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第五話•学園の秘密1


 「カテゴリー分けクラス?」


 今俺と瑠衣は、校舎外にある電子掲示板の前にいる。


 「私達は、Aみたいね。」


 「ABCだけか。1クラス200人くらいなんだな。」


 「見て! 私達代表ペアーってかなってる。」


 「なんじゃそりゃ。」


 それぞれ1組クラスずつ代表ペアーってのが書かれている。

 学級員みたいな感じか?

 でも、なんで俺らが代表ペアーなんだ?


 「おはよう! 瑠衣姉ちゃん! それと空も。」


 人だかりの中、数日ぶりに見る春の姿があった。


 「「おはよう」」


 俺と瑠衣の声が被り、春があか嫌な顔をする。


 春の後ろにコソコソ隠れている女の子の姿が見え、気にする俺の視線を感じた春が女の子を前に引っ張り出す。


 「麻衣美も挨拶したらどうだい?」


 俺たちの目の前に引っ張り出された女の子は、金色に光る髪を緩くクルクルに巻きカチューシャをしている、青く透き通る目をした子だった。


 「お、お、おはようございます……。」


 かなりシャイなのか、俺達に目を合わさずオドオドしながら挨拶をする。


 「僕のパートナーだよ。一見大人しそうに見えるけど、かなり積極的な子なんだ。」


 1ミリたりと積極的には見えないんだが……。

 ずっとモジモジしてるぞ。

 しかも、日本人じゃないよな?


 「か、可愛い〜! 私は春の姉の瑠衣だよ! よろしくね。」


 瑠衣が握手を求め麻衣美の前に手を伸ばすが、春の後ろへサッと逃げるように隠れる。


 「あれれ? 私怖がらせたかな?」


 「僕には積極的なんだけどね。どうやら麻衣美の兄に僕が似てるようでさ。」


 「容姿ではないのですの……。オーラが似ているのです。」


 春の後ろでボソリと麻衣美が呟き春の背中に顔を埋める。


 瑠衣は拒否された事に軽くショックを受け、下唇を少し出し膨れっ面をしていた。


 「僕達は、教室に行くよ! また放課後にでも。」


 「お、おう。」


 春が校舎に入っていき、瑠衣を見るとまだ膨れっ面していた。


 「まだショック受けてんのか?」


 「だって……。可愛い女の子に嫌われちゃった。」


 「別に嫌われては無いだろう。つか、早く俺達も教室行かないとマズイぞ?」


 「うん……。」



ーー最初の教室は、本当に仮クラスだったようで、新しい教室は大学の大講義室のように広い場所だった。


 席に座り瑠衣と話していると、教室の扉からヒカリが勢いよく入ってきて教卓の前に立つ。


 まさか……。

 嫌な予感が。



 「おはようございますー! これから5年間皆さんの担任になる間宮ヒカリです! ビシビシいくからよろしくね。」


 やっぱりか……。


 「あれ? 巣鴨さんと穂白さんだね? あはは……。よろしくね?」


 「よろしくしたくありません。」


 ヒカリが俺達の姿を見つけ気まずそうに話しかけてきたが、即答で瑠衣はヒカリの申し入れを拒否する。


 教室にシーンとした気まずい空気が漂う。

 その空気を消し去ってくれたのは、俺達も知っているあの男の声だった。


 「おうおう、お前さん達も同じクラスか!」


 「おっ、裕次郎! 同じクラスだったんだな。」


 裕次郎の隣にはニコニコしながらこっちを見る、めいやの姿もあった。


 嬉しい再開で、ほのぼのとした空気になった時再びヒカリが話し出す。


 「お友達ですか? よかったですね!

では、早速ですが来月の学年対決に向けて、来週クラス対決があります! 絶対に勝たないといけないので今日から特訓ですよ。」


 対決? なに対決すんだよ。

 やっぱりこの教師頭いかれてるんじゃないか?


