表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第四部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/654

第三百八話 主人公性


 玄関で押し問答があったものの、結果的にはキラリが強引に龍馬の家に入ることによって、決着がついた。


「寒いのに中に入れてくれないなんて、りゅーくんは最低だな~」


「ちっ。今は話す気分じゃねぇって言ってんだろ……」


 言葉遣いもいつもより荒い。

 苛立っているようだが、しかし先程より拒絶の意思は弱くなっている。

 つまり、龍馬は気になっているようだ。


(アタシたちとこーくんのこと、知りたがってるんだね)


 注意深く龍馬の様子を探りながら、彼の部屋に入る。

 数ヵ月前までは毎日のようにこの部屋で遊んでいた。

 梓、結月と一緒に、龍馬を奪い合って過ごしていた。


 ……今にして考えると、不思議な日常を過ごしていたな――と、キラリは振り返る。


(どうしてあんなに、りゅーくんに媚びてたんだろ?)


 自分が自分じゃなかったみたいに、我を忘れていた。

 だけどもう大丈夫。


 前みたいに部屋に入っても、ちゃんと自我を保てている。


(どうしてあそこまで、りゅーくんがかっこいいと思ってたんだろ?)


 龍馬の部屋で、いつもキラリの定位置だったベッドに座る。

 一方、龍馬は座ろうともせずに立ち尽くしていた。


 その顔は、前のように自信に満ち溢れた感じではない。

 今は怒りに歪んでいて、お世辞にも『かっこいい』とは表現できなかった。


 ただただ、怖い顔をしていた。

 普通の女の子であれば、まともに龍馬の顔が見れないほどである。


「……お前も、俺をバカにしたいのか?」


 それから、唐突に被害妄想じみたセリフが吐き出される。


「中山みたいに俺を嘲笑いにきたのか? 俺の幼馴染を奪って、代わりにあてがった『おさがり』にも振られた俺を、バカにしたいんだろ!?」


 最低の言葉だった。

 キラリは自分が『おさがり』と表現されていることを理解して、大きなため息をついた。


「はぁ……そんなくだらないことに拘ってるんだ」


 小声の呟き声だった。

 以前までの龍馬なら「え? なんだって?」と聞き返すくらいの囁き声だというのに、しかし今の彼には届いているようで。


「くだらない? くだらないってなんだよ……くだらないわけ、ないだろ? 梓はあいつの義妹で、お前はあいつの親友で、結月はあいつの幼馴染だったんだろ!? それがくだらないわけないんだよ!!」


 そして、返される発言のおかしさを、キラリはちゃんと気付いていた。


(不思議だなぁ……前までのアタシなら、こう言われたらすぐに『ごめんなさい』って謝ってたはずなのに)


 とにかく龍馬に嫌われないことが大切だった。

 怒られたらすぐに謝るし、泣いて媚びてでも彼のご機嫌を取ろうとしただろう。


 だけど今は、そんなことやる気になれなかった。

 だって、間違っていることを肯定したところで、何も解決しない。


 たとえば今、キラリが龍馬に謝ったとしても……キラリは結局、龍馬に愛されることはないし、彼も彼女を愛することはないだろう。


 肯定して愛されるのなら、今まででその機会は何度もあったはずだ。

 それでも愛されていないのだから、つまりその行動は『無意味』だったということなのである。


「それが全部、くだらないって言ってるの」


 だからキラリは、いつもと違って反論した。


「過去の関係なんて、どうでもいいと思わない? 義理の兄弟でも、友人でも……幼馴染でも、どうでもいいじゃん。それよりも、今の『アタシたち』を見てよっ」


 結局のところ、こういうことなのだ。


「少なくとも、アタシとこーくんはただの『友人関係』でしかなかったんだよ? それなのに、アタシを『おさがり』って言ったよね? まるで、前にアタシがこーくんの所有物だったみたいな発言は、やめて」


 ――アタシを『物扱い』しないで。


 ――浅倉キラリは、男性にとっての装飾品なんかじゃない。


 ――ちゃんとした人間であり、感情があるんだから、それを無視しないで。


 それらの意味を伝えるためにも、キラリは龍馬を『拒絶』したのである。


 ……もう、竜崎龍馬は全肯定される人間ではなくなっていた。

 今まではご都合主義によって全てが片付けられていた。

 だけど今は、何もかもがうまくいかなくなっていた。


 つまり、竜崎龍馬はもう……『主人公性』を失っていたのである――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ついに主人公様は、その座から陥落したのか。 しかし、毒電波は全くでなくなっているのだなあ。
[気になる点] 主人公だから好かれていたのに、主人公性がなくなってもまだ好かれてるの?
[気になる点] おさがりおさがりって言われてるけど立場的にはしほと結月って変わらないよね どっちもの幼馴染
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