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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第五部

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四百十二話 クラス対抗スポーツ大会 その17

 ――熱い。

 血が沸騰したみたいに全身が火照っている。


 体は疲れているのに、視界はやけに鮮明で、思考はとても透き通っていた。

 今の俺は、迷わない。


 自分が、自分らしくあることが、こんなにも心地良いことだったなんて……思ってもいなかった。


 この状態であれば、勝てる。


(竜崎にも、負けない――と、思えることが重要だよな)


 うん、分かっている。

 気持ちまで負けていたら、勝負になんて絶対に勝てない。


 ただ……簡単に勝てるとは、もちろん思っていなかった。


「油断してたよ。まったく、俺はいつもこうなんだよ」


 相変わらず俺から離れようとしない竜崎が、ニヤリと笑う。

 しかし、その顔つきは先程よりも鋭かった。


「でも、良かった。まだ終わってない」


 その時である。

 今度は、花岸じゃないクラスメイトからボールが蹴られた。


 先程の動きを見て、期待できると思ってくれたのだろう。

 ありがたい。そのパスを受けて、再びゴールを狙うために前を向く。


 だが、予想通り……あいつが俺を阻んだ。


「――らぁ!」


 強引に。

 乱暴に。

 荒々しく、竜崎が俺に体を当てる。


「くっ……」


 彼は体格がひとまわり大きいので、その衝撃に体勢が崩れた。

 このままだとボールが奪われる――そう判断した直後、


「花岸!」


 すかさず俺は近くにいてくれた花岸にパスを出した。


「いいぜ、ナイス!」


 結果的にはボールが繋がって、それがチャンスへと展開してく。

 残念ながらあと一歩のところでキーパーに防がれたが、攻撃としては悪くなかっただろう。


 ただし……あとほんの少し判断が遅れていたら、俺は間違いなくボールを取られていたわけで。


「ちっ。もうちょいだったか」


 舌打ちを零す竜崎に、俺は思わず苦笑してしまった。


「ただの学校行事にしては荒いんじゃないか?」


「てめぇだってさっき、体当たりしてきただろうが」


 まぁ、お互い様ではあるけれど。

 とはいえ、竜崎は明らかにムキになっている。


 俺と同じように、彼も熱かった。


「負けたくねぇんだよ。お前だけには、な」


「……俺も同じだよ」


 お互い、嫌いあっていることは分かっている。

 だからこそ、意識している。


 俺も、竜崎も、こいつにだけは勝ちたい――と、そう強く思っている。


 過去に色々あった。

 そのことを未だに引きずっているわけじゃない。

 根に持っているわけでも、怒っているわけでもない。


 でも、竜崎はやっぱり俺にとって嫌いなやつで。

 だからこそ『特別』な存在でもあった。


(何事にも夢中になれないけど、竜崎のことだけはいつも真剣だったからな)


 敵として、これ以上なく凶悪。

 厄介で、嫌いで、困ってばかりで……でも、俺が誰よりも先に真剣に向き合えた存在。


 もちろん、しほを除いた他の人間の中で――の話だ。


 竜崎だからこそ、俺は熱くなれた。

 素の自分を……中山幸太郎を、引きずり出すことができた。


 この衝動に身を任せよう。

 他者の視点も、物語的な立ち位置も、全てどうでもいい。


 ただ、勝ちたい。

 そのために俺は……再び強く当たってきた竜崎と、真向からぶつかるのだった――

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