第一話:ー罪人は打首に処すー
暇つぶし程度の感覚で見てください
私の産まれは山奥にある小さな村だった。
父は私が産まれて早々に家を出ていき、私は母と母方の祖母に育てられた。
特にこれと言って何も無い平凡な村。
母は私に不自由の無いよう、色々と気を使ってくれていたのだと今になって思う。
祖母に関しては、七十一歳とは思えない程、活発的でいつも私と母を支えてくれた。
平凡な毎日を送る何処にでもいる女子高生。
それが私の肩書であり、人生だった。
でもそれは、あの日を境に大きく変貌を遂げる事になる。
高校二年の夏。
いつもと変わらず、私は登校する。
祖母に見送ってもらい、玄関の扉を開けた。
いつも見ている景色や風景は変わる事も無く、面白みの無い住宅地が広がっているだけである。
電柱に留まっている鳩やら雀やらを見ていると後ろから強く肩を押された。
「はーるな、おはよッ」
後ろを振り返るとこれまたいつもと変わらない顔が見える。
「おはよう、ユウ」
私の唯一の友達、羽佐倉夕は今日も幼い子供のように明るく元気だった。
「はるなぁ、昨日のヴィレッジ見た?まじ超面白かったよねぇ」
「…あぁそっか、アニメ版だとやっと皇国編に入ったんだっけ?」
「そうなの!もうまじですごいの!やっと国皇の正体に迫ってくのかと思ったら、まさか第一話でアンが離脱するなんて…まだ能力解放までいけてなかったのに」
「でもあれじゃなかったっけ?皇国編って、序盤にアトラとレモが一騎打ちやるんじゃなかったっけ?」
他愛のない会話が進んでいく。
「ああ!それ来週のやつじゃん!絶対言わないでよ!」
これもいつもと同じ、私の不変的生活の一辺に過ぎない。
夕と話すときはいつも気楽で楽しかった。
変わり映えの無い生活において、夕という存在は、何時しか私の中で当たり前の存在となっていた。
二人で駄弁っていれば、通学路は無いに等しい。
いつも通り直ぐに学校に到着した。
玄関で靴を脱ぎ、上履きに履き替える。
「私の見解だと、きっとアトラは双子なんじゃないかと思っている訳ですよ!はるなさん!」
夕はアニメや漫画の考察が好きだった。
なんでも、次回の展開が予想通りにハマればすっごい気持ちいい…との事。
私には判らない感覚だ。
先の展開が読めるという事は、ストーリーがありきたりな物だったり謎な部分が少なかったりと、要は読者や視聴者達に次はどんな事が起こるのか、主人公や主要人物達はどうなってしまうのか…という不安感や高揚感を潰してしまっているのではないかと私は思っている。
そうこう言っている間に教室に着く。
二年B組、十九人の生徒が在籍している。
黒板を前にして左後ろ端の席に座り、夕は隣の席に座る。
幼馴染の夕はずっと私の隣だった。
小学校、中学校の時もいつも隣に居てくれた。
掛け替えの無い存在だった。
そんな夕が今、私の腕の中にすっぽりと納まっている。
頭の中には何も無かった。
一時間目のチャイムが鳴り、号令と共に皆が一斉に立つ。
私は二秒遅れた。
二秒遅れただけだ。
その二秒の間に、立っていた生徒の首が一斉に宙に上がった。
夕の首も飛んでいた。
驚愕のあまりに、目を見開いたまま夕の頭を抱き寄せて、腰を抜かしていた。
そして、頭の中の虚無を打ち砕くように、教室のスピーカーから機会音声と幼い女の子の声を混ぜたような酷い音声が流れる。
『オメデトウゴザイマス…オメデトウゴザイマス、今回ノ当選者ハ殿本遥華様トナリマス…オメデトウゴザイマス』
意味の判らない耳鳴りのような放送が頭を劈く。
そんな事はどうでもいい。
夕が死んだ。
私の生甲斐だった夕が、私の目の前で首を撥ねられて死んだ。
『オメデトウゴザイマス…当選者ニハ報酬ガ与エラレマス』
またあの放送が鳴る。
報酬なんていらない。
夕を返して…夕を戻して…夕を、夕を、夕を…
止まらない思考、立ち上がり夕の頭をそっと机の上に置く。
少し頭を撫でて髪の感触を味わう。
これはもう夕ではない。
そう自分に言い聞かせる。
涙が出ていた事にも気付かなかった。
『報酬ハ、ザンシュケイニナリマス…貴女ハ、罪人ノ首ヲ斬ル事ガ出来マス』
呆然と立ち尽くしていると、放送が響く教室の中央に湾曲した棒状の物体が立っているのがぼんやりと見える。
私は涙を拭い、もう一度その物体に視線を向ける。
錆びた刀身、変色した柄、一目見れば誰もが理解する。
「…か、刀?」
紛れもない日本刀だった。
『サア、殿本遥華様、ソノ刀ヲ御手ニ』
何も考えず、言われるがままその禍々しい刀に触れる。
当たり前だ。
目の前で最も大切なものを失った人間に正当な判断など出来るはずもない。
柄を握り、力を入れ、思い切り床から引き抜く。
正直どうでもよかった…というより、何一つ頭に入ってこなかった。
ただジッと、手に取った刀を眺めていた。
数秒して胃の内容物がこみ上げてきて、構わずにそのまま吐き出した。
気持ちが悪い。
刀を持ち、教室を出る。
どうにかして、この気分を晴らさねば…と、廊下を渡り、A組の教室を覗く。
中ではいつもと同じ、平凡なA組の風景があった。
先程まで起こっていた地獄のような出来事やあの忌々しい放送なども、誰も聞いていない様子だった。
ふと、心の奥底で何かどす黒いものが産まれた。
芽生えたものは『罰』
そのどす黒いものは、私の心の中で同じ言葉を叫び続ける。
罪人は打首に処す。
私は迷わず、A組の扉を開ける。
国語担当の福原先生が驚きながら「何をしている」だの「今は授業中だ」だの無意味な主張を繰り返す。
私が刀を振り上げても、誰も気付かない。
刀が見えていないのだろうと、ぼんやりと思う。
そしてそのまま、私は刀を振り下ろす。
直後に福原先生の頭が崩れた達磨落としのように、ポロリと落ちる。
生徒たちは、まだ理解していない。
私は黒板の前に立ち、刀を横に振る。
生徒達も福原先生と同じく、頭を落とす。
刀は紙のように軽い。
まるで産まれた時から一緒だったみたいに手に馴染んだ。
気持ちが豊かになっていくのを実感して思わず刀を離す。
同時に酷い脱力感に襲われて、私は倒れた。
私が気絶した後、一時間目が終わり、偶然目の前を通りかかった篠田先生に私達は発見された。
数時間後に県警も到着し、山奥の小さな村で起こった怪事件として全国に報道された。
そして私は、その事件の唯一の生存者としてインターネット上で盛り上がりの火種にされていた。
何も考えずに本能のままに書いてるので、面白くないかもしれないです
その時はスマセン




