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10、11「後期クイーン的問題」

    10


「部屋までついて来てよ。怖いから」

 香奈美ちゃんから意外な申し出を受けた僕は彼女に同伴した。そのまま自室に戻るつもりなので桜野も連れて来ている。出雲さん、杭原さん、琴乃ちゃんも今日はそれぞれ早々に自室に引っ込むと云っていた。

「僕らのことは信用してくれてるの?」

 螺旋階段を上がりながら、野暮かも知れないと思いつつも香奈美ちゃんに問い掛ける。枷部さんの首はとりあえず能登さんの部屋に運ばれたが、それでも首が置かれていたエレベーターを使うのは香奈美ちゃんが嫌がった。

「あんたらに義治は殺せなかったって云ったじゃん。て云うか、探偵連中は難しく考えすぎよ。枷部誠一の首がああやって発見されたなら、もう香奈美達が知らない犯人が潜んでいる、で決定でしょ。首切りジャックだっけ?」

「そうなのかな……。桜野、お前は首切りジャックが塔内にいると思うか?」

「どうなんだろうね。でも気になる点はあるよ」

「教えてくれよ」

「霊堂くんの胴体がベッドの下に隠されてた点だよ。首切りジャックって、遺体の首は切断するけど、二つ一緒に並べておくって話だよね。首の切断が目的化した、フェティシズム的犯行だって」

「ああ、今回の枷部さんも、首だけだったよな」

 胴体はまだ探していないが、少なくとも首と一緒に置かれてはいなかった。

「桜野、それこそさっきの杭原さんの推理で説明されていたよな。無花果ちゃんがドレスの中に隠しておけるように枷部さんの首を切断しても、それが目的だと見破られないように、首だけ死体のイメージを植え付けておいたってやつ」

 なら杭原さんの推理は合っているのだろうか。無花果ちゃんの態度があまりに憮然としていたので、確信が失せてしまったけれど。

「うーん、まだ何とも」

「もう考えても仕方ないんじゃない? 殺されないようにだけしてれば、じきに助けが来てくれるでしょ」

 香奈美ちゃんの意見が一番まともだった。もっとも、そう感じるのは僕が彼女と同じ一般人寄りの感性なせいかも知れない。

 八階で香奈美ちゃんが部屋に這入るのを見届けた僕は五階に戻ろうとしたが、そこで桜野に「ねぇねぇ塚場くん」と服の裾を摘ままれた。

「何だ」

 桜野は天井を指差して、にんまりと微笑む。

「十階のお風呂広かったよね。せっかくだからさ、使っちゃおうよ」

「いいけど……えーっと、一緒に入るのか?」

 僕は困惑するが、桜野はそんな反応を楽しむかのような様子で頷いた。

「うん、いわゆる混浴だね」


    11


 山上の巨塔……その最上階の浴場ともなればさぞかし絶景が臨めそうだが、窓のない白生塔においてはむしろ地下を思わされる。

 それでもちょっとした公衆浴場さながらの広さを持つこの浴場は、二人で使うには贅沢と云えた。実際に造りも公衆浴場のようで、湯船は大きく、壁伝いに複数の洗い場が設けられている。此処だけはコンクリート剥き出しでなくタイル張りだ。四方の壁と床に、大きめの正方形が並んでいる。浴室は各客室に備わっているけれど、此処は宿泊施設における大浴場といった趣向で造られたものなのだろう。

 いま、湯船には湯が張られる最中で、僕と桜野は洗い場の端と端に座ってそれぞれ身体を洗っている。仕切りなんかはついていないので、僕は壁に設置された曇り気味の鏡しか見られない。

「塚場くん、」

 桜野の声がすぐ真横から聞こえてきて、僕は少し跳び上がってしまった。白いタオルを身体に巻いた桜野がすぐ傍まで来ていた。僕も腰にタオルを巻いているが、それでも緊張してしまう。

