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おとぎ話の舞台裏 ~~~ 例えばこんな灰被り ~~~~

作者: 黒いトカゲ

とある国の首都にとある少女がおったそうな。

 その少女は、母を早くに亡くし父親が再婚した継母とその娘と暮らしていたそうな。

 ところが、この親子の仲はそれはそれは悪かったそうな。

 いつも継母とその連れ子にさんざんいじめれらたその娘は、父親からもかまってもらえず、

家の中で孤立していたそうな。


 これは、そんな少女の人生大逆転の物語……のはずである、たぶん……





 目の前にある洗濯物をじっと見続ける少女。

 籠に入っている洗濯物を前にして、まったく微動だにしない彼女に、継母はため息をつきつつも、いつものセリフを口にした。

「いくら睨んでいても自分でやらなきゃ洗濯は終わらないわよ」

「なぜ、私が洗濯等しなくてはならないのかしら?

 そんなものは下女の仕事でしょうに」

「……3年も経つってのに、まだお貴族様のつもりなのかね、このバカ娘は……

 あんたの母方の実家はとっくに没落してるし、そもそもあんたの父親は大商人だけど、平民なんだよ。

 あんたは、公爵家の血が流れているとはいえ、生まれも育ちも只の平民だって、何度言えば理解するのリリシャーヌ」

 平民の商家に嫁入りした時点で、母方の血筋がどうあれ、彼女は間違いなく「平民」であるのだが、選民思想に凝り固まった母親の教育の賜物か、気位だけは高位貴族以上の彼女には全く通じない。

 何せ、彼女の実母が生きている間は本当に貴族に負けないほど贅沢を極め、蝶よ花よと育てられていたのだ、その価値観は商家の娘ではなく、大貴族の我儘令嬢そのものであった。

これは元公爵令嬢の母親の価値観と、その贅沢を容認できてしまうマスクレーダ家の財力が悪魔合体した結果であった。


 下民風情が母親面をするなど……なんという無礼。

 こんな屈辱に何故高貴な私が甘んじていなければならないのか。

 心の底から怒りがわきあがってくるのをリリシャーヌは止められなかった。


 彼女、リリシャーヌ・マスクレーダは誇り高き王国貴族公爵家の直系である。


 マスクレーダ家は、この王国でも有数の大商人だ。

 その富はこの国の3割にも達するといわれるほどであり、国を動かす力すらあるといわれている。

そして、それは完全な事実だった。


 もともと商才のある父が会社を興し、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展させたが、さらに公爵家の後ろ盾を手に入れてからはさらに大きくなり、現在は国でも一番の大商人となった。

 その後ろ盾の公爵家こそが母の実家であり、つまり、リリシャーヌは公爵の血を引くまごうことなき高貴なる姫君なのだ。


 その自分が、なぜこんな下女がする仕事をやらされているのか、彼女には全く理解できない。

 つい3年前まで蝶よ花よと母に愛され、多くの使用人に傅かれていたはずなのに……

 母上が病死してから全てが狂ってしまった。

 

 母親が亡くなった後、どこの馬の骨ともわからぬ下民の女、それも三人の娘を連れた女を父親が家に連れてきた。

 それまで母親と自分の身の回りの世話をしていた者たちは、いきなり父親から暇を出され、誰一人残らなかった。

 使用人たちは元々母親の実家から連れてきた者たちで、母親と彼女に忠誠を誓っていたが、父親は、自分には全く礼節を払わない者をこの家に置いておく理由はないと言い放ち、あっさり家から追い出してしまったのだ。


 リリシャーヌがいくら願っても、父親は全く聞く耳を持たず、それどころか、彼女と全く面識のないその女を数日後には連れてきた。

 初めて顔を合わせたとき、リリシャーヌは彼女が自分に仕える新しい侍女だと思っていた。

 だが、とても高貴な自分に仕える資格があるようには思えず、こんな女は使い物にならないから以前の使用人を戻してほしいと懇願したところ、父親から信じがたい言葉をぶつけられた。


「彼女は私の妻だ、使用人などとふざけたことをいうならお前も追い出すぞ!

 それと、彼女の娘は全員お前の姉になるのだから、彼女たちの言うことをよく聞くように。

 彼女達に逆らうなら、この家にお前の居場所などないからな、すぐに出て行ってもらう」


 そのあまりの父の言葉に、リリシャーヌは完全に固まった。

 なぜ父はこれほどの無体を自分に働くのか。

 父と母は良き夫婦であったはずだ、愛し合っていたはずだ、その愛の結晶である自分になぜこんな仕打ちをするのか、信じがたい現実にリリシャーヌは必死に考え、そして……

 

 この女に父上は誑かされ狂わされたのだ。そう考えた。


 何とか父に正気に戻ってもらいたいと考えたが、そもそも父親は母親が存命の頃から仕事が忙しくめったに家に帰ってこない人だった。

 そのため、顔を合わせる事自体がほとんどなかったが、それでもわずかな機会を生かして父親に忠告するが、全く聞く耳を持たず、それどころか、「そんなにこの家にいるのが嫌なら出ていけばいい」と冷たく追い払われる始末だった。


