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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第五部

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五百三十三話 モブ主人公とサブヒロインの相性

 ソーセージとハムを加熱することは大して難しくない。

 料理に慣れている人間にとっては片手間でこなせる作業だろう……恐らく、料理初心者の胡桃沢さんだってできるはず。


 しかしながら、火を扱うという点を考慮すると、不安がないと言えばウソになるわけで。


「野菜は洗ったけど次は何をすればいい?」


 水で丁寧に、時間をかけて野菜を洗った胡桃沢さんが次の作業を聞いている。

 サンドイッチを作るのにさほど手間はかからない。後は具材を加熱したり、食べやすい大きさにカットするだけだ。最後にそれらをパンに挟んで完成である。


(包丁と火って、どっちが安全なんだろう?)


 料理に慣れていない彼女がやりやすい工程を考えてみる。

 うーん……どちらかと言えば、包丁で食材をカットする方が安全だろうか?


「あ、分かった。次はこの野菜を切ればいいのよね? これくらいならあたしでもできそう」


 迷っていたら、先に胡桃沢さんが動いた。

 まな板と包丁を取りだして、テーブルの上に置いている。


 ……あ、そうか。

 胡桃沢さんは、しほじゃない。


 料理初心者なところは同じだけど、しほみたいに不器用というわけではないだろう。

 しほは大雑把な性格なので細かい作業が苦手である。そのせいで作業が雑な傾向があるため、包丁の扱いに不安を覚えるのだ。


 無意識に、しほと胡桃沢さんを同列に考えていた。

 そのせいで二人を同一視していたのだろうか……しほだったら不安なことを、胡桃沢さんも同じように認識していたのである。


 なんだか、いつもと違った。

 自分の認識がズレているような気がしてならない……でも、今このことを考えこんだら胡桃沢さんが気にすると思うので、とりあえず思考から外しておいた。


 まずは料理を完成させてしまおう。

 それから冷静に、ちゃんと状況を整理したいところだ。


「包丁、気を付けて」


「分かってるわよ。さすがに、包丁の使い方くらい知ってるから……料理の動画で見たことあるし」


 そう言いながら、胡桃沢さんはレタスに包丁を入れた。

 手つきはお世辞にも軽やかとは言えない。たどたどしくはあるけれど、それはつまり気を付けているという意味でもあるので、悪いことじゃない。


 丁寧に、慎重に、包丁でレタスを切り分けている。

 ……この様子なら、大丈夫そうだった。


「任せた。あ、でもゆっくりでいいよ……こっちも手早く終わらせて手伝うから」


「ええ。ケガだけはしないように気を付けるわね」


 不安そうにしていることを感じ取っているのだろうか。

 分かっている、と言わんばかりにそんなことを伝えてくれた。


 しほと違って、胡桃沢さんは視野が広い。

 あの子は夢中になると周りが見えなくなるタイプである。しかし胡桃沢さんは冷静に周囲を俯瞰できるようだ。今も、俺が気にしていることを理解して、まるで見せつけるようにゆっくりと作業を行っている。


 ……やりやすい。

 俺は常に気を遣いがちな性格だけど、彼女は気を遣わせまいとふるまってくれる。だから、気が楽だと感じるのかもしれない。


 前々から、感じていたことではあるけれど。

 胡桃沢さんと俺は、相性が意外と良いような気がする。


 しほも彼女とは相性が良いし……胡桃沢さんってしっかりしているから、俺やしほのように不安定な人間にとってはすごく心地良い。


 以前は、こんなにも気を許せる相手だとは分からなかった。

 出会って間もない頃……竜崎に影響されていた胡桃沢さんは、俺を好きと言ってくれて、色々あって……その時は『胡桃沢くるり』という人間のことを全く理解できないまま、彼女との一幕が終わったけれど。


 すべてが終わった後でようやく、胡桃沢くるりを少しだけ理解できた気がする。

 素の彼女は、とても魅力的な女の子だった――。

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