「背中、洗ってあげるよ」

 桜野は隣にあった椅子を僕の後ろに運んだ。

 断る理由もないので、僕は石鹸で泡立ったタオルを桜野に手渡す。

「こういうの幼馴染っぽいねぇ。私達って一緒にお風呂入ったことなかったけど」

「どこの幼馴染像だよ……。背中洗うなんて、恋人同士でもしないんじゃないか」

 桜野は博識だが、その知識のほとんどは読書体験から得ている。だから案外常識知らずで、知識にも偏りがあるのだった。

「ふふ。いいのいいの。なんか塚場くん照れてない?」

「特別照れてもなければ、特別照れてなくもない。普通の按配あんばいだ」

「変なの。友人同士なんだから、もっと自然体でいこうよ」

 桜野相手にドギマギしている自分が馬鹿みたいに思えてきた。

「流すよぉ」

 桜野は湯で満たされた桶を持ち上げると、いきなり僕の頭上で逆さにした。背中だけでいいのになぜか頭から湯を浴びせられて驚いた僕を、けらけらと笑う。

「交代だ」

「ええ、怖いなぁ。仕返しするつもりでしょ」

「僕はそんな子供っぽくないよ」

 皮肉らしい云い方になったが、桜野は子供っぽいのではなく不変なだけだ。幼いうちから自己の人間性を確立し、その感性が劣化していないだけ。

 桜野はタオルの結び目を解いて、背中を露わにした。引きこもり気味の彼女なので、その肌は白くて綺麗だ。腰回り等、そのラインが分かってしまうわけだが、かなり細い。不健康と形容するまでではないけれど、年齢に見合った肉付きではなかった。

 それでも泡立てたタオルで背中をこする際に何度か触れた肌は柔らかくて、桜野も女の子なんだな、なんて有り触れた感想が浮かんだ。肌に触れている、と意識するとまたも僕の鼓動は少し早くなった。

 桜野とは幼馴染で、何か恋愛感情のようなものは一切ない。むしろそういった俗っぽい関係を僕と彼女との間に持ち出して欲しくないくらいだ。若くして日本屈指の探偵である桜野と、その語り手あらんとする僕……この関係を簡単な言葉でまとめたくない。

 ふと、自覚した。僕にとって桜野は、あえて過剰な表現をすれば、信仰対象なのだ。幼馴染の彼女が離れてしまうのを恐れて小説家となった僕。彼女を主役に据え、その活躍を綴ってきた。僕が桜野に抱く気持ちは、もはや信仰心と云っていい。恋慕や羨望を超えたものなのだ。

「塚場くん、どうしたの?」

「いや、別に何でもないよ」

 少しぼうっとしてしまっていた。誤魔化すように、僕は桶を取ると桜野の背中に湯を浴びせた。その後で、僕も頭にかけてやれば良かったと思った。

 桜野はまたタオルを背中まで回して結びながら「お湯に浸かろうよ」と云った。

「ああ」

 僕は頷く。僕らの関係はこうなのだ。普段は幼馴染なんて簡単に云うけれど、やはり主役と語り手、探偵と助手……それだって少しばかり事情は異なるのだが、属するところはそこだ。

 桜野が何かを云って、僕は頷き、ついていくという関係。桜野が事件を解決する姿を傍から見ているのが、僕は好きなのだ。彼女のような天才の見る景色を、少しでも共有できれば、それ以上の幸福はない。これからもずっと、僕らがこうしていること。それが僕の願い。

「桜野、この事件、きっとお前が解決してくれ」

 僕は湯に浸かり、桜野にそう云った。これだけ広い湯船なのに、僕らはすぐ近くに、隣同士で座っている。

「此処には他の探偵もいるし、事件が早く解決するならそれが何よりだけど、僕はやっぱり、お前に解決して欲しいんだ」

 これはエゴが過ぎるかも知れない。しかし、僕はこうも思う――この事件を解決できるのは、桜野しかいない。他の探偵達が提示する謎解きに僕なんかは一喜一憂していたけれど、どれも真相ではなかった。まだ完全には否定されていないものも、一部においては正しいだろうものもあるけれど、胸が空く思いを得るにはほど遠い。