こうして、高貴な血を引くはずの彼女はこの家の中でヒエラルキーの底辺にまで落ちぶれていた。


「なんで私がこんなことを……いつか見てらっしゃい、私にこんな屈辱を与えたことを死ぬほど後悔させて差し上げますわ」


 そして今日も、貴族の令嬢がする必要のないくだらない作業を、もはや口癖となった愚痴を吐きつつ、渋々片づけるのだった。

 ……さぼると食事抜きになるのである。



 屈辱に耐える生活を送っていた彼女にとある噂が流れてきた。

 一月後、王城の舞踏会で王子の婚約者を選定するというものだ。

 現王子もそろそろ成人になるが、今だ婚約者が決まっていない。

 本来なら既に決まっているだろう其れがいまだになされていないのは、昨今の貴族の凋落と商人の台頭によるものだ


 本来であれば、王族の婚約者といえば伯爵以上の上級貴族というのがそれまでの常識だった。

 だが、商人(平民)が財力を持ち、国家に対して貴族に匹敵する影響力を持つようになり、貴族だけで固まっていては国が立ち行かなくなりつつある状況に王族としても頭を痛めているありさまだった。

 特に、多くの貴族が経済的に困窮し苦境に立たされている現在では、王侯貴族のみの都合で国を動かすことも不可能。

 伝統である高位貴族家か、経済力の大商人か、どちらと縁を持つべきか国王としても頭の痛い問題だった。

 悩んだが名案が思いつかなかった国王は王子本人の意思に委ねることにした。

 ただし、正妃と寵妃を一人ずつ選ぶようにと、可能であれば、国家運営の助言者としての正妃は上位貴族から、縁故を得るための寵妃は大商人の一族から選ぶのが望ましいが、偏ることはないようにと厳命して。


 そして、国の主だった貴族と大商人の令嬢たちを招き、大々的に舞踏会を行うと。


 そして、運命の日が始まる。



 その日、町中が浮かれていた。

 何しろ、王子の婚約者が今夜の舞踏会で決まるのだ。

 しかも、貴族だけでなく有力商家にも招待状が届くなどとどいう前代未聞の舞踏会である。

 上位貴族はもとより、大商人たちも王家に繋がりが持てるとあって娘の飾りつけに余念がない。

 当然、装飾品や衣装を扱う店は高価な品が大量に売れ、近年にない売り上げを叩き出し、王子の婚約者探しというめでたい話に庶民も浮かれ、王都の飲食店もこれまた売り上げを伸ばし、王都中が浮かれ騒いでいるようなありさまだった。


「さて、そろそろ出かけるとしましょうか」

「はい、お母様」

 マスクレーダ家でも継母とその娘三人がそれぞれ準備を終え舞踏会へ出かけようととしたところにヒステリックな声がぶつけられた。。

「……わたくしのドレスがないのはどういうことですの!」

「ちゃんとクローゼットに入れておいたはずよ?」

 リリシャーヌの抗議に継母はうんざりしつつ答えた。

「あんなみすぼらしい衣装で王城になど行けるわけがないでしょう!!」

 継母は深くため息をついた。

 彼女の娘たちは一応、それなりのドレスを着ているとはいえ、あくまでも「それなり」である。

 もともと、彼女達は王子の婚約にも王家のへの繋がりにも興味はなかった。

 すでにマスクレーダ家は王家の繋がりを必要としないほどに力を持っており、むしろ、これ以上影響力を持ってしまうと、周囲にいらぬ敵意や反感を持たせてしまう。


 王家から招待状が来てしまった以上、礼儀として出席こそすれど、不必要に目立つつもりはない。

 とりあえず、「王家の招待に応じた」とういう体裁さえとりつくろえればいいというのが、彼女達の考えだった。

 当然、衣装も舞踏会に出席しても恥ずかしくない程度で、なおかつ目立たない地味目のものを全員着こんでいるが、これが「公爵令嬢」としての矜持をもつ彼女には我慢できなかったらしい。


「あのドレスが気に入らないというなら好きになさいませ。

 申し訳ありませんが、我が家で用意できるものはあれだけございます。

 商談に赴くわけでもない以上、不要な贅沢は家の家計を預かる私の領分を超えるものでございます。

 どうしてもとおっしゃるなら、ご自分でドレスでも宝石でもご用意なさったらいかがですか?

 ただし、公爵令嬢様の贅沢にこの家のお金は使わないでくださいましね。」


 口調を変えそう冷たく言い放った母親を先頭に彼女達はさっさと家を出て行った。


「生意気な!生意気な!!生意気な!!!

 下女の分際で!平民の分際で!!」

 烈火のごとく怒り狂う彼女だが、わめいたところで、どうにかなるわけもない。

 そもそも、彼女自身は家事すら満足にできず、金を稼ぐ手段がない。

 それどころか、人を使うのが当たり前で自分が働くという発想自体がない。

 当然、自分で自由にできる金などないに等しい。

この家にある金庫は鍵も暗号も彼女には知らされていないため、中にあるものを取り出すなどそもそも彼女には無理なことなのだから、無駄遣いしようがない。


 実母が持っていた衣装や宝石類のほとんどは、父親の手で全て換金され、解雇した使用人たちに退職金として渡してしまい、彼女に残されたのは没落した公爵家の紋章入りの指輪だけ。

