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逸れ者

それは美しい美しい娘ではあった。

が、あまりにも異形異相である。


(これでは売り物には成らぬ……)


頭目は娘を一目見るなり断じざる得ない。

世の中には、斯様な異形を好むような物数寄が居るかもしれぬが

頭目には、そのような者に伝手はない。


そのような者は、この娘を人して扱うのではなく

珍稀の獣として慰み者にするだけの輩だ。


餓えて死ぬのが嫌で、こんな野盗にまで身を落とした。

だが、だからといって性根の底まで人から外れた覚えはない。


(…見逃してやろう。)


「さて、お主は人ではあるまい。

 そのような色の髪と眼を持つ人など見たことも聞いたこともない。」


娘は怯えるでもなく怒るわけでもなく

頭目の言葉を聞いている。


「人で無いものに用はない。とっととね。」


この頭目の言葉に動揺を見せたのは、手下どもの方であった。


こんな娘でも売れば幾ばくかの銭になる。

それで稗粥なり粟粥なりが食えるではないか。と


頭目は怒りで手下どもを怒鳴りつけたい衝動に駆られた。

が、確かに手下どもの言い分も理ではあるのだ。


野に住まう獣どもとて鳥のヒナを狙う。まだ幼い獣の子を狙う。

全ては、食うため。餓えぬため。生きていくための所業であろう。

ならば人がそれを為して何が悪いのだ。?


だが既に娘には「去ね」と伝えた。

ここで、やはり襲えとなれば頭の威厳が保てぬ。

娘を捕えろと叫ぶ手下の一人を張り倒す。


「他にも、わしに従えぬという者はおるか!?」


頭目は娘に「とっとと去ね!」と怒鳴りつけた。

娘は頭目に深く頭を垂れると、その場を立ち去る。


立ち去る娘の背に頭目は訊ねる。

「何故、旅をしておる?。」 


その声に娘は振り返り、垂衣たれぎぬを上げて

「ヒトを探しておりまする。」


「どのような人か?」


娘はかぶりを振り

「わかりませぬ。男か女か。赤子か老いたる者か。それすら。

 もう二百年もの間探し続けておりまする。」


手下どもは、この娘の言葉に怯える。

が、頭目は驚き呆れた声で、娘に答える。

「難儀なことよ。まさしくお主はヒトではなかったようだの。」


娘は、その言葉にニタリと不気味な笑みを浮かべる。

「はい、どうやらそのようにてございます」

「それよりも、皆様がたが命拾いを致したこと。誠に重畳でございました。」


頭目は、その笑みと言葉に背筋の凍る思いをする。

「誰ぞに我らの討伐でも頼まれたか。」


娘はコロコロと笑って背中を指差す。

「この背の神剣が餌を。血を欲しがっていたのでございます。それも悪党どもの。」

ぞっとした眼で彼らを。野盗の集団を娘は見つめる。


「そなた名を何と申す?。」


娘は日の落ち始めた山道を歩き始めながらふと振り返り。


「玉。……いえ、玉藻と申します。」


市女笠の垂衣から覗く真っ赤な唇から、娘は名を伝えた。

暴れなかった…(´・ω・`)

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