 今回もきっと、桜野がすべてを暴いてくれる。どんなに複雑で不可解な謎でも、明白な答えに変えてくれる。靄は完全に取り払われる。

「うーん。約束はできないかなぁ。解けない謎なんてないんだからいずれは解決するけど、他の探偵がいる以上、速度の問題はあるからね。私は遅い探偵だからさ」

 それは堅実という意味でもある。ただしそれで桜野が現実主義者というイメージを持つのは誤りだ。彼女の推理はロジカルで理路整然としているけれど、驚異的な発想の転換が目白押しとなるのが常だ。そんな特徴も『桜野美海子シリーズ』のヒットに関係している。

 ただ、僕はここで桜野にある疑問……いや、指摘をぶつけた。

「桜野、今回はやけにやる気に欠けてないか? こんなにお前好みのシチュエーションもないのに」

 獅子谷氏の消失くらいから、度々そう感じていたのだ。事件の最中でも読書をしていたり、言動が普段と変わらずのんびりしていたりするのは珍しくないが、彼女をずっと見てきた僕だから、それが分かってしまうのだ。

「そうだね。たしかにあまり乗れてないよ」

 桜野は肯定した。責めるつもりはない。代わりに僕は「どうして?」と訊いた。

「事件そのものは私好みだよ。この犯人も極めて狡猾こうかつで申し分ないよ。だから私が失望の念を抱いてるのは探偵の人達になの。こういう状況だから、さらに際立っちゃってるね」

「どういうことだ」

「名探偵というものの不完全さを思い知らされて、嫌な気分なんだよ。読書にも集中できなくなっちゃってさ」

 桜野が語り始める気配を察して、僕はしばらく口をつぐんでいると決めた。

「探偵の推理、と云うけどね、実際はそんなの嘘なんだよ。正しくは推測、もっと悪い云い方をすれば妄想だよ。本格ミステリの名探偵達だってロジックを重んじると云いながらも、真に論理的思考とは呼べないんだ。

 そもそも名探偵というのは装置なんだよ。推理小説を成り立たせるためのブラックボックスを記号化した存在なんだ。

 名探偵の役割は謎を解くこと。機能的には、そのプロセスに超常的なところがあるのを隠すことだ。

 名探偵は謎を解明する。謎に対して用意された解答を導き出す。どうしてそんなことができるかと云えば、名探偵だからだよ。名探偵が述べるから、その解答が間違いないと読者は分かって、解決するんだ。でも実際の真相なんて分かりやしないんだよ。どんな謎にも、解釈はいくらでも付けられるものなんだ。

 この白生塔で、塚場くんも思い知ったでしょ。奇想天外な推理の数々は、いちおうは現象を説明できてる。現実的でない、物理的に有り得ない、とされても、解釈としては間違ってない。これが推理小説だったら〈名探偵がそう推理した以上そうなんだ〉ってことになる。とてもそうは思えない? ふふ。私達は普段同じことをしてるのに?

 シャーロック・ホームズ。うん、私も大好きなホームズ先生だけど、残念ながら彼の推理は穴だらけだよ。別の解釈だって充分に可能だ。見落とされてる可能性がたくさんある。たとえば『フランシス・カーファクス姫の失踪』でホームズはワトスンの左の袖に泥が付着していたことから、彼が馬車の左側の座席に座っていたと推理し、ならば誰か知人と共に馬車に乗ってたんだって推理する。単にひとりで馬車に乗って、左端の窓にもたれていただけかも知れないのにね。アラン・アレクサンダー・ミルンが『ワトスン先生大いに語る』の中で揶揄したとおりだ。

