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愛情の記憶  作者: ぐれこ
再会
13/60

戦闘前夜

サクマとキユウは、地下室の扉を開けた。部屋の電気をつけると、紫色の瞳と目が合う。

サクマはガラスの壁の前に座ると、深く息を吸い込んだ。


「折り入って頼みがある、アキノ。」


アキノはサクマを見ると不気味な程にニッコリと笑った。


「リカコちゃんに何かあった?顔真っ青だよ。」

「…どうしてお前がリカコを知っている。」

「俺とリカコちゃんが定期的に会ってること知らなかった?サクちゃん。」


リカコしか使わない愛称で呼ばれてサクマは顔をしかめた。ガラスに顔をくっつけるようにして身を乗り出しアキノを睨みつける。


「リカコに変なこと吹き込んでないだろうな。」

「大丈夫だよ。それで?リカコちゃんどうしたの?」


ガラス越しにサクマの鼻を突いてアキノが聞く。サクマは椅子に座り直すと暗い顔で口を開いた。


「レオナに誘拐された。」


レオナ、と聞いた途端アキノから笑顔が消えた。珍しく真顔になり、「へえ…」と呟く。


「それはまあ、随分な強者にやられたね…。…リカコちゃん誘拐したってことは向こうからの要求があったんでしょ?」

「…第三から第七地区を魔族に渡すこと。それと、魔族対策チームの解散。」


うかない顔でサクマは言った。

そんな要求を飲めるわけがなかった。多くの地区を一度に魔族に渡すことは出来ないし、チームの解散なんてもっと無理だ。だとしたら。


「リカコ助けに行きたいんだけど、手伝ってくれない?」


サクマが言う前にキユウがサクマの隣に座り言う。アキノは急に出てきたキユウに笑いかけると、頷いた。


「いいよ?チームが俺を外に出してもいいって考えるなら、喜んで手伝ってあげる。リカコちゃんとは仲良しだし。」

「決まりだな。」


キユウは満足そうに笑って頷いた。

だがサクマはまだアキノを睨みつけている。


「…外に出すって言っても一時的だからな。その後はまたここに戻すし、変なことしたらすぐ殺す。」

「警戒しすぎだろ、サクマ。そもそもアキノに手伝ってもらうって言い出したのお前じゃん。」


キユウが宥める前でアキノはガラスに顔を近づけて不気味な程に優しく微笑んだ。


「俺はサクちゃんの方が変なことしないか心配だよ?」

「…………。」


サクマは何も答えなかった。そのサクマの視線が僅かに泳いだのをキユウは見逃さなかった。


「…何それ、どういう意味?」

「…気にせんでいい。」


不思議がるキユウを放ってサクマは席を立った。


「明日、そっちの鍵を開けに行く。そしたらそのままレオナの所向かう。」

「了解、サクちゃん。また明日。」

「…サクちゃんって呼ぶな。行くぞ、キユウ。」


微笑んで手を振るアキノに背を向け、さっさと部屋を出て行く。キユウもすぐにその後を追いかけた。




暗い階段を上りながら、ずっと無言でいるサクマに「なあ」とキユウは話しかけた。


「お前何か俺とかリカコに隠してることある?」


キユウの珍しく真剣な顔を見てサクマは微笑むと、首を横に振った。


「あるわけないだろ。長い付き合いなのに。」


そう言いながらも、目を合わせようとしない。キユウは納得いかず、サクマの背中を強く叩いた。


「話したくないならいいけど、あまり溜め込むなよ。ただでさえサクマは仕事多くて大変なんだから。」

「仕事が多いのはお前がサボるせいだ。」


呆れたように言って階段を上りきると、サクマはキユウの方を振り向いた。


「じゃあ、明日な。キユウ。」

「おう。」


自分の部屋に戻るキユウの背中を見送って、サクマも自分の部屋に戻った。


部屋に入った瞬間、どっと疲れが降ってきたようにサクマはその場に座り込んだ。

目の前に落ちていたいつの物か分からない資料を拾い上げ、部屋を見回す。泥棒が入ったような荒れ具合に深く息をついた。

ここまで荒らしたのは他の誰でもない自分だということを、はっきりと分かっていた。


「……壊れてたまるかよ…。」


低く呟くとよろめきながら立ち上がり、ベッドまで自らの体を引きずるようにして歩く。

ようやく辿り着いたベッドに倒れ込むと、気を失うように眠りについた。


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