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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第五部

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三百七十八話 『中山幸太郎』の音


 そういえば、昔は自分が何を好きなのかもよく分かっていなかった。


 ――胸は小さい方が好きなんだろうなぁ。


 そう考え始めたのは、いつ頃だったんだろう?

 女性に対して、女性的な魅力を感じるようになったのは……いや、感じられるようになったのは、やっぱりしほと出会ってからだ。


「あ、でも……もしかして、幸太郎くんって気を遣ってくれてるのかしら? ほら、本心では大きな胸が好きなのに、私にはウソをついている可能性もあるわっ」


 しかし、その本人が俺を疑っている。

 その言葉に思わず笑ってしまった。


「違うよ。しほにウソなんてつかない……しほだって、俺がウソをついていないのは分かるんじゃないかな?」


 彼女は特別に耳がいい。その鋭い聴覚は、最早第六感と言って差し支えない程である。

 ウソをついたら、こちらの違和感を『聞き分ける』ことができるのだ。


「……確かにウソの音は聞こえないわ」


 しほも俺の様子はなんとなく分かっていると思う。

 なのに、唇を尖らせてまだ不満そうにしているのは、どうしてだろう?


「でも、やっぱり……メアリーさんの方がいいでしょう? だって彼女、アニメだったら薄い本にされちゃうタイプのキャラクターだもの」


「うすいほん?」


 ごめん、ちょっと分かんない。

 どういう意味合いなのかいまいち理解はできないけれど、とりあえず……やきもちの状態が継続しているのは、把握した。


「あ、そういえば胡桃沢さんって私と同じくらいの大きさだっけ? なるほど、つまり幸太郎くんの本命はメアリーさんで、胡桃沢さんはたまたま利用しただけ……たまには胸の大きな女性と遊びたくなったから、私に隠れて会いに行った――そういうことになるのかしら?」


 そういうことにはならないと思う。

 ものすごく隙の多いガバガバ推理だけど、しほは自分の見解を疑っていなかった。


「幸太郎くんったら、そんなにクズな男の子に育てた覚えはないわっ」


「育った覚えもないよ」


 まぁ、育ててくれた覚えはあるけれど。

 しほがいてくれたから、俺はこうして『自分』をハッキリと分かるようになってきたのだ。

 その意味合いでは、中山幸太郎は霜月しほが育ててくれた――ということになるだろう。


「……そんなに俺って、信用ないかな」


 正直なところ、ここまで不安な気持ちを抱かせていることが少し悲しかった。

 しほの目には、俺が女遊びをするような人間に見えているのだろうか。


「あ、違っ! あの、幸太郎くんを責めてるわけじゃないというか、信じていないわけじゃないというか……ちょ、ちょっと待って! 本気で悲しまないでっ」


 俺の気持ちを察したのか、今度はしほが焦り出す。


「ほら、幸太郎くんって私に気を遣いすぎるでしょう? だから『しほが好きな幸太郎』を演じているのかもしれない――って、思っちゃうの。本当の幸太郎くんは違うのに、私に合わせてくれている……そう不安になっちゃっているだけで、別に信用してないわけじゃなくてっ」


 ……なるほど。

 しほが過剰に心配していたのは、浮気していることじゃない。


 中山幸太郎が、中山幸太郎を演じていること。

 それを彼女は疑っている。


「幸太郎くんの音が、最近変わっているの……どこに本当のあなたがいるのか、聞き分けられなくなってきているの。だから、私は――分からないわ」


 しほのおかげで形成された、中山幸太郎の音。

 それが偽物なのか、本物なのか……しほには判断がつかなくて、困惑しているみたいだった――

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手に会わせて変わっていくことに、本当も嘘もないのだろうけれど
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