 ホームズの推理は多くの場合、帰納でも演繹でもなく〈当てずっぽう〉――シービオクはそう指摘した。作品内ではそれで解決となるから覆されることがないってだけで、本質的には白生塔でこれまで披露されてきた推理となんら変わらない。それでも大半の読者は、ホームズが〈そう〉と云えば〈そう〉と納得してしまう。

 どうして私達は間違いだらけの推理を受け入れてしまうんだろうね? 実はこれが巧妙なところなんだけど……ホームズが常人離れしてるのは推論能力じゃなくて観察能力だっていうのが効いてるんだ。他にも彼ならではの経験則だとか、明示されてない理由だとかがあるのかも知れない。一般人が見落とすことを見て取る観察力や豊富な知識という暗黙の前提……それがホームズの推理の穴を読者に気付かせない煙幕になってるんだよ。

 そもそも先駆者エドガー・アラン・ポーの書いた名探偵デュパンがハッタリ推理だった。この時点でやっぱり、心理的な洞察力を強調することで、〈推理小説におけるリアリティ〉ってやつまで構築していた。後続が同じくそうなってしまうのもしかりさ。ヴァン・ダインが『カナリア殺人事件』で云ったところの心理学的推理も、対人観察力や洞察力を推理に取り込むことが要になってる。どれも学問としての論理学とはまったく非なるものだ。こうして推理小説内における特殊な〈ロジック〉という言葉、読者にも共有されるそのコンテクストが出来上がっていった。

 それでも作家達は、ただ甘んじていたばかりじゃないよ。塚場くんも知ってのとおり、探偵小説におけるロジックを厳格にするため、試行錯誤を繰り返した。

 エラリィ・クイーンはまずワトスン役を排除したね。ワトスン役というのはつまり、探偵の共犯者――探偵のハッタリ推理や当てずっぽうを論理的に正しい推理であるかのように装わせるための装置だからだ。探偵が如何に優秀な人物であるかを大袈裟に表現し、その一挙手一投足にいちいち驚いては賞賛を送り、その推理が素晴らしく冴えていて唯一絶対の解答であるんだってことをあの手この手で演出して、落ち度になるような事柄は絶対に書かない。まさに推理小説における欺瞞ぎまんを一手に引き受ける存在、作者の分身だ。これを排除した。なるほど、効果的に見えるね。

 さらに国名シリーズでは〈読者への挑戦状〉を挿入した。作者の立場、すなわちメタ的位置から、作品内のフェアプレー性を保証しようとしたんだ。〈私は欺瞞をやりませんよ〉という宣言とも云える。これもなるほど、効果的に見えるね。

 でも、そんなクイーンこそが、自らの後期作品においてミステリの抱える最大の欠陥を浮き彫りにしてしまったんだから皮肉な話だ……うん、かの有名な〈後期クイーン的問題〉だよ。探偵対犯人の理想的な謎解き空間を逸脱させる大問題だね。

 これはつまるところ、〈探偵の手の内を読む犯人〉が現れたっていうのが大きな面だ。ある証拠が、ある容疑者の犯行を示すものであると思えても、それは別の容疑者がその人物に不利になるように置いた偽の証拠かも知れない。探偵がそこまで考えられたとしてもさらに、その犯人がわざと探偵の手の内を読むか、わざと自分に不利な証拠を置くことで自分を容疑から外そうと画策したのかも知れない。裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の……と、こういった具合に、無限に憶測は堂々巡り、あるいは際限なく進んで行ってしまう。ある証拠が、特定の容疑者の犯行を示すのか示さないのか、一義的に決定できなくなってしまう。蓋然性がいぜんせいの高さは絶対の指標とはならない。体系内において証明は不能だ。