 多少の金にはなるが、これを売ってしまう事はさすがの彼女にもできない。

何しろ、母親がなくなり、実家が没落してしまった今、彼女が元とはいえ公爵家に連なるという唯一の証拠であり、彼女の心の支えなのだから。


「私が舞踏会に参加すれば王子の心を射止めることなどたやすいことなのに、そうすれば、またお母様がいた時のように輝かしい日々が戻ってくるというのに……。

 舞踏会に参加することすらできないなんて……」

 確かに彼女の見目は非常に良い。

 さすがに最上級の貴族の血を引いているためか、外見は非の打ちどころのない美少女であり、あと数年もすれば、どんな男でも笑顔一発で落とせる傾国の美女になるだろう。


だがそれも、舞踏会に参加しなくては意味がない。

 確かに招待状はある、だが着ていくドレスも身に付ける宝飾品もない。

あの生意気な下女の用意したみすぼらしいドレスなど、着たところで王子の目にすら留まらないだろう。

すでに舞踏会が始まってから2時間が過ぎている、もう王子は相手を決めてしまったのだろうか?

まだ舞踏会終了まで時間はあるとはいえ、ここでマゴマゴしていていいはずがない。

どうすればいいのかと歯噛みして悔しがる彼女の耳に、聞きなれない声が届いた。

「おやおや、どうしたのかねお嬢さん。

 今宵は王城で舞踏会があるんだろう?

 マスクレーダ家ほどの家格なら、招待状が届いているんじゃないのかい?」

 空から響くその声に驚いたリリシャーヌが見上げると、家の屋根より高い位置に箒にまたがった魔女が空に浮かんでいたのだった。


「ほうほう、ドレスを用意してくれないとはひどい母親だねえ」

「ええ、あの継母は自分の娘達にはドレスも装飾品も用意したのに血のつながらない私を疎んじて、何の用意もしてくれませんでした」

 よよよ……と流れてもいない涙を拭うように目元にハンカチを添えて、リリシャーヌは魔女に自分がいかに不幸で哀れな身の上かと、【ないことないこと】吹き込んでいた。

「それにしても、曲がりなりにも公爵家の血を引く姫君がそんな不幸に見舞われているとはねえ……。

 世も末だよ本当に……

 よし!この婆が一肌脱いでしんぜよう」

「まあ!有難うございます!!」

 リリシャーヌは感謝の言葉を口にした。

 実母が亡くなってから、ただの一度も家族相手には口にしなかった言葉だった。


「馬車とドレスがいるねえ。

 ドレスはなんでもいいから服を持っておいで、それを作り替えよう。

 馬車は……ふむ、どうせ一度限りのものだ、その辺にある丸いものなら何でもいいよ、漬物石でも野菜でも。

 あとは馬と御者だけど、これはその辺の動物でいいよ、野良猫でも野良犬でも適当な生き物を」

「まあ!公爵令嬢の私に獣をとらえろと仰るの!?

 あなたは魔法使いなのでしょう?それくらい、魔法でちゃっちゃとやってくださいな」

「……はあ、そうかい……わかったよ……」

 恩人であっても、自分の都合で使い倒す!これぞ【元】公爵【直系】令嬢クオリティである。


 結局、ドレスは継母が用意した地味ではあるが品のあるドレスを。

 馬車の材料はかぼちゃを、馬と御者はネズミ捕りにつかまっていたネズミを。

 それぞれ魔法で作り替えることになった。


 魔法で豪華になったドレスを見ながら、それでもリリシャーヌは不満げにつぶやいた。

「このドレス少し地味ではなくって?」

「バカをお言いでないよ、これ以上派手にしたら、貴族令嬢の不興を買って会場から追い出されるかもしれない。

 確かにお嬢さんは公爵家直系の血筋だろうが、今は平民の立場なんだ、高位貴族のご令嬢達を敵に回したら勝ち目はないよ。

 あまり目立ちすぎないようにほどほどが一番さね。」

「でも、王子の目に留まらなければ意味がありませんわ!

 私はこの舞踏会で王子の心を射止めなければならないのです、失敗は許されませんわ!!

 もし王子が私のものにならなかったら、どう責任を取ってくださいますの!?」

 知るかそんなこと!と怒鳴りつけたいのを我慢しながら、魔女は静かに答える。

「安心おし、あんたの美貌は超一級品さね。

 その美貌だけで王子が放っておきゃしないよ。

 それに考えもみな、派手な衣装や装飾品で飾り立てた現公爵令嬢や侯爵令嬢より劣る品を身に付けたあんたが、自分の美貌で王子を落とすんだ。

 そちらのほうが他の娘達よりお前さんが格上だと知らしめることになる、痛快だとは思わないかい?」


 さすが年の功、魔女は元公爵令嬢直系のプライドを刺激する会心の一撃を放った!!


「そ……そうですわね。

 私の美貌をもってすれば、衣装の出来や装飾品の有無など大した問題ではありませんわ」

 クリティカル!!

 元公爵直系令嬢はちょろかった! 


