特別話 あーくん
私は小学6年生の時、母の弟であり私の叔父さんであるあーくんによって、漫画やアニメの世界を知った。
あーくんは幼稚園の発表会とかにもよく来てくれたし、遊び相手にもなってくれたりと、小さい頃から可愛いがってくれた。そんな優しいあーくんが私も大好きだった。また、私の母と年が離れているあーくんは逆に私と年が近いため、私にとってお兄ちゃんのような存在でもあった。
=5年前(草華・小学6年生)=
今日は、久しぶりにあーくんと遊ぶ。
大学生であるあーくんは、勉強やバイト、あと最近はゼミ?とかなんとかで忙しいらしい。
私が幼稚園の頃は、同じお家に住んでいたため、夜に遊んだりと一緒にいるのが当たり前だった。しかし私の小学校入学と共に私は引っ越してしまい、あーくんとはあまり会えなくなっていた。最初はよく遊びに来てくれていたけど、段々と部活や勉強などで忙しさが年々増しあーくんは来なくなっていった。
そして今日、約3、4年ぶりにあーくんと遊ぶ。
いやなんなら約3、4年ぶりにあーくんに会う。
はっきり言って本当に緊張している。いくら家族でも、いくら小学6年生の女子でも恥ずかしいという感情は生まれるものだ。恥ずかしさもあるけど、やはり久しぶりに会えることの嬉しさも隠しきれない。とても複雑な感情が胸の中でジタバタ暴れている中、私は時間を確認した。
「あと5分であーくんが家に迎えに来る…。」(ボソッ)
「何ボソッと言ってるのよ。とりあえずちゃんと言うこと聞くのよ。それと久しぶりなんだし楽しんでらっしゃい。」
【ピンポーンピンポーン……ガチャッ】
「お邪魔しまーす!お、久しぶりだなぁ、草華!みないうちに大きくなったな〜って当たり前か!(笑)」
あ、あーくんだ!やばい、どうしよう…まずは久しぶり!って言うべき?それともこんにちは?…。
やばい、心臓の音がうるさすぎて脳が働こうとしない…。
「草華ずっと楽しみにしてたのよ、やばいやばいーって。だから今日は有難う。大学は今忙しくないの?
ほら、草華も恥ずかしがってないで、挨拶ちゃんとしなさい!」
「こ、こんにちは…(照)」
と、とりあえず一言は話せた…お母さんナイス…
「いや今落ち着いてきたから、もう会えるなら今だなって思って。にしても草華〜!今日楽しみにしてくれてたのかぁ〜。嬉しいわ〜。よし、じゃあそろそろ出発するか!夜はここで一緒にご飯食べれるしな!お腹空かせて帰ろーな!ニシシッ!」
「う…うん!」
何が落ち着いたんだろう、大学というものは何をするのか正直よく分かってはないけど、あーくんも会いたいと思ってくれていたのは嬉しい。
私は久しぶりに見たあーくんの笑顔で緊張なんてすぐに解けた。あぁやっぱりあーくんの笑顔は魔法みたいだ。
「「行ってきまーす!」」
私の家は駅からあまり距離がないため、駅までは歩いて行くことになった。
今日はまず映画を観て、その後にお昼ご飯を食べたり、買い物をしたりする。
「今日はほぼ俺のやりたいことになっちゃってるなぁ、ごめんな。久しぶりだし何しようって考えたんだけどあんまいい案思いつかなかったわ(笑)」
「ううん、全然いいよ。あーくんと久しぶりに遊べるだけでも嬉しいもん。そういえば映画何観るの?」
あーくんと遊ぶのは楽しい。あーくんには小さい頃から沢山の面白いことを教えてもらった。ゲームやお笑い番組、アニメや漫画などなど…。特に漫画が大好きなあーくんは、漫画に対する熱量は他のものよりも断然凄かった。だからか私も漫画は特に好きだし、小説でも何でも本を読むことがあーくんのおかげで好きになった。
そして次第に
今日はどんな面白いことを教えてくれるんだろう…
そんな思いがあーくんとの遊びに混じっていたのだった。
「今日はなぁ、アニメ映画を観る!」
「アニメ映画?よくあーくんの部屋のテレビで観たりしてたよね、懐かしい。」
「あぁ、確かにそうだなぁ。でも今日は映画館で観るぞ!テレビは気軽に観れるしいいけど、映画は何より音がいい!草華がもし映画館で観ることの良さを知ったらハマるかもな(笑)」
「え、そんなに!?よく友達と映画館には行くけど、映画館の良さってテレビで放送されるよりもはやく観れることだと思ってた。あ、でもアニメは映画館で観たことないかもなぁ…。音がいいってどういうこと?」
「音って言うか、声優さんの声って言うか、う〜んなんて言えばいいかなぁ。とにかくテレビよりも映画館なら戦いの時とか細かい音もよく聞こえるし、それに声優さんの声もよく聞ける。それによって漫画という動かなかった世界が動き出したんだっていう…あぁとにかく最高なんだわ!(笑)」
「なるほど…ん〜難しい(笑)」
「とにかく観れば分かる!楽しみにしといてな!
さ、着いた!映画館は…あ、あった9階だ。エスカレーターで行こう。」
アニメもアニメの映画もあーくんの部屋で何回も観たことがあるし、アニメを観ることも好きだ。しかし映画館で観ることも家のテレビで観ることもあまり変わらない気がする…。あーくんの熱量はすごかったけど、実際何が違うのだろうか…。
この後あーくんと観た映画で私の人生が大きく動きだすことをこの時の私は考えもしていなかった。