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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第五部

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五百四十話 不自然な変化

 朝ごはんを食べ終えた後のこと。


「おにーちゃん、お散歩に行ってあげてもいいよっ?」


 梓がいきなり外出しようと誘ってきた。

 普段はあんまり二人きりになろうとしないのに……何かあったのだろうか?


「あら、あずにゃんったら珍しいわね。いつもは幸太郎くんにツンデレするくせに」


「つ、ツンデレなんてしてないもんっ。別に変な理由はないんだからね!」


 その言い方だと、まさしくツンデレみたいに聞こえてくるなぁ。


「ちょ、ちょっと、その……食後の運動を、しようかなって」


「え? なんで? あずにゃん、健康なんて気にするタイプじゃないわよね?」


「まぁ、気にはしてないけど……」


「あ、分かった。普段は幸太郎くんを独り占めできているのに、昨日はあまり甘えられなかったから、物足りないのね? こういうのをなんていうか知ってるわ。『よっきゅーふまん』でしょ?」


「違うよ!? そういうわけじゃないもんっ。し、霜月さんとかくるりおねーちゃんが細すぎるから、ちょっと体重が気になっているだけだもん!!」


 さすがに欲求不満を疑われるのは心外だったのだろう。恥ずかしくて言えなかったであろう本音を教えてくれた……なるほどね。


 確かにしほと胡桃沢さんは細い。一方、梓も細くはあるけれど……やや幼児体形というか、くびれがないというか、寸胴体形気味というか。


 洋服を着ていたらそこまで気にならない程度の差である。ただ、水着姿になるとスタイルが顕著になるわけで……梓はそれが気になっていたようだ。


 ぽっちゃりしているわけじゃないので、俺としては気にしなくてもいいと思うけど。

 そして今更、足掻いたところで大して変わらないだろう。


 とはいえ、軽い散歩は健康に良い。

 否定する理由もないのでもちろん頷いた。


「ふーん? 『よっきゅーふまん』じゃないのね」


 そういえば、しほって言葉の意味を正しく理解しているのだろうか。

 ふわっとした理解で使っているような気がしてならないけど、詳しく説明するのは恥ずかしいし、まぁいいや。


「幸太郎くんが行くなら私も行くー!」


「あー! それ以上細くなってどうするの!? 霜月さんは行かなくていいよっ」


「なんで? 幸太郎くんがいいなら私もいいわよねっ」


「良くない! おにーちゃんはただの付き添い。ビーチで一人きりだと寂しいし」


 ああ、それで俺を誘ったのか。たしかにここは胡桃沢さんの家が所有しているプライベートビーチなので、人が全くいない。誰もいない海岸を歩くのは心細かったのだろう。


 あと、しほに言わなかったのは、ダイエットと言うのが恥ずかしいので隠そうとしていたのかな。

 結局全部バレているけど。


「はぁ、もういいや……どうせイヤって言ってもついてくるでしょ?」


「うん! ついていくわ」


「じゃあいいよ。霜月さんも一緒に行こ」


「わーい」


 そういうわけで、話はついたようだ。

 三人で別荘を出て、海へと向かう。


 人気のない海岸をのんびり歩こうと、そう思っていたけれど。


「あれ? おにーちゃん、人がいる……しかもいっぱい!」


「本当だわ。一、二、三……うん、いっぱいいるわね」


「え? なんで……?」


 ビーチに出て、真っ先に見えたのは複数の人影。

 プライベートビーチのはずなのに、ビーチには結構な人がいた。


 いったいどういうことだろうか。

 不自然な変化は、何を意味しているのか……それが良く分からなくて、なんだか不気味だった――

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[一言] あずにゃんがツンデレ…?
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