 

 ネズミは立派な体躯の白馬と熟年の渋さを醸し出す御者に。

 かぼちゃは子爵家程度の品質の馬車に(大商人が使ってもギリギリ許容されるレベル)、ドレスもほぼ子爵家レベルに準拠した、それでも、彼女の美しさを引き立てる清楚さと妖艶さの間をとったもの。

  アクセントにはダイヤモンドと同じようにカッティング技術を駆使し、煌びやかな光を放つガラスの靴。

 同じように宝石にも負けない輝きを放つ見事な細工のガラスの首飾り。

 ガラスの装飾品で統一するのは、先ほども説明した通り、高位貴族の敵意を避けるためであると説明すると、彼女は納得した、やはり『自分の魅力で王子を落とすほうがカッコいい』という言葉はかなり彼女に効いているようである。

 そして、彼女の身元を保証(?)する、元公爵家紋の入った指輪も魔法で飾り立てられた。


「いいかい、この魔法は仮初の姿を与えるものだ。

 日付が変わると効果が切れる。つまり、今夜真夜中の12時に全ての魔法が解けてしまう。

 時間には十分注意するんだよ。

 零時の鐘が鳴り終わったら魔法も解けちまう。

 魔法が解ける寸前まで踊っていたら、せっかくの衣装も馬車もみんな消えちまうからね。

 みすぼらしい姿を王子に晒したくなかったらすぐに帰ってくるんだよ。」

「もっと魔法を持たせることはできませんの?

 手を抜いているのではなくって?」

「……魔法っていうのは世界の理を誤魔化しているものなのさ。

 だから一日が終わり、新しく始まる時、全てがリセットされてしまうんだよ。

 その場に術者がいて魔法をかけ続けるか、特別な道具を用意するならともかく、そうでなければ日をまたいで術を維持するのは不可能なのさ」

「なら、従者としてついてくるか、その道具とやらを貸しなさい。」

「無茶をお言いでないよ。

 特別な道具を王城に持ち込むには、事前に許可が必要なのは常識だろう?

 危険物として取り上げられてしまう。

 それに魔法をかけなおすのもだめだ、あらかじめ仕込んでおく魔法なら、腕が良ければ誤魔化せもするが、王城内で堂々と姿を偽る魔法をかけなおせば直ぐにばれてしまう。

 そうなったら、結局、魔法を消されて元の姿がばれてしまうよ。

 王城にだって魔術師はいるんだ、あまりおかしな真似はできないのさ」


 ……何気に宮廷魔術師を【無能】とディする魔女、いい根性である。


 

「それでは困るのです。

 私が王子に出会えるのが、いつになるかわかりません。

 魔法が解ける前に王子に出会えるかわからないのですから、できるだけ時間に余裕がほしいのです」

 彼女の我儘ではあるが、必死の言葉に魔女はしばし考え込んだ。


「ふうむ……12時で術が解けるのはどうしようもないが……ならば、解ける寸前に別の魔法が発動するように仕掛けておこう。

 12時の鐘が鳴り終わる寸前にお前さんを自宅に送り届ける転移魔法だ。

 仮初の魔法が解ける前に王子の前から消え去れば、みすぼらしい姿を見せることもあるまい。

 これなら、ギリギリまで会場にいられるだろう」

「みすぼらしい、みすぼらしいと失礼な方ですわね!

 それで、王子が私を妻として迎えに来てくださいますの?」

「安心おし、お前さんが消えた後にちゃんと王子に手がかりを残しておいてやるよ

 王子が本気でお前さんに惚れたなら、その手がかりを使って必死に探すだろうよ。

 お前さんが心配すべきは、魔法が切れるまでに王子の心をしっかり手に入れられるかということさ」


 もっとも王宮に入る人間は最低限身元の確認がされる(身元不明の怪しげな人間が王宮に入れるはずもない)上に、彼女が元公爵家縁の人間であることは指輪を見れば一目瞭然であり、顔を変えてもいないのだから、彼女を探し出すのはさほど困難なことではないはずである。

 王子がよほどの阿保の子でなければ……


「いわれるまでもありませんわ!

 王子は私の物ですもの、他の女になど渡すものですか」


 こうしてちょろい……もとい、自信満々の元公爵直系令嬢リリシャーヌは意気揚々と魔女の仕立てた馬車で王城へと乗り込んでいったのである。



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 馬車が視界から消え去り、10分ほどたってから、魔女は安どのため息を吐いた。

