しい生活をしていらっしゃるのでしょうね」


家の電気なんて通ってないので明かりはなく、全体的に薄暗い。差し込む日差しで埃が舞っているのが見える。


「お部屋に見苦しく物が散らかっているわ、これはもしかして全部ゴミなのかしら?どうして本が床に?」


汚ねえ。もしかしてこいつらには掃除という概念がないのか?そうだよな?そうなんだよな?知らないだけだよな?


エリザに案内された部屋も狭くて埃まみれだった。

ベッドの上にはただの布が申し訳程度にかけられているだけ。つまりほぼ板。


「これなら馬小屋で寝たほうがマシだわ」

「馬小屋にいたしましょうか…?」

「はぁ?」


はぁ?

やばいこいつら頭おかしいらしい。


「普段は何をしていらっしゃいますの?」

「裏の畑で農作業をするのがほとんどです。あとは狩に行ったりとか…」

「そう」


出された料理も正直クソまずかった。なんだこれ、申し訳程度の塩味すらまともに感じない。


「これ本当に味付けしてらっしゃる?ただの煮汁よね?」


しかもまあ、庶民なんだから同じ食卓を囲むわけですが、みんな食べるのが下手くそ。スープこぼすし食器無駄にカチャカチャいわすし。


「テーブルマナーすらなってないわ、料理に対する冒涜よ?」


そういうと奴らは悲しそうな顔をするわけだ。しゅーんと眉を下げてまあ申し訳なさそうに。


「家だけじゃなくて住人までみすぼらしい顔してるわね。逆かしら、みすぼらしい顔だからこんな家になるのかしら」


辛気臭ぇ。





「もしかしてわたくしにこんな物乞いみたいな服を着ろっておっしゃるの?」


替えの服がないので何かないかと聞いたところとんでもない服を渡された。ドレスがないにしても、これは服じゃない。原始人か?布に穴開けて頭通しただけじゃないか。着心地最悪。気分も最悪。


今のところここにきてから何一ついい点を見つけられない。この家の人が心優しい素敵な人とかだったらまだ良かったが、辛気臭くて貧乏くさい、私の言葉に平身低頭、ああイラつく。


「それで、わたくしのこの家での仕事は何かしら」


着替え終わってから私がそういうと、エリザは初めて気がついたとでもいうように、私の言葉に驚いた表情をして見せた。


「どうしてそんなに戸惑っているの?貴族として、自分の義務を果たすのは当然のことじゃなくって?…いえ、そうね、やっぱりいいわ、私はここで私のやりたいことをやりますわ。貴方がたの言うことなんて聞く気になれないわ」


とりあえずこいつらの頭を根本的に治さないといけない気がする。確かに貴族の私と意識の差はあるだろうが、こいつらはもはや人間としての行持を失っているレベルだ。


「はぁ…ほんと、最悪ね」


これからのことを考えると気が遠くなりそうだった。

私はこのクソみたいな家で果たして餓死せずに生きていけるのだろうか?



いや、無理…マジ無理…ヒロインでもいいから、誰か助けて!!



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