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第六話•学園の秘密2

 「これから教員会議をする事になりました。皆さん1時間ほど自習していて下さい。もしかしたら私は帰ってこれなくなるかも知れませんが……。」


 帰ってこれなくなる? どういう事だ?


 「教員会議って言うより、私についての会議なんです。このAクラスは少し他のクラスより特別らしいんですが、先ほど生徒2人を私の不手際で死なせてしまいましたから。」


 Aクラスが特別なクラス?

理由は分からないけれど、仮にそうだったとしたら何でヒカリを担任にしたんだ?

 


 「……すみませんでした。」


 1人で喋り続けるヒカリの身体はプルプルと震えている。


 「先生、大丈夫ですか?」


 心配そうな顔をしているめいや。


 めいやは優しいな……。

他のクラスメイト達は不信感を表しながらただ黙っているのに。


 「ありがとう。……実は私皆さんとあまり年齢が変わらないの。教員学校も行っていないような私が先生に選ばれた事自体分からないんです。拒否権は無いし。他の先生より学園についても詳しい事教えてもらえませんし。もう……いやだ……」


 ヒカリが教卓の前で泣き崩れる。


 初めてヒカリに会った時の違和感ってこれだったのか。

確かに先生として至らない所が多すぎるし若すぎる。

春の担任の方が聞く限り色々な事知っている様だったし。


 学園側……というより国は、なんでヒカリみたいなのを教員に選んだのだろう。



 「……死にたくないよ……。」


 更に子供のように泣きじゃくるヒカリ。


 !? 今の聞き間違いか?

死にたくないって言ったよな?


 「死にたくないってどういうーー」


 ペタペタと背後から明らかに学生では無い、サンダルが床に張り付くような足音が聞こえてくる。


 「ヒカリ先生……。生徒達が不安がっていますよ。さあ早く行きましょう。」


 泣き崩れているヒカリの腕を乱暴に掴み上げる、白衣を着た白髪頭の男。

 腕を掴む手に、かなり力を加えているのか、ヒカリが小さく悲鳴を上げている。



 「ちょっと待ってくれ!! ヒカリ先生どうするんだ?教えてほしい。」


 「こらこら感心しませんね。追求なんて、力や知性が無い者がするものではありませんよ。」


 男が俺を見てニコリと微笑んでいるがその表情は、善意のある笑顔では無いようだ。

悪意のある不気味な微笑み。

 本能的に危険を感じる。


 「ヒカリ先生は、ここに戻ってくるんだよな……?」


 「もう処分は決まっていますがね。ただ……どうしてもとあなた達が言うのなら考えてもいいですね。」


 処分ってただクビになるだけだよな?

 でも、ヒカリがさっき言ってた事だとしたら……。

引っかかるが、俺だけの気持ちでどうにも……



 「私達がヒカリ先生が良いと言ったらなんなんです?」


 「瑠衣? お前も……」


 「勘違いしないで、別に先生を庇ってるつもりない。ただ、このまま行かせるなんて虫が悪いじゃない。」


 瑠衣が俺だけに聞こえるように小声で耳打ちをしてくる。


 「そうですか……。ヒカリ先生が良いのですか。

面白いですね、良いでしょう。

では、次の学年別対抗戦で優勝して下さい。優勝すれば担任として相応しいと認めましょう。それまで処分を延期します。良かったですね、ヒカリ先生。良い生徒に恵まれて。」


 白衣の男がヒカリの腕を離して去ろうとするが、俺の横でピタリと足を止める。


 「君……色々な事を詮索するのは、死に急ぐような事。それが学園では無く国の事でも。お友達を守りたいなら君が賢くならないとダメですよ。手遅れになる前にね……ふふふ。」


 耳元で囁いて教室から消えていく男、俺の喉がゴクリと音をたてる。

 何の事を言ってるんだ?

直感だが、ヒカリの事じゃない違う事を言ってる気がする……。

 いったいあいつは何者なんだ。





 「早く立ち上がって、私達に戦い方を説明して下さい。先生。」


 「みんな……私の為にありがとう……」


 「体育祭みたいなもんだろ?」

 「さっきのは事故は先生だけのせいじゃないよ。」

 「頑張ろうぜ!」


 ずっと無言のままだったクラスの奴らが、手のひらを返したような態度で喋り出す。


 「……。ありがとう。うん、頑張ろう!」


 さっきまで誰1人、ヒカリが連れて行かれそうになっても何も言わなかったくせに。

 結局こうなってしまえば悪者には見られたくないって訳かよ。偽善者が。


 ……まあ、俺も他人から見れば偽善者なのかもしれないけどな。




 「よし、じゃあパートナー同士でPSを物体化する事から始めましょう。先ほどのプリントの2枚目に書いてあります。」


 「空が読めなかった英語の所ね。ぷっ」


 笑った。瑠衣がようやく笑ってくれた。

そこまで元気があるようには見えないけれど、少しでも笑顔が戻ってくれて良かったよ。




 こうしてようやく授業が始まろうとしていた。


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