「やれやれ……、やっと行ったかバカ娘め……本当に手間をかけさせる」

 そのつぶやきとともに、魔女の姿がかすれ、輪郭が崩れると一瞬で別の人間の姿となった。

 その姿はリリシャーヌの継母であった。

「そこまでおぜん立てしてさしあげる必要などありませんでしょうに」

「本当に、おめでたい女よね……あんな馬鹿な女に王子が引っかかるかしら?」

「引っかかってくれないと此方が困る……あの娘は私たち家族にとって異物……速やかに排除するべき。」

そして、物陰から3人の娘たちも現れる。

 彼女たちはすでに一度王城に出席した後、タイミングを見計らって一度自宅に戻ってきていたのだ。

 娘たちの言葉に、継母は肩をすくめつつ答えた。

「まあ、曲がりなりにも「元」公爵家の血筋で、しかもマスクレーダ家の娘だ。

 金と血筋でいえば十分に王子を狙える立場だね。

 ついでに、王子専用の魅了術をドレスに仕掛けておいたから、王子が一目見れば一発で恋に狂うだろうよ」

 人の悪い笑みを浮かべつつ継母は娘達に問いかける。

「それより、あんたたちの方はどうなんだい?」


 母親の問いかけに、最初に答えたのは末娘だった。


「問題ない。

 あの娘の戸籍は我が家から排除済み。

 既に彼女は我がマスクレーダ家とは無関係。  

 血縁関係を盾に援助や財産分与を請求することはもはや不可能。」


 一見、冷酷なように見えるが、実はリリシャーヌと彼女達は完全に赤の他人であり、血縁関係は存在しない。

ゆえにこれは、もともと偽装していた戸籍を正常な状態に戻しただけである。


 言うまでもないが、父親とリリシャーヌも実際のところ血のつながりなど無い。


 元々、彼女たちの父親であるダレナス・マスクレーダは妻子の有る身だったが、その財力に財政が破綻しかけた公爵家と没落貴族一号が公爵家では外聞が悪いと判断した王家が無理やり圧力をかけて妻子と別れさせ、公爵家の行き遅れの娘と結婚させたことがすべての発端であった。


 愛する妻子と引き裂かれ望みもしない女との結婚、しかも相手は気位ばかり高く適齢期を超えても結婚相手のいなかった不良物件ともいうべき令嬢。

当然、夫婦仲がよいはずもなく結婚当初から家庭内別居状態。

さらには選民思想に凝り固まった前妻は夫であるダレナスを公爵家の財布としか認識せず、自分には指一本触れさせなかった。


それでいて、彼の財産と商会を手に入れるために子供を必要とした彼女は、仕事で家を留守にしがちなダレナスの隙をついて、気に入った貴族のドラ息子達を家に連れ込み淫行三昧、めでたくリリシャーヌを懐妊した後、彼女をダレナスと自分の娘だと言い張ったのである。

 誰が見てもバレバレな行動だが、『子供さえ出来ればすべてうまくいく』と信じていたのだから、彼女のお花畑もここに極まれりといったところだろう。


 もっとも、父親の公爵家当主も亡くなり、公爵家以外の貴族が複数没落し、彼女の実家が没落しても『王家の恥』にならなくなった以上、王家としても国の経済を支える大商人に無駄な負担を押し付ける気は無くなっていたため、彼女の切り捨ては王家の公認となっていた。

ただ、さすがに王家もリリシャーヌとこの国その物をマスクレーダ家と商会が切り捨てるとは想像もしていないだろう、決して王家に悟られぬようこれまで水面下で動いていたのだから。


「本店も財産のほとんども帝国へ移動済みですもの。あとは私達が姿を消せば、彼女ともこの国とも縁を切れますわ」

「さっき、父様からいつになったら帰ってくるんだとせかされちゃた。

 早く親子水入らずで暮らしたいって、ずいぶん焦れているみたいよ。」

長女と次女の言葉に母親も頷く。 


 既に、商会の主要な財産も社員も他国へ移動済みだった。

 後はこの国の王族に押し付けられたあの不良債権の娘、もとい公爵の末裔さえ処分すれば、彼女達がこの国に残る理由は存在しない。

「まあ、最低限の財産は置いて行ってやるんだ。

 たとえ王子に拾われなくても、無茶な贅沢しなければ十分生きていけるだろうよ」

 事実、家には平民なら一生遊んで暮らせる程度の宝石やら金貨やらを置いてある。彼女のリリシャーヌへの最後の情である。だが、現実はそんなに甘くなかった。

「母様、あのバカ娘にまともな金銭感覚を期待するのは『トカゲをドラゴンに育てる』くらい無謀じゃない?」

 昔から無謀・妄想的な愚行を意味する慣用句を使って、リリシャーヌをこき下ろす次女。

 そのあまりに無情な指摘に、3年以上彼女をまっとうな娘に矯正しようと努力した母親は重い溜息をついた。

「一応、最低限の家事と社会常識は教えたはずなんだけどねえ……」

 自分の努力を真正面から否定されてちょっと遠い目になる母親に末娘の無情な追撃が襲い掛かった。

「彼女の選民思想と自分本位と思い込みは特一級、矯正は不可能と進言する。」


 ……まあ、そうだよねえと彼女の冷静な部分が頷く。


そもそも、一人でやっていける程度に常識と知識があるなら、金だけ渡してとっくに縁を切って逃げていた。

それを今まで待っていたのは、あのバカ娘を押し付けても良心の呵責にとらわれずに済む相手が見つからなかったからこそなのだ。

 それが、自分たち家族の幸せをぶち壊した片割れである王家の小僧なら、遠慮なく熨斗付けて押し付けられると今回、『バカ娘を玉の輿に乗せて逃げちおうぜ大作戦』を実施したのだから。


ちなみに作戦名がおバカすぎるなどと指摘してはいけない、それは言わないお約束というやつである。

それほどテンションンが上がりまくっていたのだ、いかにリリシャーヌが彼女達にとってお荷物だったのかわかろうというものである。


 本来ならそこまでしてやる義理はないのかもしれないが、元凶は彼女の実母のお貴族様脳による歪み切った価値観と教育の結果であり、リリシャーヌも被害者なのだ、そう思うからこそ見捨てきれずにここまで頑張ってきたのだが……


 私の3年間の苦労は無駄だったのかなぁ……

 などと、ちょっぴり涙目になる肝っ玉お母様であった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ああ!我が世の春再び!


