線香
蝋燭に火をともす
それはゆらゆらと揺れ
次第に背筋を伸ばすように
真っ直ぐと立った
お線香の先っぽの橙は
じりじりと下へ下へ
細く白い煙は上へ上へ
萎れ落ちる灰が
音もなくはらはらと
手を合わせる間の
無言の報告
あなたに届いているのか
いないのかなんて
本当はどちらでもよくて
言葉が 不在と思いでの中を
行き来しても
時間は前へと流れ
あなたの影はわたしに重なり
わたしもいつか
影になりますから、
その時は一緒に
そこに在るひとの
影をより濃く、蒼くしましょうね、と
お線香が短く、そして
ほろほろと崩れていくのを
待ちながら
目をつむる
熱くたれる 蝋のごとく