第五章 王都の夜明け
秋。
国王が急病に倒れた。
王太子は王位継承の儀式を急ぐが、魔力不足が露呈。
民衆の不満が高まる中セレステは「救世主の鏡」の預言を掲げ、王都の貧民街で演説を始めた。
「貴族だけが富を独占し、平民は命を削って働く。これでいいのですか? この国に正義はあるのですか?」
彼女の言葉は魔法で拡散され、全王都に響き渡る。
ルナスの戦略──「正義の悪役」の完成である。
「人々はシステムに反抗したいが、自分たちでは動けない。だから誰かが『悪者』になって、代わりに戦う必要がある」
そして、ついに──王宮に反乱軍が迫った。
平民たちが、セレステの旗を掲げて行軍する。
王太子は逃げようとするが、ミランダに止められた。
「あなたにはもう、王になる資格がない。私たちの未来は彼女たちが作るのよ」
王宮は血を流さずに降伏すふ。
セレステが王座の間に立つと、その肩にルナスが飛び乗った。
「どうする? 国王になる?」
「いいえ。私は王じゃなくていい」
セレステは壇上に立ち、全市民に宣言する。
「この国を『運命』に縛られる物語の舞台にするのは、終わりにする。これからは、誰もが自分の未来を選び取れる国を作る。そして──」
彼女は肩のルナスを見つめた。
「この黒猫を、国家最高戦略顧問に任命する」
人々は、驚き、笑い、そして拍手する。
──世界は変わった。