 リリシャーヌは絶頂だった。

 彼女を見るなり、王子はほかの賓客たちへの挨拶もそこそこに彼女のもとに駆け寄り、ダンスパートナに指名したのだ。

 その姿を見届ける王も満足げだった。

 彼女がすでに没落し家名が消えた家の出身とはいえ、公爵家直系の血筋であることに代わりはない。

さらに今この国でも最も勢いと財力のある大商会マスクレーダ家の娘でもある。

血筋・財力とも申し分ない理想の相手だった。

 見るからに彼女も王子に対して好意を持っている。彼女が王妃になれば、莫大な財力を持つマスクレーダ家の取り込みもたやすいのだから、王としても文句なしの相手だ。

「うむ、あの娘が王妃になれば我が王家も当面は安泰よな。

 王子よしっかりとその娘の心を手に入れるがよい」


 所詮、為政者の結婚など打算最優先である。

 純愛?恋心? なにそれおいしいの状態であった。







ごーーーん。


 重々しい鐘の音が響く。

 午前零時、日付が変わる瞬間、すなわち、魔法が解ける時間が訪れる。

 我が世の春を謳歌し、夢心地でいたリリシャーヌを正気に戻す無情な現実、これがどこぞのオタクイベントの帰り道なら、デカデカと【理想⇒現実】の看板がリリシャーヌの眼前に掲げられていたことだろう。

 

 ここで王子の心を完全に掌握しなくてはならない。乙女リリシャーヌ一世一代の勝負の瞬間である!!

「王子殿下……夢のような時間を有難うございました。私はもう帰らなくてはなりません。」



ごーーーん。



はかなげな笑顔、目じりには微かな雫、だがあふれるような量ではない、否!ここで涙をあふれさせてはならない。

只王子の心に自分への興味を、未練を残すよだけ、ここで涙をあふれさせては寧ろ引かれてしまう!

「私は本来ならここに来ることを許されぬ身、ですが、せめて一度くらい年頃の娘として華やかな舞踏会を見てみたかったのです。

 まさか、殿下と踊れる機会があるなどと夢にも思いませんでした。

 もう十分でございます。」



ごーーーん


「待ってくれ、もう少し一緒にいてくれ、父上に紹介したい。」


慌ててすがる王子に、よっしゃ!手ごたえあり!!と心でガッツポーズの某お嬢様。


「殿下のお言葉は身に余る名誉なれど、この姿は仮初のもの。

 真実の姿はとても殿下にお見せできるものではありません、そして、日付が完全に変われば私はそのみすぼらしい姿をさらすことになるのです。

そうなる前に私は家に戻らねばなりません、家の恥にもなってしまいます」


 『王子様は好きだけど、自分の立場じゃ釣り合いがとれないし、家族も許してくれないかも……』なんてしおらしくいってみたりする。

勿論本音は『元公爵家令嬢の私こそが王子の伴侶にふさわしいに決まってんじゃん、当然の反応よね』とか思っていても、決して気取られてはならない。それが乙女(笑)の誇りである!


 ……さあ、王子の返答は如何に!!


「かまわない、この短い時間でも君との会話で、どんな人間かは理解したつもりだ。

 外見だけではなく君という女性を、一人の人間として君を愛する自信がある、どうか私と一緒になってくれないか」


ごーーーん


ぱんぱかぱーーーん!!と高らかに鳴り響く脳内ファンファーレ、荘厳な鐘の音すら一蹴しかねない勢いである。


『よっしゃあーーー、王子ゲットーーーー』

 表情はいまだに愁いを含んだ乙女のままで彼女の心は大歓喜!

 だが、ここで油断はできない、最後の一押しがより確実に王子の心をものにする。

 そう、恋を燃え上がらせる【一時の別れ】イベントだ!!

「私ごときにはもったいないお言葉です。

 ですが、私自身が殿下にみすぼらしい姿をお見せすることが我慢できず、私は姿を偽る術を魔女に掛けられる時にお願いしたのです、術が解ける前に速やかに家に帰れるようにしてほしいと……

 その術は12時の鐘が鳴り終わる直前に発動します。私にはそれを止める手立てはありません。

 どうかご無礼をお許しください。」



ごーーーん

 何やかんやと少女漫画的なやり取りが続いていたが、鐘の音は無情に時を刻み、そしてついに11回目が鳴り響いたその時。


かあぁぁーーとリリシャーヌの足元からあふれる光。

何事かと驚き慌てる周囲の人々、駆けつける護衛の騎士達、光の中に解けるように消える思い人を呆然と見送る王子。


ごーーーん


最後の鐘の音が消えると同時に光も消え、そこにいたはずの可憐な乙女は跡形もなく消え去った。

床に輝くガラスの靴を片方だけ残して。




そこからの恋する男の行動は早かった。

【手がかり】とも言うべきガラスの靴を手にし、国中にお触れを出した。

いわく『年齢15歳~18歳の娘は○○月××日王宮前の公園に集合すべし、そこで王子の伴侶となる娘を選別する』というお触れを出したのである。


それを後から知った王様は頭を抱えた。

 息子のお手並み拝見と、助言をせず眺めていたらあっという間にそんなことをやらかしたのだ。

止める暇などありもしなかった。




いや、舞踏会参加者は招待状受け取った人間だけだからね、ちゃんと入退去の記録とってるからね、それ調べればある程度目星つくでしょ?

