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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@ようあま2巻&霜月さんはモブが好き1~5巻
第四部

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間話15 義理の『姉妹』 その1

10年後、幸太郎としほが結婚した後のお話となります。

本編には関係のないのですが、明るい話が書きたくなりました。

どうぞよろしくお願いしますm(__)m


 ――これは、少し先のお話。

 まだ訪れていない10年先のとある一日の出来事。


 幸太郎としほが結婚した後のことである。


 当然、二人が夫婦になったということは……戸籍上、二人が『姉妹』になったということでもあって。


 それが彼女はものすごく不満だった。


「あずにゃん、おねーちゃんが遊びにきたわ!」


「……来なくてもいいんだよ?」


「えー。だって、お暇だったもの」


 一人暮らしをしている梓の家に、白銀の美女――霜月しほ改め、中山しほがやってきた。

 年齢は26歳。出会った時よりも随分と大人っぽくなった彼女を見て、梓はついため息をついてしまった。


 なぜなら、彼女は梓が最も苦手な人間だからである。


「梓……じゃないっ。私、忙しいから帰ってくれない?」


「え、忙しいの!? だったらおねーちゃんがお手伝いしてあげるから、遠慮しなくていいわ」


「遠慮してないよ!? ああもうっ。あのね、しほさんがいたら迷惑だから帰ってほしいってことだよっ」


「あらあら、奥ゆかしい女の子に育っちゃって……! おねーちゃん、妹の成長を感じられて嬉しいわ。でも、大丈夫。おねーちゃんにくらい甘えてもいいのよ?」


「ぐぬぬ……!!」


 梓も26歳なので、流石に大人として振る舞うことを意識していた。

 一人称も『私』にして、言葉遣いも子供らしさを消そうと心がけている。

 しかし、彼女の前だとつい本性が現れてしまうようで。


「何度言ったら分かるの? 梓はね、あなたのことが苦手なんだもんっ!」


 まるで高校生の時のような幼い自分をさらけ出してしまった。

 そんな梓に、しほは優しく微笑む。


「うふふ。反抗期がまだ終わってないのかしら? よしよし、いい子だから落ち着きなさい? ほら、今日はケーキを買ってきたの。一緒に食べましょう?」


 そしていつも通り、しほは梓の話を全く聞いていなかった。

 これもまた学生の時から変わらない。しほはいつだって自由で、梓を振り回すのである。


「食べない! 梓、ダイエット中だからっ」


「……それ以上細くなってどうするの? まだまだ小さいんだから、いっぱい食べないとダメよ。ちゃんと大きくならないわよ?」


「もう大きくならないもん! 梓は一生この寸胴みたいなスタイルで生きていくしかないの……放っておいてよ!!」


「むぅ……思春期なのは分かるけど、成長期でもあるんだから、たくさん食べないと」


「梓はしほさんと同級生だよ!? 反抗期も思春期も成長期も終わってるし、この体に未来なんてないんだからね!!」


 久しぶりに大きな声を出した。

 大人になって、すっかり落ち着いた生活をしていたというのに……しほの到来は、いつも梓を狂わせる。


「しほさんは勘違いしてるかもしれないけど……梓はね、見た目は子供だけど中身は大人だから!」


 とは言うものの、ほっぺたを膨らませている梓は、子供のようにしか見えない。

 そんなんだから、しほは梓を子ども扱いするのである。


「はいはい、そういうことにしてあげるわ。やれやれ、困った子ね」


「お、大人の対応しないでよ……いかにも『折れてあげました』みたいな態度をとらないでっ。梓が子供っぽく見えるから!」


「うふふ♪」


「ぐぬぬっ」


 穏やかに微笑むしほに、梓は歯ぎしりをすることしかできない。

 相変わらず、彼女との相性が悪かった。

 学生の頃から変わらず、会話がまったく噛み合わないのである。


「いいかげんに――!」


 そろそろ本気で怒って追い返そう。

 勝手に部屋でくつろぎだすしほを見て、梓がそう覚悟を決めた時だった。


「あ、そういえばだぁちゃんからあずにゃんへのお土産もあるんだった」


 その一言で、怒りが消えた。


「――え? おにーちゃんが?」


 だぁちゃんとは、ダーリンから派生した呼称であり、要するにしほの夫……梓にとっては義兄の『幸太郎』を意味する言葉である。


「お、お土産かぁ……ふーん? そ、そっかぁ」


 途端にそわそわとする梓。

 兄からの贈り物が気になってしょうがない様子である。


「そうなんだけど、迷惑だったら帰るわ。また後日、郵送するから」


「ちょ、ちょっと待って! 今渡せばいいんじゃないの!? わざわざ郵送する意味なんてないよっ」


「えー。でも、なんか怒ってるし……」


「う、ウソだよっ。怒ってないから……あー、もうっ。分かった! ケーキ、食べればいいんでしょ!?」


 なんだかんだ、抵抗はしたのだが。

 兄からのお土産があるなら、話は別だった――



(続く)

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