リオン
申し訳ないですが、このお話で完結とさせていただきます。
一応、epilogueは入れるつもりです。
リベリア達が、ギルドに向かうとそこは騒然としていて、何か揉め事があったのかと錯覚させるほどだった。
「どうかしたんですか?」
「おい、嬢ちゃん、知らねぇのか。国からの強制クエストだよ」
問いかけに応じた冒険者は、やれやれと肩をすくめた。
「強制・・・・・・ということは、何かを倒せと?」
「ああ、しかもそういうのは、国に害するものだ」
「けっ、東の国の強制クエストは冒険者を兵士に使ったって言ってたぜ?」
この様子からわかるに、強制クエストというものは随分と達が悪いらしい。彼らは疲れたように、息を吐いた。
「強制クエストはこの町にいる冒険者を強制的に国が提示したクエストに受けさせることが出来る、一回きりのギルドへの命令権さ。それゆえ、普通は使うことないし温存する。それを使うとなると、結構大物だったってことだ」
「クエストの内容は?」
しんっ、とギルド内が静まった。
「今夜二十三時。北東から魔王軍の進軍アリ。冒険者強制クエストにより、討伐対象、双頭狼とその兵五千」
双頭狼。災いを運ぶ龍と呼ばれ、魔王が所有する暴食の化身と呼ばれるモンスターだ。
アルトリシアとリベリアが倒した翼竜など、双頭狼の前では雑魚という格付けになる。
「ふむ、それは・・・・・・この国にいる冒険者の数は?」
「たったの百とちょい」
「それは無茶ですね。作戦は?」
「それはこっちで考えろとさ」
ギルド本部では作戦を考えているらしい。
ここにいる冒険者の力を把握しているのは、彼らだから安心してもいいだろう。やすやすと自分たちの支部を残して逃げるわけにもいかないし、面目がつぶれるから死に物狂いで作戦を練るはずだ。
***
魔王軍が進軍してくると言われたその夜。
リベリアとリオンは宿屋に戻った。
フィラギスとミーレは、自分たちの宿屋へ行くと言ってギルドで別れた。
だが、そのリベリアとリオンのいる部屋の空気は重苦しい。
そして、もう一人、この宿屋にはいた。
紅いマスクに、変わらず人の癇に障る笑顔を張り付けて。
そいつは、リオンとリベリアが部屋を開けた時には立っていた。
臨戦態勢をとる二人に向かって、マスクの男は一言。
「初めまして。【小さき王】とその契約者よ」
で、現状に至る。
「で、貴方、お名前は?」
「私のお名前は、そうですね、マスク、とでも」
「馬鹿にしてんの?」
「滅相もございません」
ゆらりと、空気中の魔素を揺らしながら、リベリアは唇の端をイラつかせた。
「で、マスクとやら。貴方の目的を聞こうじゃないの」
「私の目的はただ一つ。あなた方のことを見たかったのでございます」
両手を広げて、くるりと芝居かかった動きでまわる。
彼が何をしたいのか、わかったものではなかったが、話を聞こうとは思えた。
「その目的の意味は?」
「ふむ、【小さき王】とその契約者がどういうふうに過ごしているか知りたくて」
「その、さっきからいってる呼び名、改めてもらおうか。俺の名前はリオンであって、その名は称号だ」
これは失礼、といってマスクは咳払いをした。
「私は失墜した王を見たかったのでございますよ。どのように泥を啜っているのかをね」
瞬間、リオンの纏う雰囲気が一変した。殺気が一斉にマスクへと向かう。
「てめぇ、俺の何を知っている?」
「全てを」
ひひっ、とマスクは笑いを漏らした。まるで可笑しくて堪らないといったように。
「全てでございますよ、陛下」
ごうっっっ、とリオンの影が鎌首をもたげ、マスクの首を飛ばした。だが、鮮血も吹き出ることなくマスクの体はノイズのように揺れただけで、何も起こってはいない。
「そうですとも、そうですとも。私の知っているあなたはそうですとも。
暴虐を身に纏い、殺意を飲み込む、悪魔を食らった王様よ!
貴方は逃げることが出来ないのです、この宿命から‼
そして、運命を司る私からも‼」
「黙れ」
リオンの影が何千と枝分かれをし、そのすべてが狙いを違わず、マスクに突き刺さる。
「ひひ、ひひ、ひひひ」
その全てが突き刺さり、黒い塊になったとしても、マスクは笑い続ける。
「契約者様よ、私は忠告いたします。
その者から離れなさい。どこまでも遠くへ。あなたが知りうる辺境の地まで。
我らの陛下は、貴方を壊します。その言葉はまやかしで、その手を取れば毒に侵される。
それは—————」
「わかったわ。よくわかった」
リベリアの凛とした声がマスクの声を断ち切る。
彼女の紫色の瞳が、リオンを映した。
肩で息をしているリオンは、リベリアの方へとは向かない。
「貴方はリオンの過去を知っているのかもしれない」
ダンスのときに明かしてくれたリオンの過去はまだ続きがありそうだった。
でも、全てを聞くのは躊躇えた。
「陛下だの、王様だの、運命だの。そんなお飾りを身に纏っているリオンなんて」
お飾り、という言葉にマスクは僅かに体を硬くする。
「私が知っているのはリオンであって、貴方の語る陛下じゃない」
その言葉にリオンは肩を震わせた。
「私が契約して、力をくれたのはリオンであって、あなたの知る陛下とは別人よ」
マスクは目を見開いた。そして、口の端をゆがめた。
「その結論は間違いですよ、契約者様」
「人生は間違いだらけよ、貴方にその何がわかって?運命さま」
くくっ、と笑うとマスクは影から自分の身体を引き抜いて、自分の身体にノイズを走らせる。そのノイズは服を直すだけだったのにも関わらず、徐々に揺れが大きくなってゆく。
「名を、なんと申すのですか?」
「リベリア。リベリア・クラウソリス」
「覚えておきましょう。リベリア様」
ザザッ、とノイズが大きくなって、マスクの姿が掻き消えた。
沈黙が漂った。リオンが息を吸う。
「りべ、りあ」
リオンがリベリアに声をかける。それにリベリアは笑う。
「リオン。私はあなたが何者かは知らない。何者か知る気もない」
そこで、区切ってリベリアは息を吐いた。その音にリオンが体が揺れる。
「でも、貴方が言ってくれるか待つわ。貴方が、その過去を明かしてくれるまでね」
リベリア達の話をベースにした物語を書いているところです。
一応基盤として組み込んだので、大分違うものにはなっていますが、もしよかったら近々投稿する予定なので見ていただけたら嬉しいです。




