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悪役令嬢の猫  作者:
3/6

第三章 反乱の序曲


 春が過ぎ、夏が訪れた。

 宮廷では王太子の「成人式」が行われることになっていた。

 その儀式では、未来の王とての資質を示す「運命の鏡」が使われるという。


「運命の鏡……か」


 ルナスは資料を前に眉をひそめた。


「伝説によれば鏡は『真の運命』を映すという。だが、それは『既存の物語』に従う。つまり主人公が栄え、悪役が滅ぶ──という流れを強化する装置だ」

「じゃあ王太子が『正義の王』として映れば、彼の立場は不動になるわ」

「だから鏡を壊す必要がある。いや、操るんだ」


 ルナスの計画は大胆だった。

 鏡に映る未来を、セレステが「救世主」として映るように仕向ける。

 そのためには鏡に「魔力の共鳴」を起こす必要があった。


「セレステ、お前は『古代魔法』の血筋を持っている。デ・ヴェルト家の秘伝書に書いてある、失われた呪文を唱えれば、鏡に干渉できる」

「でもそれを使えば、私は魔法使いとして注目されるわ。悪役令嬢のふりが崩れる?」

「いいや。むしろ『突然魔力が覚醒した狂気の令嬢』という印象を与える。人々は力を得た者が堕ちていくのを、どこか悦ぶまものだ」

「わかった。儀式の日に私は『狂気の覚醒』を演じる。そして──鏡を操る」


 当日。

 壮麗な儀式の場。

 王太子が鏡の前に立つが、映るのは「影だけ」。

 ──魔力が足りないため、未来が映らない


 会場はざわつく。


「まさか、王太子に資格がないと?」


 その時、セレステが前に出た。


「ああ、可哀想な王太子殿下。未来すら見せられないなんて……でも私なら見せてあげられるわ」


 彼女は古代語の呪文を唱えた。

 すると空気が震え、鏡が赤く光る。

 そして──鏡に映ったのは燃える王都と、黒い猫を肩にのせたセレステが王座に座る姿だった。


「これは……救世主か? それとも……破壊者?」


 誰もが凍りつく。

 王太子は青ざめ、宰相は眉をひそめた。

 だがルナスは、セレステの心の中で笑っていた。


『完璧だ。人々は未来を信じる。そして、信じた未来を自らの手で実現しようとする』


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