 先ほど述べた試みにしたってね、結局は解決策にならなかったんだ。ワトスン役を排除したところで、探偵の活躍を綴る作者は語り手に違いないでしょ。作者の分身たるワトスン役は消せても、作者は消せない。また同じく、探偵がいなくても謎を解決する人間――探偵役は確実にいなければならない。探偵が殺されてしまう小説というのも数あるけど、それだって最終的に謎を解く人間はいて、構造的にはそれが探偵なんだ。推理小説である限り、語り手と探偵は消去できない。

 それから〈読者への挑戦状〉だけど、これはメタ的立場から、作品内で示された論理的に推理可能とされている解答が作品内では正しいのだと保証する……とも実は云い切れない。さらにメタレベルを上げれば〈読者への挑戦状〉だって偽りかも知れないからだよ。作者は語り手であるしかない。作者がいくら否定しようとも、真相が別にあるかも知れないという問題は付きまとう。

 主人公が犯人で、その犯行を探偵が正しく当てるというタイプの小説も創作された。いわゆる倒叙ミステリだ。でもこれも語り手は作者である以上、作中の真相はフェイクかも知れない。主人公が嘘を云ってるかも知れない。叙述トリックを筆頭とした〈信頼できない語り手〉問題と繋がってくるね。

 論理を重んじるがゆえに生まれてしまう〈無限に続く推理〉〈際限のない謎解き〉。そのある時点での推理が正しいと断定するための探偵は間違ってるかも知れないし、語り手だってその問題にいくら煙幕をかけようとも、完全に誤魔化すことはできない。物理的に不可能、と誰もが思っても、それは〈探偵の手の内を読む犯人〉なる者によって思い込まされてるだけかも知れない。フェアプレーが完全に理想的なかたちで叶うことは永遠にない。

 これが推理小説の、名探偵の限界だよ。

 私達は永久に不完全で、真相を掴むことはできないんだ」

 珍しく物憂げな表情の桜野は長い語りを終えると、目の下まで湯にもぐってぶくぶくと口から泡を吐いた。

「……大体は分かったけど、それは小説内の話だろ? 僕らがいるのは現実の事件なんだから……まぁ桜野にとってはそれどころじゃなくなるくらい大問題なのか」

 桜野はこくりと頷いた。

「それに塚場くん、小説内の話じゃなくて、現実にも当て嵌る話だよ。云ったじゃん、この状況が名探偵というものの不完全さを体現してるって」

 桜野は僕の肩に頭を乗せた。赤らんだ顔は、妙に色っぽい。のぼせているのかも知れない。

「いままで読んできたどの小説でも、いままで実際に解決してきたどの事件でも、私はそんな悩みを抱えていたんだよぉ」

「推理が間違っていた可能性か? まさか。証拠もあがって、警察が犯人を捕まえて、犯人も最後には……まぁ全員じゃなかったけど、認めたじゃないか」

 云いながら、桜野がいつも推理の披露を出し惜しみするのも、そんな事情が噛んでいたのだと気付いた。

「本当にそうかな。繰り返しになるからもう詳しくは話さないけど、全部〈そういうことにされている〉だけに過ぎないよ。私は真相を掴みたいよ。真相とされていることじゃなくて、まぎれもない真相をね」

 それが本心からの言葉で、彼女にとっては何よりも深刻な苦悩なのだと、僕は感じ取っていた。だからおためごかしな返事なんてとてもできなかった。

 僕が返答にきゅうしていると察したらしい桜野は、僕の頬を掴み、口が尖るのを見て笑った。

「大丈夫大丈夫。これからはちゃんと、この事件に取り組むよ。謎とたわむれるのが大好きなのは本当だし、うじうじしてるうちに、せっかくの事件を楽しめずにいるのは勿体ないもんね。それに被害者は最小限に抑えたい。今回は私や塚場くんも危ないんだからね」

 僕は「ああ、よろしく頼むよ」と云ったけれど、口を手で挟まれた状態なので上手く言葉にはならなかった。

「何だか頭がボーッとしてきちゃった。いけないな。そろそろ上がろうか、塚場くん」

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