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一 閑話

 暗闇にまぎれて、私はいつも通りのことをした。

 いつも通りのこと。それは放浪してる人や自分で食べていけない人を連れて、地下室に行くこと。

「行きますよ」

 集まった人たちに号令をかけると、彼らは従順について来る。

 人目につかないよう周囲に妙な気配がないか確認して、人気ひとけのないところまで行く。そうするのは遠回りだけど、気まぐれに夜風に当たりに出た誰かに見つかりたくない。

 私は気が変わって逃げ出したいと思ってる人を見つけると、その場で追い返した。そして残った十二人をしばらく歩かせる。

 砂が広がるだけのところまで来ると、男が一人立ってるのを見つけた。

 男は木の簡素な杖を持ち、黒い服を全身にまとってる。もちろんマスクで顔を隠すのは忘れていない。

「待っていた」

 男は私たちを嬉しそうに迎え、地面を杖で突いて回った。

 そして砂と同じ色の布を探り当てると屈んで、一気に持ち上げる。何度も見た動作。

 もうもうと砂が舞って辺りがしばらく見えなくなる。その間にも妙な人がいないか周囲の気配を探る。十二人と男以外に誰の気配もない。

 布の下から現れたのは二つの鉄製の扉。それは地下室への入り口。

 次に男は連れて来た人たちを一人一人見て、優良品と良品に分けた。

 男が五人を左の扉に連れて行く間、私は残りの七人と地上で待つ。

「なぁ、なんで俺たちを選り分けるんだ?」

 誰かが口を開いた。

「……あなたたちを買い手ごとに分けています。体力がある方と見た目がいい方は左。そうじゃない方は右に入っていただきます」

 答えると聞いた人は不安そうな顔をした。

「左の方は高値で売られ、右の方はそれなりの値段で売られるのです」

 別の人が口を開きかけて、閉じた。

 結局私はその人が何を言おうとしたのか、分からずじまいになった。

 左から出てきた男は私に金を握らせ、残り物を右に連れて行く。

 今回も上手くいったけど、別に満足感も達成感もなかった。


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