結成
振り返るとそこには白川さんがいた。
「うわー、綺麗な人......」
僕のことを先生と間違えた女の子は声を漏らす。
「その美の秘訣は? あなたのお名前は? あなたも軽音部志望なの? 私とバンド組まない? 私......」
「ちょっと落ち着いてくれる......」
女の子はマシンガントークで白川さんを圧倒する。
「ごめんなさい、あまりにも綺麗だったからつい熱くなっちゃった。うち綺麗な子が好きなの。うちの名前は山崎桜、よろしくね。」
「綺麗......」
白川さんはなにか呟いたようであったが聞き取れなかった。
「私は白川美玖。ここにいるのだから、軽音部志望に決まっているでしょ。ついでに言うとあなたとバンドは組まない。」
「そんなー。」
山崎さんが落胆の声を漏らす。
「心くんも軽音部志望だったなんて奇遇ね。」
白川さんは話を逸らそうとしてか、僕に話しかけてくる。
『部活動オリエンテーションで惹かれたんだ』
僕のスマホに入っている、文章読み上げアプリを使う。前の席であるという理由で、白川さんに無理やり入れさせられたのである。
「心くんは何のパートやるの?」
『ギターだよ。』
「そう、私はボーカルよ。」
白川さんはどこか嬉しそうな顔をした気がした。その後白川さんは部長に連れられボーカルの練習に混ざった。
――「はい、今日の仮入部はこれで終わり。ぜひまた明日来てね。」
山本部長が部活の終わりを告げる。
「志村君ギターはどうだったかい?」
大森くんが尋ねてきた。
『結構難しかった。大森くんは?』
「僕も苦戦しているよ。でもこれからも続けたいと思ったよ。」
「僕も。」
「本当にうちと組まない? 私と組んだらいい事あるよ。なんでもするよ! 例えば白川さんのグッズを作る! 他にも......」
近くで山崎さんは白川さんに交渉していた。
「いいえ結構よ。本当に。なんと言われようとあなたとは組まないわ。」
「ガラガラガラ」
そんなやり取りを見ていると部室に誰かが入ってきた。
「すいません、遅れました。ってあれ? 心じゃん。良かったー、知ってる人いて。」
南雲であった。クラスでは鉢合わせないようにしていたが、部活も同じとなると今まで通り避け続けることは出来ないだろう。
「心はなんの楽器やんの?」
『ギターだよ。』
「まじ? 俺ベースだから一緒に組まね?」
「無理よ。心くんは私と大森君と組むから。」
白川さんが口を挟む。
「4人いた方が盛り上がらね? だから、いっしょ......」
「あと、そこの変な子が加わって4人よ。」
「そっか、分かったよ。」
南雲はしぶしぶ納得し、どこかに行ってしまった。
「あのー。変な子ってうちのこと?」
山崎さんが半信半疑で尋ねる。
「ええそうよ。そういえば、何でもするって言ったわよね?」
ボーカル白川さん、ギター僕、ドラム大森くんで山崎さんはベースに変えられ、僕たちのバンドは結成した。