 前の教訓なのか、今度は説明する前にプリントを配る。


 「『assimilation』? あし、み、らちおん?」


 「馬鹿! アシミレーションでしょうが!」


 そう読むのか……。

 さっぱり英語わからん。


 「皆さんの持っているPSは、実はパートナーとの融合で違う物に実体化します!

今日本の自衛隊や警察は、国民に対して手を出す事は出来なくなっています!

超少子高齢化の為、国家に愚問を抱く人達によるクーデターが起きていて、それを対処するのが国民である君たちの役目なんです。」


 自衛隊?

 警察?

 クーデター?

 対処?

 わけわかんねえーよ。


 「先生、意味が分かりません!」

 「この学校って子供達を守るために作られたんじゃないんですか?」

 「国家の軍事学校って事か?」



 「みんな一気に喋ったらわからないよ。渡されたプリントちゃんと読んでくださいー!」


 「ねえ……。空これってどうゆう意味だと思う?」


 プリントに書かれた1つの文章を瑠衣が指差す。


 「学園以外の者との接触及び学園の機密事項を漏らす事は硬く禁じる。規則破りしものには罰則が与えられる。(パートナー連帯責任)?」


 学園以外のって……家族もか!?


 「空その下も読んで!」


 「国家機密Level3クーデターにより、人外的ウイルスが蔓延してる恐れあり。」


 ウイルス?

 ゲームや映画じゃねえーんだぞ……。

 何かの冗談だろ。


 「はい、はい!

なので、家族には会うことも連絡を取ることも禁止です。

先生も知らなかったからびっくりしたんだけどね……そして、外に暮らす家族を守る為にもみんなにしっかり強くなって貰わないとダメなんです。もちろん直ぐには危険な場所に生徒を出す事はしません。

先ずは、安全に学園で暮らしながらゆっくり学びましょう!」


 「わあーああああぁ。」


 1人の男子生徒が混乱のあまり恐怖の雄叫びをあげ、教室から逃げようと席を立つ。


 「あっ、ダメ……!」


 ヒカリが叫び止めたが、教室からでて行ってしまった。


 「ぐっ、、あっ……。」


 男子生徒が教室から出て行った数分後パートナーだった女子が苦しみ始める。


 「大丈夫ですか……?」


 近くに居ためいやが苦しむ女子の元に駆け寄り肩に手を置いた瞬間、椅子から女子の身体が崩れ落ちる。



 「っ……つ、きゃああ。」


 「めいやっ!!」


 悲鳴を上げるめいやを裕次郎が抱き寄せ、俺と瑠衣も2人の元に駆け寄る。


 「きゃっ!」


 「まさか……。死んでるのか?」


 女子の口の中からダラリと血が流れだす。

 口元に耳を近付けたが、息はすでにしていなかった。


 「まさか本当に……。」


 ヒカリが目に涙を浮かべながら口元を両手で押さえている。


 おい。

 嘘だよな?

 嘘だって誰か言ってくれ……。


 裕次郎が泣いているめいやを瑠衣に預けて、教卓の前に立つヒカリの場所へ行く。


 「本当にってなんだよ!? 今すぐ説明しやがれ!」


 教卓の机を、固く握った拳で殴りつけ、ヒカリに怒りをぶつける。

 ヒカリは、ビクリと身体を震わせたが沈黙を守ったままで喋ろうとしない。


 「あの、先生が話してくれないと俺達みんなわからないと思う……。」


 俺の声も不安で震える。


 「本当だと思わなかったの。

同期してパートナーになると、片方が死んだ場合もう片方も死ぬって。死ぬなんてまさか本当に……。」


 死ぬ?