そもそも、なんで年頃の娘全てに召集をかける必要あるの?

 お前彼女と踊ってただろ?

 身長や体格、髪の毛の色や長さ、瞳の色だってわかるだろ?

 間近で見てただろ?

 もっと条件搾れるだろ?

 集めた娘の面倒見るのだって、手間も金もかかるんだよ、何やってんの?


 父王が国の将来に不安を感じた一瞬であった。

ただ、王子を問い詰めたところ、当の娘が姿を偽っていたと言うので外見だけでは判断できない可能性があり、確証を得るには物証を使うしかないと反論された時は、なるほどとある程度は納得したものの、外見が完全に別物でもいいのかい?と一抹の不安はぬぐえなかったとかなんとか。


そうしてお触れを見た娘たちは【目指せ玉の輿!!】とばかりに王城前広場へと詰めかけ、宮廷騎士はそれはそれは苦労したそうな。


 なお、当然のことながら、無作為でかき集めた娘たちの中には体格や足のサイズがほとんどリリシャーヌと変わらぬ娘もいたのだが、そこは宮廷魔術師を無能扱いした凄腕魔女製作のガラスの靴、所有者識別も完璧で、サイズの合った令嬢が勝利の笑みを浮かべた瞬間!


「ブブーー!

 あなたは所有者として登録されておりません、当靴をご利用される場合は所有者登録を実施してください。

 繰り返します、あなたは所有者として登録されておりません……」

などと高らかに宣言されては、間違っても自分が靴の所有者だなどとは言えず、渋々引き下がるしかなかった。


 ちなみに、これだけあからさまに靴からダメ出しされても、懲りずに挑戦する剛の者も何人かいたようである。



かくして紆余曲折の末、元公爵直系令嬢リリシャーヌと王子様はめでたく婚姻となった。


 後からリリシャーヌの戸籍がマスクレーダ家から抜かれて身寄りのない孤児状態だったとか、マスクレーダ一家と商会が消息不明になって当てが外れた国王が真っ青な顔で倒れたとか、リリシャーヌが実はマスクレーダ家の血を引いていない不義の子だったとか、あれやこれやがあったわけだが、その辺は割愛する。


只、とある王家が理不尽な手段でやり手の商人を敵に回し、その商人と本当の家族に不幸の十倍返しを食らったのは永遠の秘密である。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここは帝国と呼ばれる大国の首都たる『帝都』

そこには帝国一でも最大の規模を誇る大商会の主の館が有る。


その館の一室からカリカリとペンが紙をひっかく音が聞こえていた。

「『……そして、厳しい継母と意地悪な異母姉達にいじめられていた少女は、王子様に見初められ、王妃となって幸せな結婚生活を送ったのでした、めでたしめでたし』……っと……完成」


 満足げにうなずき、完成した原稿から目をはずし、カーテンと雨戸を開ける。

 執筆中は外の騒音を遮断するために雨戸と分厚いカーテンを閉めるのが彼女の癖だ。

 窓の外は目に眩しい夕日が見える。


「もう夕方……夕食は……」

 マスクレーダ家の末娘が窓を見ながらつぶやくと、ドアを開いて長女が入ってきた。

「まだよ……というより、もう早朝なんだけど?」

「え?」

「そもそも、あなたの部屋、東側にしか窓ないでしょうに、あれは朝日、あなたは徹夜したのよ」


 ……どうやら夕日ではなく朝日だったようである。


「びっくり……そうだった、私の部屋からは夕日は見えなかった……」

「徹夜で頭がぼけてんじゃないの?

 食事まで抜いて、健康にも美容にもよくないわ」


そういいつつ長女は妹の作品に軽く目を通した。


「あの娘をモデルにしたにしてはずいぶんと綺麗な物語ねぇ、

 でも、ちょっとあの子をいい子にしすぎてない?

 第一、これじゃ私たちが悪役じゃない」

 もちろん、個人を特定できる情報はないが、自分たちがモデルなのだからわからないはずもない。


「子供向けのおとぎ話だから、わかりやすい話にした。

 私たちを主役にしたら、姉妹だけでも3人もいる。

 子供にはわかりにくくなるし感情移入も難しい。

 でも、あの娘を主役にすればヒロイン一人に王子様一人でわかりやすい。

 売り上げを考えたらこちらのほうが絶対に良い」


 あきれた表情で自分を見る姉に彼女はさらに自論を展開する。

「あの娘とその母親にはずいぶんと苦労させられた。

 せめて慰謝料代わりに稼がせてもらわないと割に合わない」 


そういいつつ、完成したばかりの原稿を持って出ていく妹を苦笑しながら長女は見送った。

「子供達には聞かせられない裏話が山盛りだけどね」


そう嘆息しつつ、滅びゆく王国を思う。


「ま、私たち親子をなめてくれたんだから、『ざまぁ』ってことでいいのかしらね」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 これは、昔あったとある王国の物語。


 あるところに哀れな娘がおりました。

 母を幼いころに亡くしたその娘は父親の再婚相手の継母とその娘たちに常日頃からいじめられていました。


 ですがある時、お城で王子様の花嫁を選ぶ舞踏会が開かれることになったのです。


 でも、貧しい娘にはお城に着てゆくドレスも身を飾る宝石も遠いお城まで行く馬車もありません。

 そんな彼女を憐れんだ魔女のおばあさんが彼女に魔法をかけてくれました


 そして様々な出来事を超えて王子様とその少女は結ばれ幸せに暮らしました。








 けれど、決して考えてはいけません。


 父親はなぜ娘を放置しているのか?あるいは娘のために何もしていなかったのか?

