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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第五部

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間話32 怖がりしほちゃん ※2巻表紙公開

いつもありがとうございます!

実は2月19日に発売される本作品(2巻)の表紙が公開されました!

本編もちょっと落ち着いたところなので、息抜きと記念をかねて間話です。

季節感はありませんが……冬に気が滅入っているので、夏のお話です!

二人が大学生になった頃の小話となります。

末尾にカバーイラストございますので、ぜひ見ていってくださいm(__)m

 八月。セミが叫ぶような鳴き声を不快に思うことすら億劫になるような、そんな季節。

 大学二年生の夏休みのこと。俺もしほもインドア派なので、家の中で映画を見てくつろいでいた。


『夏だからちょっと怖いものが見たいわ』


 そう言って大きなサメが出てくる映画を見ていたしほ。

 幽霊とか、怖いものが苦手なくせに……どうしてチャレンジ精神だけは旺盛なのだろう?


「……ま、まぁまぁだったわね。ふーん、食べ、食べられ……食べられちゃう感じなのね……」


 視聴を終えて。

 やっぱりちょっと怖かったので、隣に座る俺の腕を抱きしめながら、しほは震える声でそう言った。

 強がっているのがバレバレだった。


「背筋は冷えた?」


「べ、別に? あ、もしかして……怖がっていると思っているのかしら? そ、そそそんなことないんだからねっ」


「ふーん?」


 冷やかしで見た割りには、内容が過激だったのか表情が凍り付いている。

 しかし俺に恐怖を悟られたくないのか、強がりだけは継続していた。


「むぅ。幸太郎くんったら、信じていないでしょう?」


「あはは」


「あー! やっぱり信じてない……だったら二本目を見るわよっ。今度はホラー系の怖いやつ!」


 そう言って、サブスクシステムの映像コンテンツサイトで別の映画を探し出したしほ。

 へたれなくせに強情なのも昔から変わらない。勢いで二本目の怖い映画を見ることになった。


 今度はサメ映画とちょっとテイストが違って、幽霊系の恐怖映画である。

 井戸から女性が出てくるホラー映画を見て、しほはもう面白いくらいに真っ青になっていた。


「ひ、ひぃぃ……」


 俺の腕を抱きしめるどころか、最早抱き枕のようにギュッとしがみついている。


「怖いなら消そうか?」


「こ、怖くないもん!」


 大学生になっても子供っぽく意地を張るのをしほはやめない。

 結局、そのまま最後まで見てしまった。


「……もう夜か」


 映画を二本も見たせいか、そろそろ日が暮れそうである。

 いつもならしほが帰宅するのも、これくらいの時間帯だった。


「しほ、今日は帰らないのか?」


「……も、もうちょっとだけっ」


 ただ、今日はいつまで経っても帰り支度をしようとしない。

 それどころか、俺から離れようとしない。一人になることを明らかに怖がっていた。


 怖いなら強がらなくてもいいのに……。


「送っていこうか?」


「……そ、外に出たらテレビに引きずり込まれたりしない?」


「外にテレビってなかなか見かけないよ」


 ダメだ、まともな精神状態じゃない。

 このまま一人にするのは心配だった。


「じゃあ、今日は泊まっていく?」


「そうする!」


 かぶせ気味に頷いたしほ。

 すごく嬉しそうな顔で、安心したように笑っていた。

 ここまで喜ばれるのなら、まぁ……うん。悪くないというか、最高だ。

 俺も怖いコンテンツは然程好きというわけじゃないけど、こうやってかわいいしほを見られたのだから、見て良かったのかもしれない。


「梓もそろそろ帰って来るし、ごはんでも食べに行こうか?」


「だ、だから、外はダメっ」


「……じゃあ、冷やしそうめんにでもしようか」


「もう十分冷えたから! 温かいごはんが食べたい……」


 それから、しほはずっと俺から離れようとしなかった。


 ごはんを作るときも後ろから抱き着いたままで、帰ってきた梓がそれを見て呆れていた。

 トイレに行くときもついてこようとするし、中に入ったら「幸太郎くん、そこにちゃんといる?」って十秒おきくらいに聞いてきた。


 あと、一番困ったのはお風呂だった。一人では入れないと言ってきたので、さすがにそれはちょっと俺も対処しようがないので、梓にお願いして一緒に入ってもらった。


「やっぱり、昼間の映画怖かった?」


「……怖くなかった!」


 それでもしほは認めない。

 こんな有様なのに……後に引けないのか、頑なだった。


 だけど、深夜。

 寝るときも俺から離れようとせずに、そばで寝ていたしほに起こされてこう言われた。


「幸太郎くん? ねぇ、トイレ行きたくない? 行きたいならついていってあげてもいいわよ?」


 時刻は三時。一番眠たい時間帯だったこともあって、俺も態度がおざなりになっていた。


「……トイレは、大丈夫」


「だ、大丈夫じゃないのっ。私がもれそうだから……」


「行ってきてもいいよ?」


「ひ、ひとりで行けないっ」


「なんで?」


「……ごめんなさい、怖いんです! だから、幸太郎くん……一緒についてきて!!」


 深夜になって、やっと怖がっていたことを認めるのだった。

 やれやれ。しほはやっぱりちょっとだけ、めんどくさい。


 でも、まぁ……そういうところも、かわいいけれど――。



挿絵(By みてみん)





2巻の表紙となります! 担当イラストレーターは引き続きRohaさんです。

1巻とはテイストが違って、おこ顔のしほちゃんも可愛いです。

ストーリーは、第二章――メアリーが登場しますよ!

web版既読の方にも楽しんでもらえるように、8割ほど書き下ろしました(`・ω・´)ゞ

書籍版の方は、同一作品というよりはほとんど新作に近いかもしれないです。

1巻もあわせて、どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛いいいいいいい
[一言] 日本のホラーって、特別怖い気がするなあ。 なんかじめっとしたり、ぬっとりしている感じ。
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