その後…
翌日目覚めると…
「クロエ!」
「お母様…」
「クロエ…ああ、無事でよかった!」
すぐに医者が呼ばれ、検診。
お腹の傷は、コルセット二枚重ねのおかげで矢じりが2センチほど食い込んだだけで済んでいた。矢が貫通した左手は重傷だが、時間がたてば元通りに完治するだろうと医者は言ってくれた。
それが終わると、国王陛下参上。顎ひげを蓄えた上品なおじさん。初見です。
「わが息子を助けてくれたこと、感謝する。」
「とんでもございません。臣下として当然のことをしたまでです。」
「うむ、よい娘を持ったものだな、ロードよ。」
「はい。」涙ぐむ父母
「褒章については糸目はつけんから、後日改めて申し出るように。」
「ははー」
宰相閣下からは「アランバートル家の忠義は後世まで語り継がれるであろう。」とまで言われてしまった。『お父様、うまくやったのね』
パーティーが始まる時間に合わせて届くようにしていた手紙を読んだお父様は、すぐさま裏帳簿、不正取引の証拠をもって宰相閣下と面会。
さらに王太子殿下暗殺の企てを報告。半信半疑だった宰相閣下もパーティー会場での一件を目の当たりにして事の重大さに気づき、行動開始。
暗殺者を拘束。教頭を尋問。容疑が固まったので、アクシミリア公爵家に騎士団を派遣。一足遅く公爵に逃亡されてしまった、そうだ。
「なぜ、なぜだ…!クソおおお!覚えておれよ!アランバートル家の者ども!必ず復讐してやる!」
憤怒の面持ちで悔しがる公爵。
公爵一人を乗せた馬車が何処かに消えていった。
公爵家は取りつぶし、領地は没収され親戚縁者、使用人にいたるまで逮捕、投獄された。
アリアは北のはずれにある修道院行がきまり、公爵家ゆかりの貴族たちもそれなりの罰が与えられた。
学園もしばらく休校となった。
クロエの病室
「コンコン」
「はい」
「クロエ様!」
「レオナ、様!」
やってきたのは、主人公御一行
「クロエ嬢!傷の具合はいかがですか?」
「はい、完治すると言われております。」
「痛々しい…」
「いつぞや下町で私を助けてくださったのも、クロエ様ですよね?」
『もうバラしちゃってもいいわよね…』
「は、はい」
「やっぱり!私は3度も助けていただいたのですね!」
「レオナを、いや、僕の命も助けてもらって…心から感謝する」
「まさか、公爵家が謀反を企てていたなんて…全然気づけなかった。護衛として脳なしだよ俺は!」
「私も…」
「いえいえ…」『ゲームで知ってただけなんですよ~』
「しかし、あの身のこなし、只者じゃない。クロエ嬢は何者なんだ?」
「えーと…東洋の格闘技ジュウドウを少々…」
「格闘技!女だてらに?」
王宮謁見の間
多数の着飾った貴族、元老院、騎士たちが参列する中
クロエと父が中央で控えている。正面に王と王妃。
宰相「此度の活躍に対し、アランバートル家に伯爵の爵位を賜ることが決定した。」
どよめく会場
「男爵から伯爵とは!」「アランバートル家は一気に王政の中心じゃ!」
割れんばかりの拍手。さらに目がくらむような褒賞金、領地を賜る。
「私は…私は~」あわわ状態の父。
そっとお尻をつねる。
「わっと…謹んでお受けいたします。」
「さて、クロエ嬢。そなたにも褒美をつかわしたい。希望はあるか?」
「はい、国王様。」
「申せ。」
「お言葉に甘えて…ジュリエッタ・サーディアン様とエミリー・モーガン様について、温情あるご裁定をお願い致します。あの二人は友人であり、公爵家の被害者なのです。」
深々と頭を下げるクロエ。『ゲームで二人はアリアと共に修道院に行かされてしまうんだ。あまりにもかわいそうだ…』
「ふむ、クロエ嬢が望むのでありば善処しよう。」
「ありがとうございます。」
「ほかにはないのか?」
「あの、もう一つよろしいでしょうか?」
「うむ。」
「騎士団の入団テストを受けさせていただけないでしょうか?」
「き、騎士団とな?」
会場がざわつく…
「女の身で騎士団?」「貴族の令嬢が?」
「な、何を言い出すんだクロエ!」
「お父様は黙ってて!」「はいいい~」
「もちろん不合格の場合、このようなこと、二度と申しません。」
「ふうむ…騎士団長、どうか?」
「はああ、女性の入団希望者がおらぬわけではありませんので…怪我のないよう万全を期して、ということで、なら。」
「よし、クロエ嬢。許可する。」
「ありがとうございます!」
再び起こるどよめき。