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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第五部

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if ~もしも霜月さんが『モブ』と出会わなかったら~ その1

いつもお読みくださりありがとうございます。

突然ですが、少しだけifストーリーを書いてみます。

もしも、しほちゃんが幸太郎と出会わなかったら――という世界線のお話です。

どうぞよろしくお願いします。

 ――白銀が舞う。

 銀色の粒子が、彼女の軌道をなぞるように宙を漂う。


 ただ道を歩いているだけ。

 だというのに、常人にはないオーラを放つ。


 彼女の名前は、霜月しほ。

 眩い銀髪と、透き通るようなサファイア色の瞳が美しい少女だ。


「…………」


 無言で道を歩く。

 冷たい――そう表現しても過言ではないような表情で。


 それでもなお、彼女は注目を集める。


「うわっ」


 先ほどまでスマホを見て歩いていたサラリーマンらしき男性が、しほを見た途端に声を上げて道を開けた。


「わぁ」


 すれちがった中学生らしき少女が、足を止めて羨望のまなざしを向けていた。


「……ちっ」


 誰かと待ち合わせしているのであろう、派手な服の女性がしほを見て舌打ちを零した。


 その全てを前にしてなお、彼女は淡々と足を進める。

 冷たい、無表情のままで。


「……うるさい」


 小さく紡がれた言葉は、見た目に反して酷く荒んでいた――







 ――彼女はもう社会人である。

 高校を卒業してすぐに、大学にはいかずに就職と言う道を選んだ。


 職業は、広告モデル。年齢はニ十歳。

 高校生の頃、たまたまスカウトされたことをきっかけにそのままモデルを続けていた。


 あまり大きくはないが、堅実に利益をあげているタレント事務所である。

 その中でも、彼女は少し特殊な立場にいた。


「霜月さん遅刻だよっ」


 撮影場所に到着して早々、担当の女性マネージャーが悲痛な声を上げる。

 パッツンのショートカットがよく似合う、小柄で見た目が幼い少女だ。

 しほも幼く見られがちなのだが……そんな彼女と比較しても、マネージャーの少女は幼い見た目である。

 これでしほと同じ20歳だから、恐ろしいと彼女は密かに思っている。


「1時間はダメだよ! みんな待ってるんだからねっ」


 ぷんぷん、と擬音がつきそうなほどに怖くない怒り方。普通なら笑いそうになってしまうコミカルさを、マネージャーの少女は醸し出しているのだが、しかし彼女は表情を変えないまま、冷たい声を小さく発するだけだった。


「ごめんなさい」


「謝ってるけど、全然改善するつもりはないよねっ」


 困った顔をしているマネージャーに、しほは肩をすくめる。

 口では謝っていたが、彼女は悪びれる様子はない。


「クビにしてもいいけれど」


 そう伝えると、マネージャーは慌てた様子で首を横に振った。


「そんなことしたら社長に怒られちゃうよっ」


 ……そうなのだ。

 正直なところ、しほはモデルと言う職業に興味や関心を微塵も抱いていない。

 だが、事務所の方が彼女を手放したがっていないのである。


 この世に二人といない、圧倒的なオーラを持つ白銀の美女――彼女の容姿に惚れた企業は数知れず。

 あらゆる企業が広告塔として起用したいとオファーがくるほどの存在なのだ。


 だからこそ、遅刻は許される。

 どんなわがままでも受け入れてくれる。


 なぜなら、彼女は誰よりも『特別』だから。


「……今日は何をすればいい?」


「ファッション雑誌の撮影だよ。新デザインなんだって」


 しほ年齢が変わらないマネージャーは、仕事相手と言うよりは友達のような距離感で接してくる。本来であれば、しほ程の格があればベテランのマネージャーが担当しておかしくないのだが……彼女が、それを嫌がったのである。


 しほは人が嫌いだ。

 家族を除いて信頼している人間は存在しない。

 ただ、マネージャーの少女にだけは少しだけ心を開いている。


 だからこそ、バイトという立場でありながら、マネージャーの少女はしほを担当しているのだ。


「分かったわ。適当に撮られてくる」


「適当はダメだよっ」


「はいはい、分かってるわ」


 ため息交じりに、そう言いながら彼女はマネージャーから視線を外す。

 そのまま歩き出すと、その半歩後ろをマネージャーの少女がついてきた。


「……あまり無理しないでね」


 その優しい言葉に、彼女は少し笑いそうになる。

 でも、その表情はなおも動くことはなかった。


 霜月しほは、笑えない。

 そのことを、マネージャーの少女には申し訳なく思っているが……感情表現が下手くそな少女は、それを言葉にすることもできなかった。


 そのまま何も言えずに、現場に入る。


「――霜月しほさん、入られます!」


 撮影スタジオの扉を開けて、スタッフの声が聞こえたかと思ったら、その場所にいたすべての人間がしほへと視線を向ける。


「…………はぁ」


 そして、再び彼女の心は冷たくなった――。


【続きます】

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