1 ブラックジャック
なろう初投稿です。
『この話おもろないんじゃ、ボケ』とか、
『テメェ、なろうの機能使いこなせてねぇよ』とか、
小さな事でも感想がいただけたら幸いです。
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「カツベ! カツベくんって人はいるかしら!?」
平穏だった一年二組に、けたたましい女子の声が響く。
どうやら俺をご指名らしいが、ここは様子を見よう。下手に出て行って難癖をつけられては困る。
時刻は昼過ぎ。弁当も食い終わって、昼休みの時間帯だ。
現れた女子は俺の知り合いではない。当然、向こうも俺の顔を知らないのだろう、俺と目が合っても特に気にしたようには見えなかった。
「ねぇ、勝吾。呼ばれてるけど?」
「うるさい、今は黙ってろ」
我が級友かつ昼飯を共にする程度の仲である、喜野ハルがヒソヒソと声をかけてくる。しかし、そんな些細な事からあの正体不明の女子に俺が『勝部勝吾』だとバレるのは、少なくとも今は好ましくない。もう少し状況が明らかになってからでも遅くはあるまい。
まずは相手の出方を見て、どういう状況かを把握してから。そう、俺は慎重な男だ。決してビビリではない。
「このクラスにいるのはわかってるのよ! 出てきなさい!」
女子は教壇に立ち、教室内にいた生徒をジロリとねめまわす。
視線に圧力はない。むしろかわいらしい顔立ちで睨まれても、ちょっと心がほっこりする程度だ。
その童顔さから同学年だろうか、と思って見たが、ブレザーについている校章の色が緑だ。アレは二年生だな。
童顔かつ低身長な先輩女子はプーっと頬を膨らせる。どうやら何の反応も返さない俺たちに苛立ちを募らせたのだろう。……が、全く怖くない。むしろ和む。
「私から逃げおおせようとしているのね。そして貴方たちは隠し立てしようと言うのね! よろしい、貴方たちは入学したてだからわからないかもしれないけど、我らがショーブの恐ろしさ、とくとご覧に入れましょう」
ショーブ? なんだ、勝負の事か? でもそれだと文脈が若干通らないな?
恐らく、クラス全体が俺と同じ疑問を持ったのだろう。首を傾げて、頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。
先輩女子は懐から木札を取り出す。そこには『尋常勝負』と書かれてあった。墨と筆によって書かれたその文字はどことなく時代がかっているように見える。木札が薄汚れているのも、経過した時間を髣髴とさせているのだろう。
「私は現ショーブ部長、菖蒲ミキである! この名に覚えのある者は名乗り出なさい!」
一瞬、クラスの一部がざわつく。
まさかショーブ部長の菖蒲先輩とはかなり有名なのだろうか? 知らない俺の方がイレギュラー? と思って喜野の方を見てみたが、コイツも首を傾げている。
グルリと首を回してみると、どうやらざわついているのは部活に入っている連中らしい。俺も喜野も帰宅部だ。部活に所属している連中のみで有名なら俺たちが知らないのも頷ける。……だが、そんな局地的有名人である菖蒲先輩が俺をご指名なのはどういうことだ?
さっきも確認したとおり、俺と菖蒲先輩には面識がない。どこにも接点がない相手に、どうやってご指名されるのだ。その法則がわかれば、俺だってホストクラブの一つや二つ、経営出来ても良さそうなものだ。
「部活動に所属している賢明な諸君はご存知でしょう、私たちショーブの事を!」
菖蒲先輩が高らかに宣言する。
「ルールに則り、今から私は勝負を行います。それに勝てば諸君らの所属する部活に相応の見返りがあるでしょう! 私が望むのは唯一つ、カツベという生徒の身柄よ」
え? なに? 勝手に俺をアンティにした勝負が行われるの? 聞いてないけど?
本人の了承も得ずに人身を賭した勝負なんて、聞き捨てなりませんね!