なぜ、自分の娘より年上の子供を持った女と父親は再婚したのか?

 貧しい娘は彼女だけではないはずなのに、なぜ魔女は彼女だけに力を貸したのか?

 王子様は会ったこともない彼女になぜ簡単に心を許したのか?

 王子様はいずれ王様になるのだから、その娘は将来王妃様になるけれど、貧しく教養のない娘に王妃なんて大任が務まるのか?

 他の魔法が解けたのになぜガラスの靴は残ったのか?

 魔法が解ける直前までお城で踊っていたのに、正体がばれないのはなぜなのか?

 というより、魔法の馬車もなくなるから家に帰れないのでは?

 そもそも、魔法で姿を偽る不審者をお城の魔術師たちが気づかないのはなぜななのか?

 魔法で姿が偽れるなら、他にもいろいろ魔法的な効果がドレスにあっておかしくないよね?魅了とか洗脳とか

 お城に許可のない人間が入れるはずがないのに、王子が国中にお触れを出さなければ娘が見つからないのはなぜなのか?

 というか、踊った相手の顔や体形がわからないって無能じゃね?

 国中の娘を集めたなら、同じような足のサイズの娘だっていたはずなのに間違えないのはどうして?


等々、決して考えてはいけません、それはおとぎ話のお約束なのだから。 


いいですね、決して考えてはいけません。

考えてはいけないのです。

いいですね……約束ですよ……



~~~~~~~  完   ~~~~~~~~




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あとがき&設定&言い訳


 さて、これでおとぎ話の舞台裏第1話はお終いです。


 皆さん、おとぎ話を読んで、あれ、ここおかしくね?いや、それ無理過ぎね?と突っ込んだことも一度や二度ではないでしょう。

 子供のころは素直に読めたおとぎ話ですが、大人になってから思い返してみると、明らかにつじつまが合わないというか、何か裏設定が隠されてね?と勘繰りたくなるようなことが多々あります。


そこで、今回私なりにおとぎ話のつじつまを合わせるにはどんな設定・ストーリー展開が必要かを考えて物語を補完してみようと思い、こんな小説を書いてみました。

題して、おとぎ話の舞台裏(おとぎ話の隠された秘密に迫る)物語。

こうすれば、この物語の疑問はある程度納得できるんじゃね?と考えて書いてみました。


今回はもちろん誰でも知っているであろう、そしておそらく、なろうではやっていたヒロイン下剋上もの、元祖ザマァ物

「シンデレラ」


しかし、書いてみたらまあえらいことに……どう考えても、ヒロインじゃなく悪役のはずの継母と娘たちの方が正義という悪役令嬢逆転ザマァになってしまったという……、どうしてこうなった orz


だって、そう考えないとつじつまあわないんだもん!!!(逆切れ)


特に私が疑問に思ったのは、父親のシンデレラに対する冷たさ。

シンデレラより年上の娘のいる女と再婚するって、シンデレラの立場全く考慮してないよね?

そもそも再婚するのにわざわざ子持ちの女と結婚する?おかしくね?

そう考えると、再婚相手に彼女を選ぶ理由がもともと好きあっていたのに何らかの理由で結婚できず、シンデレラの実母と結婚したという状況しか思いつかず……いろいろ考えていたら、本編のような結果に……。

略奪婚ダメ絶対 (◎_◎;)


後はまあ、読んでもらえばだいたい言いたいことは書ききれたかなと思います。


あ、一応ガラスの靴はなんで残ったのかっていうと、リリシャーヌが欲しがっていた特別な道具の一種だからです。

まあ、あくまでも装飾品というか、靴としての性能を限界突破するほど極めた魔法がかけられているだけですけどね(^^)/

 壊れず、履き心地よく、靴ずれせず、他人の足を傷つけない(ピンヒールだけど、他人の足を踏んでも相手にダメージを与えない)という特別仕様。

 たぶん王子様が証拠物件として確保しなければ、宮廷魔術師が研究材料にするほどの一品だったり。


 さすが超一流魔女、無駄に高性能な代物を作りやがる、前世は日本の靴職人だったに違いねぇ (^◇^)


 ちなみに、ネットで調べてみると原典と思しき作品には魔女は出てこず、靴(これもガラスではなく金と銀の2足)やドレスは白いハトが用意するとか、母親の墓に生えていた木が用意するとかトンでも設定だったりとか突っ込みどころ満載という……

でも父親が娘に無関心というか存在がほとんど無視されているのが共通とかもうね……父親ぇなにやってんのと言いたい (´・ω・`)


 もし次回があったら、次の話は子供の憧れ御菓子のお家が主役(?)の『とってもおかしな物語』です。

 ……次があったらね(◎_◎;)



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