間話26 クリスマス その1
――12月23日。
季節は冬。今年は例年よりも寒いのか、ここのところずっと雪が降っていて……時期的に『ホワイトクリスマス』になることは間違いないと、天気予報ではそう言われていた。
世間はもうすでにクリスマスムードである。
ただ、高校三年生の受験生に浮かれている余裕などない。
「アタマガコワレソウ」
しほにも限界が訪れているようで、頭から煙を上げながらその場にコテンと倒れた。
場所は俺の家。リビングに設置したこたつに入って、ぬくぬくと勉強していたけれど……あまりに居心地が良いせいか、しほの頭はあまり回っていないようである。
「ちょっと眠ったら? 頑張りすぎて体調を崩したら、元も子もないし」
「……ソウスルー」
そう言うと、しほは感情のない声で返事をしてこたつに潜り込んだ。
いやいや、いくら温かいからってこたつの中で眠るのはちょっと……と慌てて止めようとしたが、その前に彼女が俺の足元からぴょこっと出てきたから、びっくりした。
「わっ」
「ど、どうした?」
「幸太郎くん、頭皮マッサージしてー」
それから今度は構ってほしそうにしていた。
現在夕方の18時。まぁ、お昼からずっと勉強していたわけで、しほはとても頑張っていたから……これくらいのことはしてもらう権利があるだろう。
「いいよ」
「やったー」
頷くと、しほは嬉しそうに笑って俺の膝に頭を乗せてきた。
ゆっくりと手を置いたら、撫でてほしそうにぐいぐいと押し付けてきたので……そのまま手を左右に動かしてあげる。
出会って三年目。この白銀の髪の毛も見慣れてきたけれど、相変わらずその透明度は健在で……指で梳くたびに、不思議な気持ちになる。
これが、同じ人間の髪の毛なのか――と、疑いそうになるほどに。
「幸太郎くんのお膝、枕として一級品ね……切り取ってお家に持って帰ろうかしら」
「怖いよ」
「おっと。疲れすぎてヤンデレしほちゃんが暴れそうになってるわ……放置していると、幸太郎くんが首輪で繋がれて我が家のペットになっちゃうかもしれないから、早くマッサージして癒さないと」
「はいはい、頭皮マッサージね」
撫でるだけでは満足できなかったのだろう。
そのまま、美容師さんみたいにしほの頭に手を置いて、優しくもみほぐしてあげた。
「あ゛~」
目を閉じて、ほっぺたを緩めながら、気持ち良さそうに奇妙な声を上げていた。
それだけ頑張っていたのだろう。ここのところ、彼女は俺と同じ大学に行くために猛勉強しているので、疲労もたまっているようだ。
少しでも、彼女の体力が回復するように……と、そんなことを考えながら、しばらくしほのマッサージを継続する。
だいたい10分くらいかな?
それくらい経過したタイミングで、不意にしほがこんなことを呟いた。
「……あ、そういえばまだ、サンタさんにお手紙出してないわ」
今が何日か思い出したのだろう。
あと二日でクリスマスが来るわけで……しかし高校三年生にもなれば、さすがにサンタさんの正体も分かっていて当然なのだけれど。
しかし、しほは当たり前のようにまだ『信じて』いるのだ。
「今年のプレゼントは何がいいかしら?」
霜月しほ、18歳。
彼女はまだ、サンタさんの存在を疑っていない。
純粋無垢で、穢れを知らない少女は……外を降りしきる雪のように、とても真っ白だった――
いつもお読みくださりありがとうございます!
もうすぐクリスマスイベントなので、便乗いたします。
時系列は、幸太郎が高校三年生になったクリスマスという設定です。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m