俺が抗議の声を上げようとしたその時、背後に気配を感じる。
そこにいたのはラグビー部員の北島くんと佐藤くん。入部したてのクセに屈強な肉体を持った完全なる武闘派だ。その二人に羽交い絞めにされ、口を押さえられる。
「カツベ、ちょっと黙っていてもらおうか!」
「これは我がラグビー部にとって千載一遇のチャンスなのだ」
「き、君たち、何を!」
傍らにいた喜野が声を上げる。助けてくれるのか! やはり持つべきものは友! 正直この状況、腕は痛いし苦しいし、何より男に抱き付かれても嬉しくとも何ともない!
「勝吾を縛り上げるなら、もっときつめにお願いします。あ、腕ぐらいなら極めても大丈夫だから」
いや、こいつは外道だった。知ってた。
そんな騒動知ってか知らずか、菖蒲先輩の下に二人の男子生徒が立ちはだかっていた。
アレはラグビー部の近藤くんと三谷くん。これで我がクラスのラグビー部は全員出揃った事になる。
「菖蒲先輩とやら! その勝負、我らが受けて立ちましょう!」
「ほぅ、君の名前はなんと言う?」
菖蒲先輩は流し目に見やり、名を質す。
「俺の名前は近藤博! ラグビー部所属一年! ショーブ部長、菖蒲先輩に勝負を申し込む!」
「よろしい、受けて立ちましょう」
ニヤリ、と菖蒲先輩が笑ったようだった。
「では、今の会話の流れ上、そちらが勝負を申し込んだので、勝負方法は私が決めさせてもらうわね」
そう言って先輩はポケットからトランプを持ち出した。
プラスチックのケースに入れられたそのトランプは、裏面に独特の絵柄が描かれてある。具体的に言うならパンダの下半身が魚になったマーパンダというヤツだ。
「あ、あのトランプは!」
「知っているのか、喜野!?」
佐藤くんが驚いて声を上げる。喜野の方も意味ありげに深く頷いている。
「あのマーパンダのトランプは、地域限定のレアトランプ! 近所にあるスーパーで先日行われたじゃんけん大会で見事ベストフォーに入った人間に送られた、たった四組しか出回っていない超レアなトランプだよ!」
そりゃそうだろう。マーパンダなんて全国展開しているキャラでもないだろうに。超ローカルなキャラトランプがたった四組しか出回ってないんじゃ、そうそうお目にかかれるわけもない。
……だがまぁ、遠目から見た感じ、ローカルキャラがプリントされている以外は特にこれと言って珍しいトランプでもない。
菖蒲先輩はそのトランプを取り出し、手馴れた感じでシャッフルする。アレは……ヒンズーシャッフルだな。
「勝負方法はブラックジャック。細かいルールはこの際無視しましょう。私と貴方たち二人、どちらが二十一に近い数字を引き当てられるか、それで勝負よ」
確認するまでもないが、ブラックジャックは有名なトランプの遊び方の一つで、カジノでも良く見るルールだ。
普通はディーラーと呼ばれる親がいて、プレイヤーとの一対一形式で戦う。カジノなんかでは同時にプレイヤーが複数いる場合もあるが、その場合でも勝負するのはプレイヤーとディーラーのみ。プレイヤーにもディーラーにも仲間はいない。今回はディーラーがおらず、菖蒲先輩とラグビー部二人の勝負となる。感覚的には菖蒲先輩がディーラーに近いだろうか。
簡単なルールを説明すれば、配られた手札の数を、より二十一に近づけた方が勝ちだ。細かいルールは無視、と言っていたところを見るに、色々な特別ルールは考慮しないと言う事だろう。
トランプを使う以上、これは完全な運ゲーと判断したのか、自分にも勝ち目はあると見たのだろう、ラグビー部員二人は同時に頷く。
……この二人、馬鹿か。
菖蒲先輩はそのまましばらくシャッフルし続け、たっぷり数分待った後、
「それじゃあ、行くわよ」
と言ってカードを配り始める。
自分と相手二人、全員に二枚ずつのカードが配られた。山札は三人の囲む教壇の真ん中に置かれ、勝負の準備は整った。
「さて、コールは?」
「ヒット」
