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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
大学生編

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後日談その8 沖縄旅行 その1

 9月初旬。夏休みが終わるまで、あと10日ほど。

 そんな時期に、幸太郎としほはとある空港にいた。


「ん~! 暑いわっ。幸太郎くん、すっごく暑い!」


 本日の気温は32度。湿度はなんと、78パーセントを超えている。

 一応、空港内は冷房が効いているので多少マシだが……しほがほんのりと汗ばむ程度には、気温が高かった。


 それでも彼女は、楽しそうに笑っている。

 その理由は――今、二人が旅行で沖縄に来ているからだった。


「はいさい! 幸太郎くん、はいさいって書いてるー!」


「そうだね。沖縄の方言で『こんにちは』だったかな?」


「ええ、もちろん知ってるわ! 昨日、沖縄のよーちゅーばーを見て勉強したもの。はいさーいっ」


 そんな会話を交わしながら、ロビー内を歩く二人。

 声は大きいのだが、空港内は広い上に人も多く、騒がしいおかげで目立つこともない。


 その上、沖縄にある空港――那覇国際空港は国内だけじゃなく、国外からの観光客も多いので、しほの日本人離れした容姿も珍しく風景に溶け込んでいた。


「幸太郎くん、これからどうするの? 空港内でごはんとか食べていく? わたし、あれが食べたいわっ。沖縄そば!」


「たしかにお腹は空いてるけど……バスの時間がそろそろ迫ってるから、ホテルに荷物を置いてからにしようか」


「はーい! じゃあ、もう少し移動ねっ」


 到着ロビーを出て、出入り口へと向かう。

 付近では幸太郎たちと同様に観光客を待っているのでろう業者の人が複数いて、名前の書かれたネームプレートを掲げていた。


 その横を通り過ぎて、空港を出る。

 その瞬間、生ぬるい風が二人の肌を撫でて、吹き抜けた。


「な、なんかサウナにいるみたいだね……蒸し暑いなぁ」


 空港内も暑かったが、外は更に気温と湿度が高かった。吹き抜ける風も生ぬるく、気休めにもならないほどに蒸し暑い。


 関東では感じられない、南国の熱である。


「でも、沖縄っぽくていいじゃないっ。めんそーれ~」


「めん……?」


「沖縄の方言で『ようこそ』って意味なのっ。沖縄にめんそーれ!」


「しぃちゃんがようこそって言うのはちょっと違うんじゃない?」


 バス停は出入り口のすぐ近くにある。

 そこに向かって歩きながらも、しほはずっとテンションが高く、会話が途切れない。


「うふふ♪ 幸太郎くんと旅行できてすごく嬉しいわ……! 今、すっごく楽しくて仕方ないの」


「まだ着いたばかりなのに?」


「それでも、楽しいのっ。幸太郎くん、連れてきてくれてありがとうっ」


 ……そうなのだ。

 この旅行、実は幸太郎がしほを誘って実現したものである。


 彼はアメリカで母の事業を手伝って、アルバイト代をもらっていた。態度は厳しいが財布のひもが緩い母は幸太郎に結構な額を渡しており、それを使用して旅行をしていたのである。


「一ヵ月、寂しい思いをさせちゃったお詫びだからね。楽しんでくれたら何よりだよ」


「そうね。一ヵ月分の幸太郎くん成分を摂取することにするわっ」


「一ヵ月分かぁ……お手柔らかに頼むよ」


 そうやってオシャベリしながらバスを待つ二人は、旅行に来ているおかげでテンションも高く、いつもより楽しそうだった。


 ……大学生になって、色々なことが変化している。

 だが、その変化は更に二人の距離を近づけるきっかけにもなっていた――。



(沖縄旅行編その2に続く)

いつもお読みくださりありがとうございます!

新作『クズの幼馴染に彼女を寝取られたけど、あいつの溺愛している義理の妹と母親が償ってくれるので許してやることにした』もぜひ読んでくれると嬉しいです! 鋭意連載中で、今5万字ほどとなっております。

どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

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