間話28 クリスマス その3
12月24日。クリスマスイブの夜。
中山家では、今日クリスマスパーティーが行われることになっていた。
明日はしほが家族で食事に行くみたいなので、俺たちは前日で――という話になったのである。
「メリークリスマス!」
サンタの衣装を着たしほがそう叫びながらクラッカーを鳴らしている。
一方、同じようにサンタの衣装を着せられた梓は、ほっぺたを膨らませてふてくされていた。
「なんで梓も参加しないといけないの? こんなパーティーではしゃげる年齢じゃないもん」
「私の妹だからよ」
「違うよ? 梓はおにーちゃんの妹だから」
そう言い争いながらも、こたつで隣同士くっついているので、喧嘩というよりはじゃれ合いにしか見えない。
そんな微笑ましい二人をたまに眺めながらも、俺はパーティーの準備に追われていた。
「幸太郎くん、ケーキまだー?」
「おにーちゃん、そろそろジュース飲みたーい」
……二人も手伝ってくれたなら、もっと早くパーティーが始まるのに。
しかし、こたつの居心地があまりにもいいのだろう。二人は微動だにしなかった。
まぁ、準備とはいっても、ケーキを切り分けて、買ってきた調理済みのターキーを温めて、白いひげの生えたふくよかなおじさんがマスコットキャラクターをしているファーストフード店のチキンを出すだけで、そんなに大したパーティーではないけれど。
しかし、しほはこういう季節のイベントが好きなので、とても楽しそうだった。
「トナカイさーん。早くしないとお肉にして食べちゃうわよ?」
「精肉したらダメだよ……ってか、おにーちゃんの恰好ってトナカイじゃないよ? あの角の形だと、鹿じゃない?」
「え? トナカイさんって、鹿さんの英語バージョンじゃないの?」
「……そ、そうなの? 梓も詳しくは知らないけどっ」
「あら。あずにゃんったら、おバカさんなのに変なこと言わないで」
「霜月さんもでしょ!? うぅ、なんかIQが低い会話をしているような気がする……」
それで、俺の恰好はトナカイと鹿、どっちなんだろう?
よく分からないけど、まぁいいや。とりあえず準備を進めていった。
ケーキを切り分けて、チキンを出して、あとは買ってきたターキーを温めてから切り分けて……いや、肉多くないか?と今更になって気付いたものの、とりえあずテーブルの上も賑やかな方がパーティーっぽくていいかと自分を納得させて、一通りの準備を終えた。
「おー! なんかパーティー感が出ていいわね……じゃあ、いただきまーすっ」
「あ! ちょっと待って、そのマジパンは梓が食べたかったのに!!」
「……ケーキから食べるのかー」
二人にとって主食は砂糖なのだろうか。
買ってきたのはいちごの乗ったショートケーキ。その美味しい部位を奪い合い二人を眺めながら、俺はチキンを食べていた。
「だったらイチゴは梓のものだからねっ」
「じゃあ私はクリームをもらうわ!」
ただ、二人の争いがあまりにも不毛というか、このままだとケーキを作ってくれたパティシエさんに申し訳ない食べ方になりそうだったので、仲裁に入ることに。
「しほ? 悪い子にしてたら、サンタさん来ないぞ?」
そう伝えた瞬間である。
「――そうだった!」
目に見えて、しほが大人しくなった。
「あずにゃん? ごめんね……はい、どうぞ。好きなところ食べていいわ。私は余ったところでいいから」
「……きゅ、急に謝らないでよっ。梓が食い意地を張ってるみたいに見えるしっ」
なるほど……しほのご両親も、いつもこうやって娘に言うことを聞かせているのだろう。「サンタさん来ないよ?」は、サンタさんを信じる少女にとって、最強の文言だった。
まぁ、18歳なのに本当にそれでいいのか、という疑問はさておき。
そういう純粋なところも、しほの魅力だ。
「しほ、偉いぞ。それでこそ梓のおねーちゃんだ」
「えへへ~」
「え!? ちょっと待って、おにーちゃんまで霜月さんのこと『おねーちゃん』って呼ばないで!」
……梓もなんだかんだ、いつもより声が大きいのははしゃいでいるからなのだろうか。
俺も、いつもより気分が明るい気がするし。
年齢に関係なく、クリスマスはやっぱり特別なイベントだった――