先に近藤くんが動く。ヒットとはカードを一枚引く事だ。手札の合計数が低かったのだろう。
近藤くんは山札から一枚、カードを引く。
そして悔しそうな顔をして手札をばら撒いた。
「くそっ! ブタだ!」
どうやら二十一を超えてしまったらしい。このゲームでは二十一以上はバストと言って、強制的に負けとなる。
次に三谷くんが動く。
「俺は……スタンドだ」
どうやら手札をこのまま維持して勝負に出るらしい。
だが、傍から見てもわかる。アレは三谷くんの負けだ。
ここからじゃ誰の手札も盗み見ることは出来ないが、それでもわかる。
菖蒲先輩の勝ちは揺るぎないだろう。
「では、勝負ね。そちらの数は?」
「十九だ」
「……ふふ」
十九はかなりの高得点である。普通ならスタンドして当たり前の数だ。
しかし、対する菖蒲先輩は勝ち誇った笑みを崩さない。
「では、私の勝ちね。二十一」
彼女の見せた手札はご丁寧にスペードのジャックとエースで作られたブラックジャック。これにはラグビー部の二人はぐぅの音も出ない。
「さて、負けた貴方たちにはペナルティを負ってもらいましょうか。カツベという生徒は誰なのか、教えてもらいましょう」
「くっ、アイツだ。……すまない、カツベ」
何故だか三谷くんが俺の名代で戦ったような雰囲気をかもし出しているが、全然そんな事はない。むしろ、俺は勝手に身元をバラされて、かなり迷惑をこうむっている。すまないで済むか、ボケ。
しかし指差して示されては、最早言い逃れも出来まい。
俺を取り押さえていたラグビー部の二人から解放され、俺は立ち上がって菖蒲先輩を見やる。
気付けばクラス中の視線がこちらに向いていた。……おやおや、これは大スターもかくやといった集目度。ちょっと気分が良いな。
「よくぞラグビー部の精鋭を打ち倒した、菖蒲先輩とやら!」
気分が乗ったので、大仰に芝居がかった演技をしてみせる。
「しかしラグビー部は我が一年二組でも最弱。彼らを倒したからと言っていい気にならないでいただきたい!」
「ふふっ、面白い子ね」
菖蒲先輩はニコリと笑ってこちらを見た。
「貴方がカツベくんね。下の名前はなんて言うの?」
「勝吾。勝つに、数字の五の下に口と書いて勝吾だ。勝部勝吾、それが俺の名前だ」
「ふぅん、勝部勝吾くん……ますます良いわね。ぜひ欲しいわ」
意味深なセリフを呟いた菖蒲先輩は、ツカツカと足音を立てて俺に近寄る。
目の前までやってきた先輩は、低身長ながら不遜な態度で俺を見上げた。
「貴方、ショーブに入るつもりはない?」
「……俺にはそのショーブとやらがわからんのだが?」
「ふむ、どうやら貴方は部活に入っているわけではなさそうね。いいでしょう、説明してあげるわ」
菖蒲先輩は先ほどの木札を取り出す。
「私たちショーブ……勝つ部活と書いて『勝部』は正式名称、勝負研究会。この私立蓬台高等学校の由緒ある部活動よ!」
勝つ部活と書いて勝部……って、俺の苗字と同じ字じゃないか。読みは『ショーブ』と『カツベ』で違うものの、まさかこんな形で同名の存在に出会うとは……。
「そのショーブの部長が、俺なんかに一体何の御用で?」
「さっき言ったでしょう、ショーブに入らない?」
どうやら彼女なりの勧誘らしい。
とは言え、たった今存在を知った謎の部活であるショーブとやらに勧誘されて、即答できるほど俺は馬鹿でもお人好しでもない。
「俺だって暇じゃないんです。部活なんかやってる余裕はありませんよ」
「最初は断られる事ぐらい、私だって折込済みよ。だから、勝負をしましょう」
菖蒲先輩はニヤリと笑った。近くで見ると、童顔の笑顔もどこか邪悪さが漂っている。この人、本当にここまで作戦として練ってきたのかもしれない。
「俺がその勝負を受けるメリットがない」
「私はこれでも諦めが悪くてね。ここで断っても、後で何度でも貴方を勧誘しに来るわよ? それよりはここで勝負をして白黒ハッキリさせて、貴方の少ない余裕とやらを浪費させない方が得策だと思うけれど?」
