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        1 練習の話


 光で水面がきらきらと輝いていた。その日、先生はいつもよりも早く、ぼくたちが練習をする公園につき、ぼくたち、カヌー部員は先生のトラックから、さっそく重たい小型ボートを八人がかりで運び出しにかかっていた。これがとても重たい。川の中でぼくたちを追い回すのにつかう、小型ボートだ。小さなモーターがボートの後ろに付いていて、そのモーターも重たかった。先生のボートを川に持って行って、浮かべるまでがぼくたちにとってきつい仕事だった。ぼくたちの中から悲鳴が上がった。

 それから、公園の原っぱにぼくたちは寝転んだ。ぼくたちはそれぞれ身体をのばすストレッチをした。陽があたっていて、草の上にいるのは、何もしていなくても、気持ちが良いものだ。

 先生は、公園の中にあるぼくたちの近くのベンチに座って、ぼくたちを見ていた。カヌーを川面に持って行くのはいつでも面倒で、川の水はつめたくて凍えそうだ。足の裏を貝殻で切ってしまうことも、よくある。


 川にカヌーをゆっくりと浮かべる。先日、ぼくは種目を変更したばかりだった。これをやりたいと言ったときに「やめてしまえ」と、きつく言われたことは記憶にまだ新しく残っている。それから川に浮かんだカヌーに乗ろうとするが、しかし、ぼくはまだよく乗れなかった。

 二回、カヌーがひっくり返り、体の周りで、水しぶきがあがった。ぼくのそのカヌーは痛んでいた。先端が川を流れてくるよくわからないものや、ざらざらした護岸に、度々ぶつかるからだ。船は痛んで、どこかから浸水さえしていた。


 パドルを水にザっと入れると、水の表面に波紋が立つ。そして落ちそうになる度、パシャッと川面を叩く。右を叩き、左を叩く。リズミカルに。


 カヌーには種目が二種類あって、漕ぐときにつかう水かきの付いた棒、つまり、パドルの水かきが両側についていれば「カヤック」。片方なら「カナディアンカヌー」だ。

 カヤックは体の下半分を船のなかに入れて漕ぎ、カナディアンカヌーは片膝立ちの姿勢で漕ぐ。同じにされがちだが、カナディアンカヌーは「カヌー」とも呼ばれる。ちなみにそれぞれ発生した場所も違って、カヌーはヨーロッパの北のほう、カヤックはカナダ辺りのインディアンの乗り物だ。


 ぼくがやっているのは右の片足立ちのカヌーなので、右にバランスが崩れると、当然、カヌーは倒れてしまう。

 川の真ん中へやって来ると、先生のボートが来て、おおきな波を立てていった。それでカヌーががくっと揺らぎ、ぼくは川に放り出された。他の部員は何ともなさそうに漕いでいる。先生の笑い声が、つかの間、その場に響いていたが、その声はボートと一緒にだんだんと遠くなっていき、皆の姿も遠くなっていった。


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