 泣きすする者、恐怖で頭を抱えて机に丸くなるクラスの生徒達。

 そこで教室でアナウンスが流れる。


 『先ほど、11階にあるAクラスの男子生徒が窓から転落する事故がありました。

只今から学園の者が処理に当たるので、生徒の皆さんは外のエントランスに次のアナウンスがあるまで近寄らないようにお願いします。』


 「おいっ、さっきの出てった奴の事か?」


 裕次郎が片手で頭を押さえながら、教卓前でフラフラしている。


 「一旦席について、先生の話を聞いてください。分かる事は全て話します……。」


 泣きながらめいやが裕次郎を席まで連れていき、俺と瑠衣も席まで戻った。

 そして、ヒカリが重い口を開き、PSについて話し出す。


 「本来PSは、ウイルスからあなた達若い子達を守る為に作られたハズです……。

まだ若い。

あなた達の学年までしかDNAが対応しなかった為に、あなた達より上の生徒は居ません。

1人のDNAだけでは作用しないので、男女2人を合わせる事でウイルスに対して対抗が出来ます。

若い世代を守り、そしてウイルスに対抗できる身体のあなた達にクーデターと戦ってもらう。

その為の学園です。

問題点が、パートナーが死亡した場合の事。

まさか本当だとは。

ごめんなさい。」


 「それって……。私達は安全で外に居る家族は危険って事になりますよね。」


 「外に居る方と言うより、この学園生徒以外は全員感染の危険があります。」


 「行かなきゃ……。私外に行かなきゃ!」


 瑠衣が席から立ち教室から出て行こうとするが、ヒカリが瑠衣の腕を掴み引きとめる。


 「無理なんです。あなたが出て行けばパートナーの穂白君も死ぬ事になるんですよ。

今あなた達に出来る事は、訓練して強くなりウイルスをばらまくクーデターを排除する事。

幸いまだあまりウイルスは蔓延していません。」


 「そんな……。この学園に居ることが家族を守る唯一の手段って事なの?」


 「そうなります。国民にウイルスが蔓延している事が知られればパニックが起こる。だから家族に話すことも規則違反なんです。」


 「……。」


 正直言うと俺にとって家族なんてどうでもいい。

 でも、瑠衣は違うんだな。


 無言のまま静かに席に座った瑠衣から、ギリギリと歯ぎしりする音が聞こえる。

 こんな状況になり、クラスでパニックが起こってもおかしくないのに誰一人として喋る者はいない。

 怖いくらいに教室が静まり返っていた。


 「空おねーー」


 瑠衣が何か喋り出そうとしたタイミングで、休み時間のチャイムが鳴る。


 「一旦休憩しましょう。休み時間が終わったら次の話に進みます。」


 教室から足早にヒカリが出て行く。


 「さっき呼んだよな? 何を言おうとしたんだ?」


 「何でもない。」


 「瑠衣大丈夫か?」


 瑠衣の顔色が真っ青になっていた。


 なんで俺はこんなにも冷静なんだろう……。

 普通の人間なら家族や大切な人を心配して、瑠衣みたいになるんだろうな。

 いつの間にか、そうゆう感情が無くなってしまったのかもしれない。


 また黙りこんでしまった瑠衣に何をしてあげればいいのか悩んでいると、春から俺に電話がくる。


 「もしもし。」


 「ふう。良かった、生きていて。 放送で空達のクラスの男子生徒って言ってたから、まさか空が……って思ったよ。」


 「俺は死んでねえよ。そんな度胸無いしな。でも瑠衣が……。」


 「空達もウイルスについて聞いたんだね? 僕達も聞いたよ。瑠衣姉ちゃん家に帰ろうとしたんだよね?」


 「なんで分かったんだ? 瑠衣は家族の元へ行こうとしたんだよな?」


 「うん。家族というか、僕達と血の繋がっていない妹の元へ行こうとしたんだと思う。」


 「どうゆう事だ?」


 「あっ! 授業が始まるから切るよ。瑠衣姉ちゃんの事よろしく。」


 チャイムが鳴ると、俯き背中を丸めたヒカリが教室に戻ってきた。


 血の繋がらない妹?なんか複雑な事情があるのか……。

 

 瑠衣は下唇を噛み締めながら、戻ってきたヒカリの元へ顔を向ける。


 教卓前まで重い足取りで来たヒカリが、大きくゆっくりと深呼吸をしてから俯いていた顔を上げて、話を始めようとする。



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