なるほど、俺の言葉端を上手く利用してきたか。
正直なところ、俺は別にそれほど忙しくもないし、少ない余裕を食いつぶしている状況なんて、今のところ経験した事はない。くそぅ、口から出任せが仇になったか。
「いいじゃない、勝吾。受けてあげなよ」
「うるさい、喜野は黙ってろ」
とは言ったものの、受けた方が後々楽、と言うのもわかる。
いつまでもこの菖蒲先輩に勧誘されたままでは……いや、女の子に言い寄られるって言うシチュエーションはなかなか悪くないな? しかもこの先輩、顔も悪くはない。可愛い先輩に昼夜問わず言い寄られる……。字面にしてみればかなり美味しいシチュエーションではあるな! うむ、こっちの線で行こう。
「いや、やはり先輩、ここでの勝負は……」
「おぅ、逃げんのか、カツベ!」
「男のクセに、勝負から逃げるとは!」
「恥を知れ!」
気がつくと、喜野以外にも野次がたくさん飛んできていた。
くそぅ、こいつら人事だと思って……って言うか、さっき負けたラグビー部まで野次に混ざってるじゃねぇか。誰の所為で俺がこんな目にあってると思ってるんだ。
「さて、カツベくん、どうする?」
したり顔の先輩。どうやらここで引く手はなさそうだ。
「……いいでしょう。その勝負、受けて立ちましょう」
腹を据えて、俺は席に座る。先輩にも前の席を勧めた。
やるからには勝ちに行く。そのためには出来るだけアドバンテージを得る事が大事だ。
「さっき、先輩が言っていた言葉を信用するならば、勝負方法は俺が決めて良いんですよね?」
「ふふ、耳聡いね。良いでしょう、勝負方法は君が決めなさい」
さっき、先輩は『勝負を申し込まれた側が方法を決める』と言っていた。どうやら彼女にとっては基本ルールらしい。
さて、第一のアドバンテージは取れた。勝負方法なら確実に勝てる勝負を選ばなければな……。かと言ってステゴロなんて言ったら、周りの野次から何を言われるかわからないし、正直俺はケンカが得意なわけでもない。
と、すればだ。
「先輩、ブラックジャックにしましょう」
俺が提案したのは先ほど、ラグビー部が惨敗したブラックジャック。
これで雪辱戦を行えば、俺のクラス内の地位もそこそこ上がるし、一石二鳥だ。
「君がそれで良いなら良いけど……」
そう言って、先輩はマーパンダのトランプを取り出す。
そして、またも馴れた手つきでシャッフルを始める。
「あぁ、先輩、ちょっといいですか?」
「うん? なに?」
「ゲームを始める前に、そのデッキ、確認させてもらってもいいですか?」
ラグビー部のダメだった所その一。相手の持ち込んだデッキを確認しなかった事。
先輩の懐から取り出されたトランプの山札なのに、一切の確認を取らずに勝負を始めるなんて無用心にもほどがある。
「いいよ、はい」
先輩からデッキを受け取り、俺は中身を検める。
一から十三まで、四つのマークが一揃い。更にジョーカーが一枚の計五十三枚。特に細工がされている様子もないし、いたって普通のトランプだ。
「……ありがとうございます」
俺は礼を言ってトランプを返す。
「なんなら、私のシャッフルの後に君もシャッフルしておく?」
「ぜひ、そうさせてください」
ラグビー部のダメだった所その二。相手がシャッフルした後に細工を疑わなかった事。
相手が何か仕込みを入れるとしたらこのシャッフルのタイミングかカードを配るタイミング。その一つを潰さなかった事は、ラグビー部の敗因に挙げても問題あるまい。
先輩がシャッフルを終えた後、俺もそのデッキをよくシャッフルする。
「へぇ、カツベくん、テン切るの上手いね」
「そうですか? これぐらい、普通ですよ」
適当にシャッフルを終えた後、俺は先輩に二枚、自分に二枚のカードを配り、山札を机の真ん中に置く。
ラグビー部のダメだった所その三、カードを配る役目を先輩に任せた事。
