リベリアと悪魔2
「悪魔っていうのは、神に刃向かった者たち—――いわゆる穢れたものを指す」
彼らは、魔界と呼ばれる世界に住み、人の精神の苦痛を糧に生きている。
それ以外にも、神界——神様と天使が住むところ、現世——人間が住むところ、と世界はこの三つの界によって成り立っていた。
「この悪魔、天使は契約者がいないと現世に姿を現すことが出来なくてな」
魔界がつっまんねぇからこっちきた、とリオンはぼやく。
「大抵は、お願い叶えたら代償貰ってほい退散、っていうのがセオリーだが」
「じゃあ、何で居んのよ」
「リベリアが住んでんのは、こっちだろ? 死んでないやつ、魔界に無断で連れていけねぇの。
【王たる王】の紋章がないと」
魔界には七つの大罪で階級を分けるらしい。そして、その七つの頂点に立った者は二つ名を頂けるそうだ。
「あと、【王たる王】の紋章があると、こっちに無断で来ることが出来る。
ずりぃよな、【茨姫】と【偉大なる王】」
「ちょっと、ついてけなくなった。説明戻して」
白髪の前髪をリオンは掻き上げると、溜息をついた。
「で、俺がいるのは気まぐれ。別に無理矢理攫ってく方法もあるんだが、多分上が五月蠅いし。
普通に生活してろ、俺はお前の後をついて楽しむだけだから」
リオンはごそごそと自分の洋服を漁って、取り出したのは紅い宝石のついた指輪。指輪には装飾が施されており、見るからに高そうだった。
「これ、契約した証だから、無くすなよ」
ぽいっ、と投げるようにぞんざいに扱った指輪を、リベリアはキャッチし自分の中指に嵌めた。
「で、契約した証拠に、お前のなんかの力が超跳ね上がるから」
「えっ、どんな力?」
「知らない。自分で考えろ。運だったりしてな」
別に運が跳ね上がってもしょうもないことしか出来そうにない。
「さて、説明めんどくさいから、ここまで良いな?」
リオンは立ち上がると、私のすぐ前に立つ。
「じゃ、俺、寝るから」
どぷんっ、と私の影の中に吸い込まれた。
「えっ」
影の中に入ったまま、リオンからは返事はない。
「どうすれば良いの? これ」
私は途方に暮れて、そのまま十分ぐらい突っ立っていた。