これもさっきのシャッフルの時と同じく、何か仕込みを入れるタイミングを減らす事に繋がる。更にこちらから配る事が出来れば、細工を仕込むチャンスすら出来るというわけだ。これらのチャンスを見す見す潰す手はない。
「さっきと同じく、細かいルールはなし、どちらが二十一に近いかで勝負しましょう」
「わかったわ」
そう言って、先輩は伏せてあったカードを開く。
俺もそれに倣ってカードを手に取る。
「先輩、コールは?」
「ふふ、スタンドよ」
嬉しそうな声で先輩はスタンドをコールした。
ラグビー部のダメだった所その四、先にコールをした事。
ブラックジャックとはカジノでも行われるポピュラーなルール。
先にコールをするプレイヤーの方に選択の自由度があり、分があると思う人もいるが、それは違う。
カジノは基本的にオーナーが儲けるような仕組みになっているのだ。ルールの上ではディーラーが不利になる事はない。プレイヤーが先にコールをする分、ヒットをした際にバストの可能性が高くなっているのだ。
バストしてしまえばその時点でプレイヤーの負け。ディーラーは何もせずに勝つ事が出来る、と言うわけ。故に、今回の勝負の場合、先にコールをした方が若干不利となる。
先輩はそれに気付いているのだろう。しかし、それを見越して俺に悉く有利を譲っているのだ。……気に食わないな。そこまで勝つ自信があると言う事か。
「……ヒット」
俺は静かにコールし、山札に手を伸ばす。
引いたカードはエース。
「ヒット」
もう一枚、カードは二。
「ヒット」
更にもう一枚、もう一枚、もう一枚。俺がカードを引く度に、対面の緊迫感が高まっていくのがわかる。やはり、先輩は『わかって』いる。俺が今、何をしているのか。
合計で五枚のカードを引き当て手札は七枚、合計数字は十九。内訳はエースが二枚、二が二枚、四が二枚、五が一枚。
俺は先輩にニコリと微笑んで見せた。先輩の表情は……少し驚いている風、かな。
いや、そうでなくては困る。そうでなくては俺のやった事の意味もない。
「これでスタンド。勝負しましょう」
「ええ、私はブラックジャック」
オープンした先輩のカードはブラックジャック。つまり二十一だ。しかし、スタンドをコールした時の余裕は既に見えない。自分の手が気に食わないわけではないだろう。そりゃ当然だ。ブラックジャックは普通に考えれば最良手なのだから。
対する俺は合計十九。当然、俺の負けとなる。
「……いやぁ、二度連続でブラックジャックを当てるなんて、先輩強いっすねぇ!」
カラッと笑う俺に対し、先輩の表情はどこか神妙だ。
しかし、すぐにそんな顔を隠し、ニッコリと笑う。
「当然でしょ! 私はショーブ部長なんだから! じゃあ、放課後までに入部届け、用意しておくように!」
「アイアイマム」
手早くデッキを片付けた先輩は、勝ち誇った高笑いを上げながら教室を去っていった。
嵐のような一幕が、ここに終わりを告げたのである。
野次もおのおの、祭りが終わった後のように自分の席へと戻っていく。
ただ一人、喜野は俺の目の前に座り、ニヤリと笑った。
「勝吾も人が悪いね。ルールがルールなら君の勝ちじゃないか」
「細かいルールは抜きって話だからな。ファイブカードなんて適応されない」
特殊ルール、ファイブカードとは五枚のカードをヒットする事で成立する特殊な役。その場合、払いが三倍になる、とかなんとか。
普通のカジノではデッキを複数個使用し、低い数字の数をヒットする確率が上がっている。それでも三倍の払いとなる役ファイブカードは、実は特別難しい役だ。それを一つのデッキでやろうとするなら、それは途方もない確率になるだろう。
もちろん、種も仕掛けもある。
「俺は単に負けるのは嫌いだが、ああ言うわかるヤツにはわかるように力の差を見せ付けて負けるのは好きだ」
「勝吾は本当に、下衆だねぇ」
「お前に言われたくはない」
友人、喜野ハルの微妙な視線を受けながら、俺は教室を出た。
さて、入部届けはどこかな、っと。




